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ベトナムビジネス特集Vol128|
優良ブランドを作る! 高級志向のモノづくり

日系企業の商品は総じて価格が高い。そのため中間層や富裕層をターゲットとするが、購入させるのは至難の業。しかし、きちんとブランドを育て、金額に見合った高い価値を提供する企業もある。3社が成功の理由を語った。

DAIKIN AIR CONDITIONING (VIETNAM)
 Sales Head – Senior General Manager 沖田国彦氏

日系製品は松竹梅の「松」
エアコンのシェアがトップ級

 ダイキンベトナム(ダイキンエアコンディショニングベトナム)では大きく3種類のエアコンを販売している。家庭用のルームエアコン、店舗やレストランなどの業務用エアコン、工場や大型ビル向けの産業用エアコンだ。調査により数字は異なるが、同社のシェアは家庭用で約19%、業務用では50%を超えて、ベトナムではトップ級だ。
 一般消費者向けの家庭用エアコンに話を絞ると、ベトナムの年間需要は約230万台という。そこに内外数多くのメーカーが参入している。
「便宜上品質と価格を松竹梅で分けると、松は日系メーカー、竹の上は韓国メーカー、中はタイやマレーシアのメーカー、下はベトナムメーカー、そして梅は中国メーカーになると思います」
 当然価格にも差があり、売れ筋商品の場合で松は1000万VND以上、竹は800万VND前後、梅は600万VNDもあるそうだ。ダイキンベトナムではインバーターエアコンで冷房専用の「FTKA/ATKAシリーズ」が売れ筋商品だ。
 エアコンには冷房専用と冷暖タイプがあり、日本では冷暖が普及しているが、東南アジアではほぼ冷房専用。しかし、ベトナムではハノイなど北部で冷暖タイプが販売されており、少し特殊だそうだ。同社の商品は冷房専用が5シリーズ、冷暖が4シリーズあり、1機種を除いて全てインバーターエアコンだ。
 エアコンの冷媒であるフロンガスは日本でもベトナムでも規制されているが、新冷媒と呼ばれるR32が最新版。ダイキンでは「インバーター+R32」の普及を目指している。
「R32はともかく、ベトナムは電力価格が高いこともあって、消費者は省電力というインバーターのメリットを知っています。実際にインバーター率は全国的に高く、メコンデルタでは8割ほどだと思います」

エアコンの取付イメージ

修理とメンテは地場の協力店
ブランドの価値を左右する

 ダイキン工業のベトナム進出は代理店に始まる。1995年にベトキム社が設立され、2008年にダイキン工業の資本が入ってグループ化、社名も変更した。2009年からはサービスステーションを作り始め、2015年には100%の子会社化。そして2018年には北部フンイエン省に工場を設立。現在では全国に6支社があり、サービスセンターは6拠点、小規模なサービスステーションが7拠点ある。

クアンニン省のサービスステーション

 2008年の売上は約23億円で従業員数は約100人。それが2018年には売上が約540億円と23倍となり、従業員は約800人に。工場完成後の現在の従業員数は約1800人で、足元の2020年4~9月はCOVID-19もあり、その売上への影響は否めないが、中期的には以前の好調を取り戻してさらなる売上増を目指す。
 メーカーとして製造、販売と並んで重要なのはサービス(修理)であるが、このサービスを支えるのがローカルのサービス協力店だ。自社のサービスセンター等では主に業務用エアコンの修理やメンテナンスを行い、家庭用エアコンは全国に約150社あるサービス協力店が担当している。
「長く使っていただくための修理とメンテナンスは弊社の命綱です。全国どこでも『早い』と『確実』を徹底しています」
 問合せがあればまず点検に行き、たいていは部品交換が必要なので戻って部品を用意し、再度取り換えに行く。これが一般的な工程だが、同社では「1発完了」が基本。問合せ時に丁寧にヒアリングして原因を予想し、想定した部品を持参するからだ。
 サービス協力店には工場などでトレーニングをし、定期的な仕事の斡旋やガソリン代支給などで支援する。ただし、定期的なチェックは厳しく、その範囲は使う道具にも及ぶ。トレーニングの期間は、家庭用エアコンの据付けなら1ヶ月ほどだそうだが、資格がないためにレベルの差が大きい。
「商品が原因でなくても、作業の悪さは弊社へのクレームとなり、ブランドの価値を下げます。逆に対応が良ければ評価につながります。これはベトナムへの貢献と同時に自社のためでもあるのです」

エアコン据付けのトレーニング

販売店や量販店で対面販売
「なぜ高いの?」がチャンス

 サービス協力店は商品の販売はできない。客先で修理せず、新しいエアコンを売り込むのを防止するためだ。販売を担うのは全国に約1000社ある販売店。家庭用のルームエアコンはこうした販売店やDien may Xanh、Nguyen Kimなどの家電量販店で購入されるのが一般的だ。
「今の日本やアメリカでは、店舗で実物を見てから割安なECで買うことが多いのですが、ベトナムでは逆です。ネットで十分に調べて店舗に行き、店員に質問してから購入するのです」
 ダイキンベトナムでは販売店向けセミナーや量販店向け研修会を開催して、商品の特徴や新商品の情報を教えている。それが対面販売で顧客に直接届くので、テレビCMなどより広告効果が高いそうだ。
「弊社の商品は高価格帯ですから、『なぜ高いのか』とお客様に聞かれた時こそがチャンス。そのポイントをきちんと説明できるからです」
 ベトナム工場では国内向けに、家庭用で売れ筋の小型シングルスプリットタイプ(室外機と室内機が1つずつのエアコン)を3~4シリーズ生産している。これが家庭用エアコンの6~7割を占め、残りはタイなどからの輸入品だ。

フンイエン省にあるダイキンベトナムの工場

 今年からは業務用のダクトタイプの生産をスタート。工場は敷地の3割ほどしか使っておらず、今後は生産量を上げて国内向けを増やし、将来は輸出も計画している。同時に販売網を拡大させるため、営業とサービス部門を一体とした小さな出先機関を増やしていきたいという。
「価格が安い他社製品を追うことはしませんし、脅威とも感じていません。ダイキン工業は東南アジアを戦略拠点ととらえ、中でもベトナムに注視しています。また、ダイキンのモノ作りの基本『地産地消』の考えもあり、国内販売用としての工場を新設したのです」

DAIKIN AIR CONDITIONING (VIETNAM)>>


KAO VIETNAM
General Director 長谷川尚一氏

紙おむつ「メリーズ」が牽引
売上が10年で約6倍に

 花王ベトナムの商品は3タイプに分けられる。1つは国内工場で生産しているスキンケアブランド「Biore」(ビオレ)で、アジアや日本へも輸出している。2つ目はアジアからの輸入品で、生理用品「Laurier」(ロリエ)と洗剤「Attack」     (アタック)はタイから輸入。
 3つ目が日本から輸入される高価格商品。売上の3割を占めるベビー用紙おむつ「Merries」(メリーズ)、急激に売上を伸ばしている敏感肌スキンケアの「Curel」(キュレル)や「freeplus」(フリープラス)で、価格は日本より1.3~1.5倍高い。

男性用の「メンズビオレ」

 同社の売上は2009年から2019年の10年間で約6倍へと増加し、2019年度は17%の増収。これを牽引したのが2014年発売のメリーズで、その売上は発売時からの6年で5倍以上。
「弊社で最も売上高の大きいブランドはメリーズです。価格はプレミアムゾーン、最も高い価格帯といってもよいでしょう。ハノイとホーチミン市の合計で、メリーズのシェアは市場全体で10%以上、プレミアム価格帯では50%以上と見ています」
 ベトナムのおむつ市場は外資系企業が優勢だ。他にはユニ・チャームが日本から輸入販売している「moony」、同社が買収した地場メーカーDiana社の「Bobby」、キンバリークラークの「Huggies」、P&Gの「Pampers」などが人気商品であり、ベトナムメーカーの商品も多い。
 市場の中で25%ほどがプレミアム商品であり、メリーズの購入層は品質を重視するやや所得の高い人が中心という。当初はハノイやホーチミン市など大都市での購入が多かったが、徐々に各省の都市に広がっている。

メリーズが選ばれた3つの理由
現在はベトナムママの評価をPR

 高価格にもかかわらずメリーズがヒットした理由を、長谷川氏は3つあると考えている。一つは日本の母親に圧倒的に支持されている信頼性。SNSが浸透しているベトナムでは日本の情報は簡単に入手できるし、同社も日本の好評価を積極的にマーケティングに活用した。
 2つ目は通気性に優れたムレない品質。ベビー用紙おむつは漏れないことが大切だが、いわば大前提なのであまり差別化にならない。かぶれの一因となる、ムレを追い出す通気性へのこだわりが伝わった。
 3つ目はベビーショップや日系ストアに絞った販売戦略。Kids PlazaやCon Cungなどのベビー・幼児用品専門チェーン店では高品質な輸入品を取り揃えており、中間層以上の顧客も多い。当初はこうした店舗約400店で販売を始めた。
「メリーズに限らず、高価格帯商品はプレミアム性を担保する必要があります。むやみに店舗を増やしたり、食品スーパーで販売すると、売行きの落ちる店が出てきます。在庫が多くなると安売りされ、返品も増えて、ブランド力がダウンする。とはいえ、高すぎては売れないので、販売戦略が欠かせません」
 紙おむつはターゲットがかなり限定されている。そのためテレビCMなどは使わず、病院と提携して出産前後の妊婦にプレゼントしたり、最近ではベトナムのセレブママなどにSNSで情報を発信してもらっている。
「以前は日本での評価をアピールしましたが、現在では赤ちゃんを持つベトナムの女優や人気MCの家族などを通じて、この国での評価の高さをアピールしています」
 今後はより高品質なベビー用紙おむつを求める人が増えるだろうという。すると、現在の中間層がプレミアム商品を購入し、そのボリュームが広がる。上位の人にさらに付加価値の高い商品を提供することも、新しい中間層に手頃な価格のプレミアム商品を届けることも考えられるそうだ。

敏感肌用のスキンケア商品
今後は衛生、健康美、快適

 同社がここ3年ほど力を入れている事業がスキンケアのプレミアム商品だ。敏感肌用のキュレルを2018年、カネボウブランドのフリープラスを今年8月に発売し、前者は発売約2年半で売上が8倍以上と大躍進、後者も順調な滑り出しという。

敏感肌スキンケア「フリープラス」

 長谷川氏が中国に赴任していた時期(2008~2013年)に感じたのは、経済が成長するとストレス社会になり、特に敏感肌の人は肌の必須成分であるセラミドが不足しがちになること。発展中のベトナムでも同様で、これら商品の購入者は大半が女性で、肌の悩みが深い、敏感肌の人が中心だそうだ。
 こうした女性は機能や成分が本当に自分の肌に合うかに関心が高く、購入に慎重にもなる。そこで、キュレルとフリープラスのアイテムを各20種類以上、合計50種類ほど揃えた。加えてビューティーアドバイザーと呼ばれる販売員を用意し、丁寧な説明などきめ細かい対応を実践している。
 売場は日系総合スーパー、ヘルス&ビューティストア、スパのあるコスメストアなど約40店に絞った。好評を受けて来年には100店以上にする予定だ。
「専用ブースで肌の状態を確認しながら、納得したうえでご購入いただくことが、高いリピートにつながったと思います。価格が高いことには理由があり、それを納得してもらうことが大事だとメリーズが教えてくれました。プレミアム商品で大切なひとつは『体験』です」
 花王は100の国と地域に商品とサービスを提供しており、ベトナムはアジアの中では最も遅く進出した国。と言っても1995年設立なので今年で25周年だ。その長い経験によれば、アフターコロナでは「衛生」、「健康美」、「快適」がテーマになり、それに沿った商品展開を目指すという。

ドンナイ省にある花王ベトナムの工場

「衛生では消毒液もありますし、健康美では肌や髪のエイジング、例えば肌を本質的に良くする商品や、100%天然由来の安全なヘアカラーなどもあるでしょう。美白の商品では差別化できる敏感肌用スキンケアも考えられます」

KAO VIETNAM>>

NH FOODS VIETNAM
 Sales Director森 大樹氏(左)
VIP and Marketing Manager風間美里氏

400種類のハム・ソーセージ
高級分野で圧倒的なシェア

 ハムやソーセージなどベトナムの食肉加工品市場では、地場大手企業のVISSANがシェア50%以上のトップと言われる。他にはフィリピンのSan Miguel Pure Foods、タイのCPが上位だが、NHフーズ(日本ハム株式会社出資)は経営戦略が異なる。
「商品カテゴリーのとらえ方で異なる部分もありますが、ハム・ソーセージ全体でベトナムにおける弊社のシェアは7%ぼどと考えます。ただ、高級品市場に限ればでは70%ほどではないでしょうか」(森氏)
 NHフーズベトナムの前身は、1993年に設立された地場のGolden Pig社。2011年に日本ハムが株式を取得して連結子会社となった。元々ハム・ソーセージを高級ホテルや航空会社の機内食向けに納入しており、その製法、レシピ、品質が優れていると同社が踏襲した。その後はスーパーマーケットや量販店、コンビニエンスストア、外食チェーンへと販路を拡大してきた。
 事業は主力の「ハム・ソーセージ」、チルドおよび冷凍肉の「食肉」、トンカツや唐揚げなどの「加工食品」の3分野。ハム・ソーセージが売上の7~8割、食肉が2~3割を占め、加工食品はこれからという。
 ハム・ソーセージは一般消費者向けの他、上記のように高級ホテルやレストランからのオーダーメイドが多く、長さの違いなども含めると全商品は約400種類。一般消費者向け商品にはNippon Con Heo Vang(Con Heo Vàng=Golden Pig)、Parit等の商品にはNippon Hamを意味するNHのマークが入っており、他社製品より2~3割高いが、売れ筋はソーセージとベーコンだ。

市販のベーコン

「売上は連結子会社後に毎年10~15%増加しており、特に昨年は好調でした。観光客向けのニーズ増や高級ホテルの増加に加えて、量販店でベトナム人の認知度が高まったためだと思います」(風間氏)
 しかし、今年は新型コロナの影響で、高級ホテルと機内食向けを中心にオーダーメイド商品の注文が激減。売上は3月に3~4割まで下がり、7月には8割まで回復したが、7月下旬から新型コロナ第2波が始まって8月は5割まで再び落ち込んだ。現在は7割まで回復してきている。7月に行われた旅行キャンペーンが再度あればテト期の回復が見込めるという。

品質を落とさない定期監査
南北の工場で生産効率化を

 ベトナムも昔の日本と同じく、以前は常温ソーセージが主流だった。それが徐々に低温冷蔵が必要となるチルド商品に移行しつつある。NHフーズベトナムでは日本で人気のある「シャウエッセン」を模した粗挽きソーセージ「Parit」を販売開始し、ベトナムのソーセージ市場での拡大を目指している。
 それは、ベトナム人の所得が上がるに連れて舌が肥え、食へのこだわりが強まってきたためだという。食の西洋化も進み、特に若者の間に広まった。このような追い風もあってNHフーズベトナムは南部ロンアン省に次いで2017年に、北部フンエン省に第2工場を竣工した。

工場内での熟成の様子

「商品の安全、安心の確保と品質維持のために年に数回、日本ハム本社による定期品質監査が行われます。今年は新型コロナで来越できないので、オンライン監査を実施しました」(森氏)
 同社の製法は前身のGolden Pig社に倣ってフランス式。例えば、サラミなど熟成が必要となるものは日本では途中で加熱処理するのが一般的だが、ベトナムでは自然熟成。そのため特に時間が必要で3~4ヶ月、長いと6ヶ月の場合もある。日本から来た社員が「日本ハムグループで一番うまい」と唸ったほどの味覚とか。 また、現在の南北の工場では似た種類の商品を作っているが、将来的に南部は少量多品種向け、北部は数十種類に絞った大量生産向けに分けたいという。
「去年は両工場での月産合計が250tほどでしたが、現在は150~200tくらい。月産200tとして400種類なので、1種類で平均500㎏になります。ただ、生産量が10~20㎏の商品もあり、生産体制を効率化させたいと思っています」(森氏)

法人向け食肉事業が成長
販売網を全国に広げたい

 同社の一般消費者向け商品はスーパーマーケットやコンビニなどでの販売がほとんどだ。客層は主婦が多いために女性が中心で、中間層以上。そのため、ホーチミン市なら2区など高級住宅街のスーパーマーケットや高級食材店での売行きが良いという。
「売れているのはハノイとホーチミン市が中心で、その周辺地域であっても難しい。大都市に比べると収入は下がり、食の西洋化もさほど進んでいないからです」(風間氏)
 商品のPRはインフルエンサーを使ったSNSマーケティングや特定商品の割引キャンペーン、試食販売など。また、ホーチミン市1区には自社商品の直売店      「Le Cochon D’or」があり、ホテル向け商品を一般消費者向けに販売したり、ハムの量売りにも対応。SNSアプリでは日本人はLINE、ベトナム人にはZaloで発注できるようにしている。

日本ハムショップ「Le Cochon D’or」

 スタッフは全国で約450人。およそ南部の工場で250人、北部の工場で100人、営業と配送を合わせて100人となっている。以前は冷凍トラックを持つ物流業者が少なかったので、ホーチミン市、ハノイ、ダナンの営業所のある都市では直接配送により物流網を構築、フーコック、ニャチャン、クイニョン、ファンティエット、フエでは専属の配送業者に委託している。
 今後も現在の3つの柱を成長させていく。特に2014年から始めた食肉事業は、毎年倍々で売上が伸びているという。
「食肉販売では法人向けが9割で、高級レストラン、日本食レストラン、外食チェーン店、ローカルの大衆食堂もお客様です。値段の高いコムタム屋では、弊社の食肉が使われているかもしれません」(風間氏)
「日本のように販売網を全国に広げたいですね。まずは主要都市で、ハロン湾近くのハイフォンやカントーなど。人口が一定数あり、新型コロナ後も見据えて観光都市である地域です」(森氏)

NH FOODS VIETNAM>>