”バインクオン・トゥイ・クエ”は、2代にわたって続く食堂で、一皿1万3000VND(72円)でバインクオンを提供しており、ハノイで最安の店とハノイっ子から評価されている。
トゥイクエ通り29番地の小さな路地の奥にあるこの店は、ファン・バン・チンさん(62歳)がベトナム北部料理のバインクオンを提供しており、毎朝多くの客でにぎわう。営業時間は朝6時から14時までで、最も混雑するのは7時から9時の間だ。この時間帯は、路地の中に多くのバイクが並ぶ。
オーナーのチンさんは、自分の店の中と路地の入口にある奥さんの店の2か所に客を座らせる。両方で最大30人までが同時に食事ができるようになっている。
何十年も続くこの店は、多くのハノイっ子が「ハノイで一番安いバインクオン」と太鼓判を押す。チンさんによると、この店は、母親のグエットさんが1950年代に始めた。当時、店の名前は『グエットさんのバインクオン』で、値段は1皿1ハオ(10ハオで1VND)だった。その後、チンさん夫妻が店を継ぎ、店の場所が分かりやすいように今の名前に変えた。チンさん夫妻が店を継いでからも既に40年以上が経っている。
常連客のファン・ズイ・アインさん(35歳)は、この店は子供時代からの馴染みだと話す。子供の頃、アインさんは両親に連れられてよくこの店で朝食を食べていた。現在、結婚したアインさんは、妻と子供たちを連れてこの店にやってくる。このようにして、チンさんのこの店は、多くの人に愛されてきた。
アインさんは、ハノイの他の有名店にも数多く行ったが、アインさんにとってはこの店のバインクオンが一番美味しいそうだ。「多分ここの味に慣れ過ぎてしまったので、どこで食べてもここほど美味しいとは感じませんし、値段も安いです。」とアインさんは話す。
この店のメイン料理は、バインクオン(ひき肉ときくらげ入り)と卵入りバインクオンの2種類だ。価格は一皿1万VND(約56円)、追加のハムが5000VND(約28円)というのをこれまで長年続けてきた。2022年の11月に、チンさんは、バインクオンの価格を1万3000VNDに、ハムを7000VND(約39円)に値上げした。現在、ハノイ市内で同じような料理を注文したら一皿2万5000VND~3万VND(約139~166円)はする。一部の有名店なら4万VND(約222円)以上することもある。
丹精込めて作るバインクオンの一皿の価格についてチンさんは「一生金持ちにはなれないでしょう」と話す。しかし、チンさんは、家業を守りたいという気持ちと、長年にわたって通ってくれる常連客のために店を続けている。子供達は成長して結婚しており、安定した仕事に就いているので、経済的なプレッシャーが無いのも店を続けられる理由の一つだ。
「沢山のお客さんから、もうこの店の味に慣れてしまって他の店に行きたくないので、値上げしてでも続けてほしいと言われました」とチンさんは話す。実際、常連客は皆年を取ったのに、チンさんはずっと変わらず一皿1万ドンで販売していた。
毎日、朝4時に起きて小麦粉をこねたり、具材を準備して、店を綺麗に掃除する。チンさんが特にこだわっているのが米粉の生地だ。美味しい米を昔ながらの石臼でひいて、水を混ぜて生地を作る。この作り方は、母親から長年に渡って受け継いできたものだ。
客が来て、注文してから調理する。蒸し器の上に生地をひしゃくで救って入れてまんべんなく丸く伸ばす。1分ほど蒸すと生地が程よく固まり、歯触りが良くなる。チンさんは平らな竹の棒を使って生地を皿の上に置き、具材を載せてから破れないように慎重に巻いて、半分に切り、最後にフライドオニオンをまぶす。
つけダレは、甘酸っぱい味だ。追加注文のハムは、3㎝程度にカットし、つけダレの器の中に入れる。生地は透明感があり滑らかだが、すぐに破れたりはしない。2~3層重なった生地からでも中の具材が見える。具にはキノコの香りがあり、噛むとキクラゲの食感とひき肉のうまみが感じられ、生地の甘みと相まって独特の美味しさを醸し出す。
チンさん夫妻は毎日5~7kgの米を使って200皿以上のバインクオンを作っている。週末の客が多い日には、300皿が売り切れることもある。
店は常連客が多く、他には南部や中部から来た旅行者や、外国人旅行者も多くやってくる。値段の安さから、この店は、学生や工場労働者の馴染みの朝食場所にもなっている。
ダム・ゴック・ハインさん(24歳)は、よく友達を連れてこの店に朝食を取りに来る。ハインさんにとって、この店のバインクオンは味が濃すぎもせず薄すぎもせず朝食にはぴったりだ。「ここのバインクオンは熱々で具材もたっぷりで、数枚食べたらお腹がいっぱいになりますよ」とハインさんは話す。
この店は路地の奥にあるので、少し場所が分かり難いかもしれない。店自体もあまり広くないので、混雑する時間帯に行くと結構待たないといけなくなる。注文時には、空腹状況に応じて少な目や大盛も注文できる。チンさんは、客の食べ残しを見ると自分たちの努力が尊重されていないように感じて、次回からはお断りしたくなると話す。
出典:19/03/2022 VNEXPRESS
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