試算によれば、多くの企業がCOVID-19感染防止対策費用の70~80%を2~3日しか有効ではない検査費用に費やしている。
ある物流会社のグエン・ミン・チャン社長は、多くの自治体が72時間以内の検査証明書を要求しているので、平均して2日に1回ドライバーの検査を実施していると話す。検査費用は、検査機関によって異なるが、プール方式のPCR検査の検査費用が一人当たり20万ドン程度で、単独でテストした場合は70~80万VNDかかるそうだ。
この企業では、150人のドライバーのために毎月3億VNDのコストがかかっている。移動に4、5日かかるような長距離移動ではコストがさらに2倍かかる。「自主的に検査できるようになれば、企業の負担は大幅に軽減できるはずです。」とチャン社長は話す。
地域によって異なる検査要件も輸送業者にとって頭の痛い問題だ。例えば、中国との国境にあるクアンニン省のモンカイから輸出入貨物を運ぶ省外のドライバーは、検査を3回(PCR検査2回と簡易検査1回)を受ける必要がある。
ベトナム物流協会のレ・ズイ・ヒエップ会長は、このやり方は、企業のコスト、事業運営、ドライバーの健康の全てに負担をかけていると指摘する。ヒエップ会長によれば、ドライバーがモンカイを離れる際に求められる3回目のPCR検査では、ドライバーは荷物を受け取っているにもかかわらず検査結果が出るまで1日その場に足止めされる。検査結果が出るまでドライバーと荷物をその場に留めておかなければならないことによって、企業側は多額のコスト負担を強いられることになる。
「これまで企業はCOVID-19によって苦しんできましたが、モンカイの国境ゲートで輸出入製品を運ぶために何度も検査を受けなければならないことで、更に苦しめられることになっています。」とヒエップ会長は話す。
製造業にとっても検査費用は頭の痛い問題だ。ドンナイ省の木材加工企業は、7月中旬から”3つの現場対策”を実施している。この企業では従業員数を通常時の650人から300人に削減して生産活動を維持している。同社のレ・スアン・タン社長は、工場内での労働者の食事と睡眠のための設備投資以外に、毎回の従業員の検査費用として数億VNDの経費が必要で大きな負担になっていると話す。
「2ヶ月も経たないうちに、当社では300人の従業員に1600回の検査を実施しなければなりませんでした。従業員一人当たりの1か月の平均検査数は3回です。」とタン社長は話す。
この企業が実施している検査では、単独のPCR検査に75万VND/人、5人一組のプール式PCR検査で30万VND/人、簡易抗原検査で28万VND/人の検査費用が掛かる。
同様にチャービン省のミーラングループも7月末から”3つの現場対策”を実施している。この企業では350人の従業員にPCR検査を実施るのに毎週6000万VND、1ヶ月で2億4000万VND以上のコストがかかっている。この数字は企業の経営に大きな影響を与えていると同社のグエン・タイン・ミー会長は話す。
ミー会長はまた、検査のために停止される生産活動を考慮すると、検査による企業の収益への影響は甚大だと付け加えた。
ベトナム裾野産業協会のドー・ティ・トゥイ・フーン副会長は、企業の感染防止対策にかかる経費の70~80%を検査費用が占めていると指摘する。フーン会長の分析によると、生産活動を維持するために企業は、労働者一人当たり350万~400万VND/月の追加コストが必要でその70%以上を検査費用が占めている。
簡易検査キットが27万~28万VNDだとして、3日に1回検査を実施すれば、企業は労働者一人当たり約300万VNDの検査費用を毎月負担しなければならない。これは簡易検査の場合で、もしPCR検査を求められた場合、コストはさらに高くなる。
多くの企業は、平均して2〜3日ごとに従業員の検査を実施する必要があり、電子機器製造企業のように数千人規模の従業員がいる場合、検査費用は、最大で数十億ドン規模になる。
「もし、数千人規模の従業員を抱えていれば、隔離や検査にかかる費用は膨大ですが、1回のワクチン接種に必要な費用は知れています。」とフーン副会長は話す。
前述の物流会社のチャン社長の試算によれば、ドライバーへの検査費用は会社の売上の5~10%を占め、更にドライバーへの特別手当や”3つの現場対策”を実施するためのドライバーの宿泊料金などその他の感染対策コストも必要になる。
検査費用の負担は大きいが、多くの企業は現在のやり方は科学的ではないと考えている。
ミーラングループのミー会長も現行の検査要求は恣意的で、科学的にも経済的にも効果が低いと指摘する。”3つの現場対策”にかかるコストは高く、更に検査費用を負担するのは企業にとって非常に困難だ。
従業員の検査に関しては、ワクチン接種済みであっても必要とされているが、マイ会長は、もっと科学的な計算に基づいた別の形の検査が必要だと指摘する。
政府の議決105号では、企業は自身の責任に基づき自主検査を実施できるとされている。しかし実際には、保健省は企業の自主検査について具体的な条件を示していない。
フーン副会長も、感染防止対策に関する規定を厳しくし過ぎて企業に負担をかけすぎるべきではないと話す。フーン会長は例として、既にバクザン省とホーチミン市は、労働者や市民の自主抗原検査を認め、その結果をCOVID-19感染防止対策に活用していると指摘する。
フーン副会長によれば、保健省はこれまでの実務経験から、議決105号で規定された期限内に、自主検査方針を全国に展開できるだけの十分なデータを持っているはずだ。
COVID-19の自主検査は、コストを大幅に削減させるのに役立つ。別の物流会社のチャン・ドゥック・ギア社長は、これによって従業員の検査費用の70%を削減できると見積もっている。ギア社長は、自主検査政策は、企業にとって政府が実施している他のどんな企業補助政策にも劣らないほど効果があるだろうと評価する。
企業によれば、より低価格の検査設備を自主的に購入することで検査コストを削減できるという。ビンフック省のある企業幹部は、最近様々な医療設備販売企業から簡易検査キットや検査サービスについて売込みの連絡が来ているそうだ。これらの企業の提案する価格は、医療機関の検査サービス費用と比べて半額から1/3程度に過ぎない。
「我々は、これらの医療設備販売業者が、検査キットの輸入販売ライセンスを所有していることを確認しています。企業としては、自主検査キットを購入して従業員の検査が実施できるように、自主検査方針についての具体的な指示が政府から出されることを強く希望しています。」とこの企業幹部は述べた。
保健省からの具体的な指示を待つ間、各企業は検査費用を削減するための様々な方法を模索している。ミーラングループが実施している方法の一つは、CNOK(C:正確、N:迅速、O:労働者の精神安定、K:経済)モデルに基づいた検査の実施だ。これは社員をグループに分けて代表者を毎日検査する方法だ。
「まず全従業員を28人ごとに1グループに分けます。この28というのはウイルスの感染周期14日の2倍です。もしグループの中の誰かが感染すれば1日で全員に感染が広がるという前提で、毎日このグループの中から1名が検査を受けるようにしています。」とミー会長は説明してくれた。
例えばミーラングループの場合、350人の従業員がいるので、まず28人のグループを12グループ作る。残りの1グループは、警備員、ドライバーなど感染リスクの高い人14人で構成する。
企業は、毎日13グループの代表者13人のみをテストし、グループ内の検査対象を毎日ローテーションさせる。これにより同じ人が検査を受けるのは14~28日に1回となる。この方式では1か月の検査費用を7280万VNDまで圧縮でき、感染者の発見率も90%になる。
ミー会長はまた、企業はCOVID-19と長く共存する方法を研究していると話した。ミー会長によれば、工場の入り口で入場者を一人ずつバーコード管理し、入り口と工場内の数か所に体温測定用の赤外線カメラを設置する。もし体温が38度を超えた場合、その従業員は抗原検査を受ける必要があり、検査結果に応じて対応が検討される。平熱の従業員は通常通り工場に入ることができ、CNOKモデルに従って検査を受ける。
ミー会長はさらに、毎年の従業員の健康診断時に1人当たり38万VNDの追加費用を支払って抗体検査を行い、抗体が下がっている従業員のワクチン再接種の必要性を確認する予定だと説明する。「これがコストを掛けずにウイルスと共存する方法の一つです。」とミー会長は話してくれた。
出典:21/09/2021 VNEXPRESS
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