製造業や金属加工の大型展示会「METALEX Vietnam 2024」が10月2~4日、ホーチミン市7区のSECCで開催された。20の国と地域から約280の企業が出展し、3日間で約1万5000人の来場者を集めた。
日本企業出展の存在感
METALEX Vietnamは今年も外国企業の出展が多く、パビリオンは中国、台湾、韓国などが目立って、欧州からは唯一ドイツが出展。存在感を出していたのが日本だ。
併催された部品調達展示商談会「Supporting Industry Show 2024」ではバイヤーとして18社(サプライヤーのベトナム企業は20社)が出展し、東京都、大阪府、石川県、長野県の自治体は各6~8社を持ち、企業単独での出展も多かった。
ただ、展示会の規模は前回より縮小。ホールは前回のA2は使用せずA1のみで、出展企業も50社程度減り、大型ブースも少なくなった。そんな状況で清潔感のある広めのブースを展開していたのがLIXIL GLOBAL MANUFACTURING VIETNAMだ。
ベトナムで生産している建材用や産業品用のアルミ製品を展示。木目など表面処理を施した建材向けはブース中央に置かれて人を集め、自動車部品などもあって、生産現場の技術者も説明に当たっていた。
「来場者の方の業種は様々です。お客さんはベトナム人が多いけれど、日本人、韓国人、ヨーロッパの方もいます」
金型の構造が複雑化
METALEX Vietnamの常連で、こちらも広いブースなのがルンキーメタルジャパン。金型メーカーに金型ベースや金型部品などを提供しており、サンプル品の展示と大きなバッグでカタログを配るスタイルが定番だ。
「今回は企業も来場者も少ないですね。先週早めに入国して大手のお客様を回ったのですが、この展示会を知らない人が多かったです。もう少しアピールしないと」
ベトナムの金型は以前より構造が複雑化しており、ベトナム企業の加工技術は上がっているもののまだ他国には追いついていない。ただ、当初は「ここまでの品質は必要ない」と言われていた同社の製品を求めるニーズは高まっており、ベトナム市場は魅力的で将来性もあると語る。
図面を起点に広げるソフト
ホワイトとブルーのスタイリッシュなブースを展開していたのがFact Base。図面に様々なデータを紐付けて一元管理するクラウドサービス「ズメーン」をアピールする。
ベトナムでは今年6月から販売しており、対象は図面を使う全ての製造業。現状は日系企業が顧客の中心だが、ベトナム企業にも広げていく。
「日系製造業が多く進出している東南アジアを中心に展開しています。ベトナム経済の立ち上がりが早くて加速している今、知名度を上げたいです」
来場者からは好評で、ベトナム企業を含めた数社から契約が取れたそうだ。
「重量屋」のための装置
4つある日本の自治体パビリオンのうち、東京都(Tokyo SME Support Center)からは6社が出展した。
「ベトナムに限らず国際展示会は全般的に、新型コロナ前より来場者数が戻っていないです。来年度以降はベトナム商工会議所(VCCI)などとの商談会も考えています」
商談会は日越両国で開催し、ベトナム側の技術的な課題に日本側が指導やサポートをする形で始め、最終的にビジネスへとつなげたいそうだ。
足立区の今野製作所は主力商品の油圧ジャッキなどを展示し、赤いカラーと小型サイズで来場者を誘っていた。
「工場などでの重い機械の据付けや入替えでは、ジャッキアップして搬送用ローラーで移動させますよね。そのための装置です」
何千万円、何億円もする機械が対象なので信頼性や安全性が重視され、日本では現場単位で製品が選ばれる。ベトナムはそこまで達していないそうだが、早い時期から注目して、約15年前から当地の展示会に参加している。
「ベトナムでは代理店販売。顧客は日本では『重量屋』と呼ばれる、重量機械設備の搬入、据付け、運搬を専門とする業者さんです」
オーダーメイドチャックの販路
石川県からは8社が出展し、その1社が金沢市の松本機械工業。パワーチャックやNCロータリーテーブルといった工作機械の周辺機器などの専門メーカーだ。
「一般的なチャックメーカーと違って量産ではなく、お客様の使用や加工の特徴に合わせたオーダーメイドです」
展示したクイックジョーチェンジチャックは短時間での爪交換が可能で、作業効率向上とコストダウンの効果を数字で見せる。ベトナムには代理店があり、代理店経由で連絡があった顧客と製造へと進める。
「日本の主なお客様は工作機械メーカーさんですが、ベトナムでは直接のお客様や専門商社さんを探したいと出展しました」
加えてアフターサービスの業者。現状では日本からの出張なので即対応はできず、パートナー企業も見つけたいと考えている。
金属の表面加工に自信
大阪府からは8社の出展、摂津市の上野鉄工は鉄やステンレスなど金属の2次元と3次元のレーザー加工を得意とし、ドンナイ省にUENO TEKKO VIETNAMを設立している。
「ベトナムの景気はちょっと厳しいですが、私らが気にしてる精度の良さや表面の綺麗さなどが少しずつ必要になってきた感じはします」
以前は「形になれば良い」だったが、表面の傷などが指摘されるようになってきた。そのためか、展示された加工品の仕上げの良さに興味を引かれる人が多いそうだ。
「ただ、どこまで求められているのか、本当に必要とされているのか、そこがまだわからない」
主催した大阪産業局によれば業種の異なる多彩な企業が集まった。立地の良さから来場者は多く、どれだけ現地の企業に見てもらえるか、どれだけそれをサポートできるかが重要だそうだ。
ニッチなフレキシブルチューブ
長野パビリオンには6社があり、ダイフレックスは上田市のフレキシブルチューブメーカー。ベトナムに代理店はなく直接輸出しており、顧客はマイクロホンや浄水器などのメーカーという。
「ニッチな商品なので品質の高い材料は日本からの輸入になり、ベトナムで作れば安くできるかど言えばそうでもない」
製品の一部でなく単体でのフレキシブルチューブが物珍しいのか、立ち止まって説明を求める来場者が多かった。
主催した長野県産業振興機構によれば、ベトナムの何かしらの展示会に毎年出展しているとのこと。今年は展示エリアも出展社数も少なくなって残念だと語った。
研削・研磨材の品質
柳瀬は主にディスクグラインダーに取り付ける研削・研磨消耗品の専門メーカー。2014年にYANASE VIETNAMを設立し、生産した約9割を日本に輸出。ベトナム市場の開拓を考えている。
「前回から5年振りかな。JETROさんも共催して、今年は日系企業が多いだろうと出展しました」
本社でしか扱ってない新商品を展示するとその反応が敏感で、品質の差がわかる来場者が多いとわかったのが副産物という。困りごとの相談や奇麗に研磨する方法の質問が増えてきたと感じた。
「日本市場は縮小が続いて、弊社もベトナム工場を中心に、最低でも東南アジアに販路を広げたいと思っています」
部品調達と共に販売も
部品調達展示商談会を主催したJETROホーチミン事務所に話を聞くと、出展企業は金属加工の割合が多い。また、現地調達で特に関心が高い分野は精密機械や精密機器、電気電子関係などだが、ベトナム企業はそこまで多くないそうだ。
ベトナム企業はこれまでと同様、ホーチミン市貿易投資促進センター(ITPC)とホーチミン市裾野産業発展センター(CSID)から推薦された製造業を、JETROが確認して決定している。
「日本企業は調達だけでなく自社製品を販売するケースもあり、両面から商談を進めています」
ここは委託先を探す場所
吉本製作所は金属加工の設計から完成までを日本で請け負い、ベトナム企業に加工を委託して日本に輸出している。
「仕事は主に装置メーカーさんからで、要望に応えるにはベトナムは打ってつけなんです」
一般的な出展目的は顧客開拓だろうが、同社の場合は新しいパートナーと出会うきっかけの場。並べたサンプル品を見て「うちの工場でもできるよ」と話が始まり、「どんな機械設備を持ってるの?」と聞き返して、試作品作りへと進むなどだ。
「2014年に初めてMETALEX Vietnamに出てもう10年。色々と感慨深いですよ」
精密な加工に「なるほど」
前回は京都府パビリオンで出展していたエージェンシーアシストは金属加工部品の商社で、ベトナムで加工した機械部品を日本に輸出している。現地法人のAgency Assist Vietnamが品質管理を担当しており、半導体関連部品など数多くの精密部品を展示した。
「多品種少量生産が得意で、お客様は食品関係、医療関係、大学の研究施設など幅広いです」
ベトナム国内でも販路を広げようとしており、来場者は精密な加工をしげしげと見て、「なるほど」とつぶやくような人もいるとか。
「現在の進出先と展示会はベトナムだけですが、来年はドイツの展示会に出る予定です」
感想を少々。出展企業は前向きなのに、今年のMETALEX Vietnamはちょっと勢いが落ちた感じだった。ベトナムの製造業を応援するぞ、もっと頑張れ!