6月24~28日にホーチミン市のSECCにおいて、建築・家具関連の「VIETBUILD HCMC 2020」が開催された。新型コロナ自粛後の初の大型展示会となり、約400社の企業が約1800ブースを出展した。
5つのホールが人でいっぱい!
新型コロナ感染で延期や中止を余儀なくされていた各地の展示会。それがとうとう解禁となり、SECCでは 「VIETBUILD HCMC 2020」が開催された。通常はA1、あるいはA2を合わせた屋内ホールが使われるが、加えて屋外にA5ホール、その奥にはA3、A4ホールが作られ、全てが出展企業で埋まるという盛況振りだった。
展示商品はドアや窓、ソファ、椅子、テーブルなどの家具、システムキッチン、シャワーやトイレ、タイルやボードといった建材などで、モノが大きいために出展スペースを広く取った企業が多かった。女性コンパニオンも多く、そう感じたのは久しぶりの展示会に気持ちが上ずっていたせいかもしれない。
建築関連ということで、照明器具、ドアノブ、キッチン用品、塗料、ネジやビス、接着剤、電動工具などの備品系も幅広く展示。一方ではランニングマシン、酒樽、絵画、置物などニッチなニーズに応える企業もあり、ピンポイントでマッチングすれば商談成立の可能性は高いと感じた。
新型コロナによる入国制限のためだろうが、以前と比べて海外企業の出展はガクンと減り、来場者もベトナム人がほとんどだった。それでも会場には人があふれ、A1とA2の合同ホール、A5ホールは特に多かった。
商品が色々とあるので、ひとつひとつ見ていくとあっという間に1時間くらい過ぎてしまう。ソファチェアの着ぐるみやセグウェイに乗ったアイアンマンがパンフレットを配り、自粛明けもあって笑顔の来場者が多いようだった。
システムキッチンに人だかり
日本企業や日系企業の出展は全部で10社程度。会場が広いだけに少なく感じたが、中でも代理店が目立った。本社から日本人が来る予定だったが入国制限で無理になったという話も聞いた。
屋内ホールの中心で広々とスペースを使っていたのは、昨年に続いて2回目の出展となるタカラスタンダード。展示企業は代理店のNIPPON TECH INVESTMENT AND TRADINGだ。タイプの異なる複数のシステムキッチンが余裕を持って配置され、最も人を集めていたのは今年2月に日本で発売されたばかりの最新製品とのこと。蛇口などの水回りや収納棚を確かめながらスタッフに質問する人が続いていた。
屋内ホールの中心で広々とスペースを使っていたのは、昨年に続いて2回目の出展となるタカラスタンダード。展示企業は代理店のNIPPON TECH INVESTMENT AND TRADINGだ。タイプの異なる複数のシステムキッチンが余裕を持って配置され、最も人を集めていたのは今年2月に日本で発売されたばかりの最新製品とのこと。蛇口などの水回りや収納棚を確かめながらスタッフに質問する人が続いていた。
「きれいで機能が充実しているのは当たり前。加えて丈夫なことがベトナム人には魅力です。皆さん、興味を持って見てくれています」
来場者は建設会社や設計会社、マンションや別荘の関係者以外に、一般消費者も少なくないという。確かに「富裕な家族」というイメージの見学者が多かった。昨年よりブースを広く取っており、VIETBUILDは企業とエンドユーザーへのアピールの場で、ブランドの向上が目的と語る。
展示場で商品を印象付けて、各地にあるショールームに足を運んでもらって契約へと進める手法だが、展示会での契約も既に生まれているという。
「お客さんが朝から夕方まで途切れません。日本の製品はやっぱり人気です」
高品質ウインドーフィルム
粘着素材の開発・販売で知られるリンテックの現地法人、LINTEC VIETNAMは3回目の出展。製品にはシール・ラベル用の粘着紙や粘着フィルムをはじめ、ガラス用、屋外用、内装用、自動車関連など多彩だが、出展していたのは高品質な建物用ウインドーフィルム「WINCOS」。展示ブース中央にフィルムを貼ったガラスドアを置き、現物を来場者にアピールしていた。
「断熱フィルム、飛散防止フィルム、視界制御フィルム、防犯フォルムなどを展示しています。ベトナムではカーショールーム、ショッピングセンター、マンションなどで使われています」
これまではマーケティングを重視し、昨年から本格的に販売をスタート。来場者は建設会社や工場などの関係者が多いが、自宅のガラス窓に取り付けたいなどの一般客も珍しくない。部屋の広さや窓のサイズなどを調べる必要があるため契約は後になり、貼り付け作業はベトナムの代理店が行う。
「ベトナム市場での品質の評価は高いと感じています」
注目を集める環境系の建材
A5ホール入口横の好立地に出展していたのはKoei Toda Industries。展示商品は建物の床などに使う建材の「ZENWOOD」だ。有害物質の溶出がない、色あせしにくい、リサイクル可能など環境素材としての特徴を持つ。
VIETBUILDは3回目で、規模が大きな6月開催に毎回出展。この日は開催3日目だったが、初日と2日目の来場者数はこれまでのトップクラスで、名刺付きのブローシャーが700枚なくなったという。
「ベトナムの設計会社や工務店さんが長居をして説明を聞いてくれます。昨年に比べて日本人の来場者はかなり減りましたが、その分ベトナム人が中小から大手企業まで幅広く来ている印象です」
専用バッグで配布している厚紙製の資料は、中にZENWOODのサンプル素材を付けた豪華版。展示会への気合の入れようが伝わる。
ZENWOODは中間層以上向けの高級商品であり、ゼネコンやリゾート開発業者などに興味を持たれているという。
今回は関連企業2社を共同出展という形で招いた。場所を貸すことで、彼らの呼び込む来場者が同社の製品に興味を持ってくれるなど、相乗効果が生まれているという。
「ZENWOODが市場で知られるようになったのはうれしいのですが、同じ見た目で同じ名称の中国製コピーが売られているんです。喜んでいいのかどうか(笑)」
建築パーツの中国系企業
同じA5ホール内で展示をしていたのは中国系企業のKIN LONG。アルミやガラス製の建築部品をメインに、ドアノブ、ヒンジ、ハンドル、アクセサリーなどを展示。、4回目の出展で、来場者の反応は良いという。
「カタログだけでは伝えられない、現物を見せながら説明できるのがいいですね。ここでの契約までは考えていません。お客さんから様々な情報をもらうだけで価値があるのです」
来場者のほとんどがベトナム企業のデベロッパーとのこと。中国に親会社があり、現地で作った多様な製品を輸入・販売している。ベトナムに進出して5年が経ち、売上は順調に伸びているそうだ。
出展している中国系企業はいくつか見られ、新型コロナ前ほどは多くはないものの、勢いはまだ感じられた。
大手後発メーカーの巻き返し
A1ホールの入口前に出展していたのはYoshino Gypsum Vietnam。石膏で作られる耐火建材石膏ボードの日本国内最大手である、吉野石膏の現地法人だ。VIETBUILDへは3回目の出展で、主な目的はベトナムでの知名度アップという。
「石膏ボードの外資系メーカーでは最後発です。現法設立が2017年10月で、シェアはまだ1桁台でしょう。日本から輸入しているので売れた分だけ赤字になってます(笑)」
石膏ボードは日本では壁と天井に使われるが、ベトナムは壁はレンガなので天井のみが多い。ショッピングセンターやマンションでは使われるものの、戸境壁なので需要は多くない。また、石膏ボードのベトナムでの製造能力は需要の2倍弱あるという。それでも縮小する日本需要よりは商機があると進出した。
昨年はかなりの来場者がおり、今年も同程度と感じている。平日は建設会社や設計会社などの法人、土日は逆にエンドユーザーが多くなるそうだ。昨年は欧米や東南アジアだけでなく、インドやオセアニアなどからの来場者もいたそうだ。
「日本では石膏ボードや吉野石膏を知らない人は多いですが、ベトナムでは同業である仏大手メーカーのサンゴバンの認知度が高い。それは何年も前からテレビCMを大量に流したためです」
そのため同社も、テレビやビル内のモニター広告で動画を流してアピール中だ。現地生産を目指してバリア・ブンタウに工場を竣工予定だったが、新型コロナの影響で延期になった。巻き返しを図る日系企業を応援したい。
VIETBUILDは年に数回、都市を変えて開催するのが特徴だ。ホームページによれば今後は7月にカントー、9月にハノイ、9月と11月は再びホーチミン市で、同じ11月にはハノイとなっている。
ベトナムにやっと戻ってきた展示会。しばらくの間、他国の開催は難しいだろう。仕事ではなく個人でも、ふらっと訪ねると面白い出来事に出会えるかもしれない。