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ベトナムビジネス情報Vol111|
ベトナムでビジネスを作れ !

起業ノウハウ

ビジネスチャンスが多いベトナムでは、「起業」という選択肢もある。しかし、多くの日本人はノウハウを知らず、その内情も表に出ない。今回はベトナムで3社を立ち上げた日本人にその実際とアドバイスを聞いた。あなたも挑戦してみる?

資金とライセンス取得に苦労

コンサルタントや日系企業の国際部で海外を回り、2011年にベトナムに赴任した国本和基氏。人に雇われるよりベトナムでビジネスを立ち上げたいと、2012年に29歳で退職した。考えたビジネスはベトナム人向けの幼児教育だ。

「ベトナムは親が教育熱心で、中間層や富裕層が増えている。また、小学校以上の教育はしっかり組み立てられていますが、幼稚園世代は結構フレキシブルなんです」

起業に必要なのは事業計画、資金、ライセンス。事業は知人の紹介で日本の「こぐま会」と提携し、幼児教育のノウハウを活用。資金は自己資金に加えて友人からの借り入れ。ベトナムの銀行からの融資は実質無理で、日系銀行も日本での取引がなくいと難しいそうだ。

問題だったのはライセンスだ。教育は外資の規制分野で取得が難しく、当初はコンサルティングのライセンスでスタート。また、教室を開くためのライセンスも必要で、消火器の設備や避難経路の確保、子どもの往来時の道路渋滞なども基準になったそうだ。

最終的に投資登録証明書(IRC)、企業登録証明書(ERC)、教室のライセンスの3つを取得した。加えて必要なのが「何でも手伝ってくれるベトナム人」という。書類の申請や銀行口座の開設など細々したことを頼めるスタッフで、友人から紹介してもらった。

やりたいのは「スタートアップ」

2011年にホーチミン市にKijin Edutainmentを設立し、当初のスタッフは2人。最初に国本氏が日本で2ヶ月ほどこぐま会の教室に通い、その後ベトナム人の教師が2週間日本で研修。月に4回の学習で月謝は160万VNDと安くはないので、興味を持ちそうな中間層や富裕層を開拓した。最初の生徒は5人ほどだったが徐々に増え、3年目で黒字化に成功。ハノイにも教室を出し、スタッフは20人まで増えた。

「生徒の増加に合わせて教師や教室を増やすので、固定費のやりくりが大変でした。また構造上、爆発的に利益が伸びるビジネスでないともわかりました」

国本氏はスモールビジネスかスタートアップかを、事業計画で決める必要があると気づく。前者はできるだけ早く黒字化を目指すモデルで、例は開店時からある程度の売上が見込める飲食業。うまく進めば売上は伸びるが、短期間での急激な成長は期待できない。Kijinもこのモデルだ。

スタートアップは従来にないプロダクトやサービスを提供するモデルで、当初はマーケティングや開発などへの投資が必要で、認知度もないためしばらくは投資額が嵩む。この時期を「掘っていく」と呼ぶそうで、掘り続けて成功すれば、急激な売上の上昇も期待できる。ただ、手持ちの資金では十分でなく、投資家などの援助が必要になるのが普通だ。

「成長スピードが遅いことと、自分は0から1を作るのが好きで、1を10にするのは別の適任者がいると感じて、2015年に会社を売却しました」

ベトナムと日本の温度差

会社売却以前から、日本の企業からの誘いがあった。ITを使った人材マッチングを主とした事業で、東南アジアの代表としてベトナム拠点の立ち上げを依頼されていた。スモールビジネスではなくスタートアップができると承諾し、2015年にベトナム支社を設立した。

「以前の経験もありましたし、ライセンスはソフトウェアとITコンサルでしたので、設立は比較的スムーズでした」

求人Webサイトでスタッフを募集すると、「ITを使った面白そうな仕事」と結構な応募があった。営業、マーケティング、総務などスタッフ5人が集まる。事業内容は専用のアプリを使って個人のコンピテンシーを抽出し、人材を募集している企業とマッチングさせること。もう一つは顧客企業の自社従業員へのコンピテンシー調査だった。

しかし、事業が進むにつれて壁が高くなっていった。アプリは日本人向けなので、そのままでは東南アジアやベトナムに合わない。その修正を依頼したのだが、本社は現状で進めたいとの判断。その返答も無理からぬことで、仕様変更などでなく、作り直しを依頼したからだ。

「アプリの特徴であるコンピテンシーではなく、従来から使われているスキルをコアに変えたかったのです。ベトナムにはまだ早すぎると実感しました」

日本でこのサービスは大手企業の人材スクリーニングに使われていたという。いわば自社に合わない社員を選ぶ作業だが、ベトナムで使われるのは人材採用であり、スキルが重視される。開発やデザインは日本で行っていたため自分たちでは動けず、ジレンマから1年半で退職することとなった。

しかし、ここでの経験は無駄にならなかった。経営者として人材の獲得に苦労したこと、ITを使った人材サービスに携わったこと、何より「自分のプロダクトを作りたい」という気持ちが芽生えたからだ。

1550万円を集めてベトナムへ

2017年6月に退職して、日本に帰国し、10月から「ジーズアカデミー」に入学する。起業家を育てるためのプログラミングスクールで、社会人が多く集まり、開発だけでなくビジネスについても集中的に学ぶ。期間は6ヶ月。国本氏はプログラミングはほぼ初心者だった。

「卒業前に同期全員が1人5分で自分の考えた事業をプレゼンして、その場に投資家が150人ほど集まります。その事業に投資するかどうかを決めるのです」

国本氏は3社から合計1550万円の出資を得た。自己資金の300万円と合わせて事業資金とし、ベトナムでの起業を決めた。25人の同期の中から2人を口説き、3人で2018年8月にfreecracy株式会社を日本で設立。投資家が出資金をベトナムに送るのは困難なので、日本で会社を作ってベトナムは支社とした。同年10月にベトナム法人のfreecracy Vietnamを設立し、プロダクトである「freeC」のβ版をリリース。ライセンスはソフトウェア、人材コンサル、ITコンサルで、取得は難しくなかったそうだ。

freeCはビジネス情報に特化したFacebookのようなSNS。就職、クラウドソーシング、イベント、ニュースなどの中から、ユーザーの興味にマッチした情報がリアルタイムで配信される。企業はそこに自社のPR情報や求人情報を流すことができ、ユーザーはシームレスに求人に応募できる。企業は候補となる人材が見つかれば連絡先を除いたCVを閲覧でき、コンタクトしたいと思ったらマッチングとなって120万VNDが課金される。「料金後払いの広告」という位置づけだ。

「今すぐ転職という顕在層よりも潜在層をメインのターゲットとしています。一時の点ではなく長く線でつなげるプラットフォームにするため、候補者を集めておける『Talent Pool』などの機能が充実しています」

新しいサービスやアプリが登場

2019年5月末現在、日系企業約50社を含むベトナム国内の企業約450社と、約2万1000人のユーザーがfreeCを利用している。ユーザーはほぼベトナム人で、平均年齢は25歳、男女比は半々で、ほぼ全員が大卒の英語話者だ。そのうち約1000人が日本語人材で、一番多い層はN3取得者、次がN2取得者という。

順調に利用者は増え、マッチングも始まっているが、ベトナムならではの悩みもある。ベトナムでの人材募集は必要な時に求人Webサイトや人材紹介会社を使うのが一般的で、求めるのは     「代わりの人」が多い。長い目で優秀な人材を探す企業文化がまだないので、それを根付かせていきたいと語る。

6月からは300万VNDと1000万VNDの2種類のサブスクリプション(月額固定料金)が始まった。データ分析や採用マーケ機能などが加わり、サービスの質が厚くなる。さらに7月末には、現在のWebアプリではなく、ソフトをダウンロードで使うネイティブアプリをリリース予定。機能が追加されるので、継続的に使ってほしいという。

PR戦略はデジタルマーケティングチームがFacebookやGoogleで拡散し、自社のWeb記事も継続的に配信。ベトナム企業の人事担当者に有益な情報を伝えたいとイベントも始めた。スタートアップでは設立時の投資をエンジェルラウンドと呼び、次にシードラウンドという第2の投資時期があるという。今年4月が同社のそれで、新たに4000万円の投資を受け、1000万円を借り入れた。

スタッフは現在17人に増えた。日越混合チームの若者たちが今も、freecracyで新たな価値を造っている。