今回で2回目となる家具、内装、建築系の展示会「Vietnam Interior & Build Expo(VIBE) 2025」が10月2~5日、ホーチミン市7区のSECCで開催された。10数ヶ国から200社、543ブースが出展した若い展示会だ。
個性派企業と日系の競演
昨年に続いて開催されたVIBE 2025。建築、建材、内装などの展示会では大都市を巡る「VIETBUILD」が有名だが、こちらはホーチミン市手工芸・木材産業協会(HAWA)とホーチミン市建設・建材協会(SACA)が主催しており、内装とデザインに寄ったスタイリッシュな展示会だ。
会場はSECCのBホールで、全体的に洗練されたブースが並ぶ。サイズは様々だが国際パビリオンは見当たらず、外資系企業も多くない。むしろ日系企業が健闘しており、主役と呼べるベトナム企業は個性的なブースが目立っていた。
会場入口に近くてブースが大きく、大勢を集めていた日系企業はLIXIL VIetnamとNippon Paint Vietnamだった。

3ブランド同時の統合戦略
LIXIL VietnamはINAX、American Standard、買収したドイツの水栓金具メーカーGROHE(グローエ)という3ブランドを別々のブースで出展。それぞれ清潔感を前面に出しており、3つのブランドを同時に1つの展示会に出すのは初めてとのこと。
「例えばGROHEは別会社の商品と思っているお客様もいます。我々にはこうしたブランドがあり、かつメーカーであることをお伝えしたいのです」
来場者である設計事務所や建築会社には取引先も多く、より理解を深めてもらうと同時に、初見の人には「何の会社か」をしっかりアピールする。INAXの知名度は高くてもAmerican Standardや、グランドラグジュアリーと位置付けるGROHEはまだ弱いと考えている。
昨年のVIBEには出展していない。初回の情報をフィードバックし、来場者が自社のメインターゲットと確認しての初出展だ。
「商品やブースがとても奇麗だと喜んでいただいています。ブランドのイメージも上げていきたく、今回は日本的なデザインを強調しました」


空港実績からパーキングへ
ベトナムにおける新明和工業(株)は空港ビルと旅客機を結ぶ航空旅客搭乗橋で知られており、これらはノイバイやタンソンニャットなどの国際空港にも導入されている。同社は設備用の水中ポンプなどでも知名度は高いが、今回アピールするのは機械式駐車設備だ。
同社の主力製品はエレベーター方式の駐車設備だが、法規制もあり、ベトナムでは高層の駐車設備の設置亊例はほとんどないという。こうした中、都市部の地価高騰もあって多段式の駐車設備が注目され始めている。担当者はこう語る。
「現在、海外向けの製品ラインナップを強化し、仕様・価格のローカライズを推進中です。2022年からベトナムでマーケティングを始めて、今回は駐車設備の認知度向上の場としてVIBE 2025の出展を決めました」
同社ブースには珍しい出展内容も手伝ってか多くの来場者が集まり、「協業できないか」や「価格はいくらか」などの質問が相次いだ。ブースに展示した1/18スケールの駐車設備の模型も、来場者の視線を集めていた。

板金技術でスチール家具
主に階段製品を製造販売する建材メーカーのカツデン。その現法であるKatzden Vietnamは工場を持ち、日本に屋内向けの階段などを輸出しているが、近年では得意とする板金加工技術を用いてスチール製のインテリアを製造し始めた。
「デザインに凝ったで椅子やテーブルを別ブランドで立ち上げました。国内販売を進めたくてこの展示会に初めて出ました」
確かにデザインセンスは良く、来場者は足を止めてくれるが、日本価格なのでVND換算すると驚かれるそうだ。
ただ、これまでの高級家具はデコラティブなヨーロッパ調が好まれてきたが、最近では新しいカフェなどにもシンプルなデザインが増えたと感じており、チャンスはあると見ている。
ターゲットは特に絞っておらず、住宅はもちろん、ホテルのラウンジや企業の会議室なども候補。また、製造設備があって多様な対応ができること、自社を知ってもらうことにも重きを置いている。
「製品を売りたい気持ちと共に、技術を活かして新しい仕事を取り込むことも目的です」

オールジャパンの屋根瓦
高機能屋根瓦を製造するFUJI STAR ROOFは屋根瓦メーカーである富士スレートの子会社。同社がメインで出展したが、屋根瓦の素材にクラレの繊維と大日本塗料の塗料が使われていることから、3社の共同出展となった。
日本向け輸出の他に戸建て住宅やリゾート地のヴィラ向けに国内販売をしており、後者を強めたい。アピールしたいのは来場者でも出展者でもあるでデベロッパーや設計事務所、デザイナーなどだ。
ブースにいくつも並べたのはセメント瓦で、「オールジャパン」の技術から軽量で衝撃性に優れ、経年劣化しにくい高寿命も特徴だ。ただ、ベトナムの屋根瓦には競合品が多く、材質も陶器やセラミックなどと幅広い。
「このセメント瓦は値段はちょっと高いですが、お客さんがどこを重視するかによって関心は変わってきます」

和の柄が映える意匠タイル
会場には日本企業が集まったエリアがあり、その中の1ブースに3社が出展。その1社がJTWで、日本から建材を輸入販売している。展示していたのは和風のデザインが施されたタイルで、既にベトナムで販売実績がある。
「こうした日本的な柄は人気なようで、お好きな方はものすごく気に入っていただけます。他に競合がないことも強みです」
販売先は個人やホテルなどの法人で、個人は購入後に施工会社などに依頼するそうだ。ある程度のオーダーメイドが可能で、ベースとなる地色に桜や鯉といった柄を選んでもらい、日本で完成させる。そのため価格は上がるものの、それだけの価値があると自信を見せる。
「会社設立から3年目です。商社というより個人商店ですね(笑)」

長尺で魅せる建材の技
JTWと同じブースだったのがフクビ化学工業。建築資材などを製造販売するプラスチック押出成形メーカーで、異なる建材が接する部分に設置する見切り、壁と床の境目に取り付ける幅木などを生産している。
「長い長い製品を作るのが得意な会社です。ベトナムではソフトタイプの幅木が人気ですね」
日本、ベトナム、米国に生産拠点があり、それぞれの国内市場向けに販売。用途は主に店舗やオフィス内なので、それらを施工する業者などに卸している。日本市場は成長が見込みにくいため海外市場を強化しているそうだ。
「コストや在庫の問題などありますが、ベトナムでの売上は徐々に伸びています」

展示会で開く潜在顧客の扉
KOYO SANGYO VIETNAMは木工用の接着剤メーカー。出展した目的は来場者というより出展企業への新規開拓という。まだアプローチできていない潜在顧客の出展を予想してのことで、対象は木工業界の家具メーカーや建材メーカーだ。
「お客さんが弊社を見つけてくれるのを待つより、営業スタッフが木工関係の企業さんを訪問しています」
VIBEには初めての出展で、取引のあるベトナムの大手木材卸から声を掛けられたのがきっかけだ。木工業の接着剤メーカーは他に見かけなかったが、外資系だけでも日系、中国系、欧州系と競合が多いという。

ファインバブルや調光フィルム
LIVWRXは卸売りの商社。普段はサッシやガラスなどの商材を扱うが、「新規ベトナム輸出」のためにインパクトのある3商品を展示した。国内販売のための販売代理店を探すのが目的だ。
1つ目は肌の汚れを落とすファインバブルのシャワーヘッド。2つ目は和風を好むベトナム人向けにプリントできる畳。3つ目は通電で透明と不透明を瞬時に切り替える調光フィルムで、ホテルや会議室などでの利用を見込む。
「どれも非常に興味を持っていただけます。体感型なのでお客さんはしばらく滞在してくれて、それを見た別の方が集まるという流れです」
細かく言えばファインバブルはビューティー商品で、畳と調光フィルムは販売先が異なる。それでも、日本の特徴ある商品でないと市場に入れないと語る。
「最初は高品質な商品を考えたのですが、それではベトナムのスペックに合わないと言われました。マーケットインの商品を厳選したつもりです」

ベトナム寺院で輝くアルミ鋳造
ASUZAC ACMは高度な技術を持つアルミ鋳造メーカーの現法で、建築用の外装、インテリア金物、屋外用家具などを生産している。輸出先の日本ではホテル、大学、商業施設などの門扉、フェンス、ファサードといった幅広い実績を持ち、ベトナムでは寺院の外部装飾、高級住宅地や商業施設へも納入している。
案内役のベトナム人スタッフはこのように語った。
「ベトナムでも大切なお寺や邸宅などに使われていて、それが私たちの自慢なんです」
門扉の一部やインテリアがブースに再現されており、来場者は高級感に満足する人が多いそうだ。
取材後に動画での逆取材を受けてしまった。日本語で答えたが、ASUZAC ACMの良さが伝わったかどうか……。






























取材・執筆:高橋正志(ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。