ホーチミン市内では、元々外国人家庭で働くためにベトナムに来たフィリピン人メイドがベトナム人家庭で働くケースが増えている。
カレンさんは毎朝5時にトゥードゥック市タオディエン地区にある家を出て、朝食と子供達を学校へ行かせるための準備をするために300m離れた雇い主の家に向かう。
カレンさん(43歳)はフィリピン人女性で、これまで8年間にわたりベトナムでメイドの仕事をしてきた。最初の2年は外国人家庭のために働いていたが、後の6年はベトナム人家庭で働いている。「生活費を除いて毎月1200万VNDを貯めて、子供の面倒を見ているフィリピンの夫に送金しています」とカレンさんは話す。
カレンさんによればタオディエン地区の宿泊施設にはこの仕事に就いているフィリピン人が多いので”外国人おしん村(ベトナムではメイドのことをOsinとよぶ)”とよばれているそうだ。彼女たちのベトナムでの道のりはよく似ている。最初は外国人家庭のために働くが、雇い主が帰国すると、彼女たちはベトナム人家庭のために働くようになるのだ。
「ベトナム人家庭での仕事でも給料は外国人家庭の時とほとんど同じ1500万~2000万VNDで、ときにはもっともらえることもありますよ」とカレンさんは話す。現在の彼女の仕事は、雇い主の3歳になる子供の世話と家の掃除で、料理はしない。
「オーナーはベトナムの味を求めて自分で料理するので、私はお手伝いするだけです」とカレンさんは話す。
カレンさんは家の掃除や子供の面倒だけでなく、家庭教師を務めることもある。カレンさんは、子供に英語や体操、最低限の礼儀などを教える。夜、子供が寝る前には、英語で絵本を読み聞かせる仕事もしている。
「オーナーの子供はまだ3歳ですが毎日私に英語で話しかけてきます。お母さんがいないときなど、私の方に走り寄ってきて抱きつきながら”カレン”と叫ぶんです」とカレンさんは話す。
カレンさんによればベトナムのメイドの賃金はフィリピンほど高くはないが、ベトナム人は非常に寛大で、勤務日数が足りない月でも、いつもと同じ額を払ってくれたりするそうだ。また、ベトナムの物価はフィリピンより安いので、貯金できる金額はフィリピンよりも多くなると説明してくれた。
タオディエン地区のカレンさんの家の近くに住むグエン・タイン・ニャットさん(35歳)は、この5年間でこの地域にやってくる外国人メイドが大幅に増えたと話す。”外国人おしん村”には様々な国籍の人が約20人ほど住んでいるが最も多いのはフィリピン人だとニャットさんは話す。「毎日午後にクオック・フン通りの路上マーケットに行くと、彼女たちが買い物をしたり子供を散歩させたりしているのを見かけますよ」とニャットさんは話す。
タオディエン地区に住むチャン・タイン・フーンさん(30歳)は、以前はベトナム人のメイドを雇っていたと話す。しかし、フーンさんに子供が生まれたときに、メイドが契約外のことを色々と要求するようになり、言い訳ばかりするので首にした。
「ベトナム人メイドの殆どが仲介業者を経由するので、オーナーのことが気に入らないとすぐに辞めます。別の人を探すには仲介業者に追加で100万VND払わなければなりません」とフーンさんは話す。何度も同じようなことがありメイドの質も安定しなかったので、フーンさんは外国人を雇うことにした。
フーンさんによればフィリピン人メイドは非常に真面目で、オーナーが注意しなければならないようなことは全くない。また、彼女たちは求められた以上の仕事を自ら考えておこなう。「例えば選択するときには色の濃いものと薄いものを分けたり、シーツ、枕カバーから下着まで丁寧にアイロンがけします」とフーンさんは話す。
外国人メイドは英語ができるので幼い子供たちが英語に触れる機会にもなる。「一番いいのは彼女たちがとてもプロフェッショナルなことです。彼女たちは時間で仕事をするのではなく終わるまでやるんです。またオーナーの家庭のことを外で噂したりも絶対にしません」とフーンさんは付け加えた。
7区フーミーフン地区に住むグエン・トゥー・チャンさん(35歳)も同じ経験をしたことがある。「仲介センターに所属するベトナム人はまじめに仕事をしません。彼女たちは、辞めたらセンターが別の仕事を紹介してくれると思っているので、すぐに仕事を辞めます」とチャンさんは話す。
チャンさん一家は現在、月給2000万VNDでフィリピン人のメイドを雇っている。フーンさんは、メイドが家事をこなし、美味しい料理を作り、子供の面倒を見るだけでなく英語を教えてくれたり、応急措置のやり方や車の運転まで知っているので、支払っている金額には満足している。「彼女たちは大体2~3時間で家の仕事を全て終わらせてしまいます。何かわからないことがあれば自分でネットで調べて解決してしまいます」とフーンさんは話す。
VnExpressの調査によればホーチミン市の外国人メイドの殆どが7区とトゥードゥック市に集中している。
タオディエン地区人民委員会のチャン・フーン・ナム副主席によれば、この地域には現在109の国と地域の人が8600人以上居住登録している。このうちフィリピン国籍の人は376人となっている。全員が居住登録をおこなっており、労働許可証も取得している。「フルタイムのメイドとして登録している人も84人います」とナム副主席は話す。
ローズマリーさん(59歳)は、フィリピン人メイドがホーチミン市で人気がある理由について、フィリピン人メイドはベトナムに来る前に全員が約1年のメイド訓練コースに参加しており、家事のやり方から子供やお年寄りの世話の仕方、応急措置や消化活動のやり方などを学んでいるからだと説明する。
ローズマリーさんは2011年に夫が亡くなった後、経済的に困難な状況に陥った。遠い親戚がベトナムで働くことを勧めたので、ベトナムに来ることにした。当初は、7区にある英語センターでアシスタントを務めていたが給料は300USDしかなかった。この金額では生活が苦しく、メイドの仕事の方が稼げることに気づいてその後転職した。
現在、ローズマリーさんはタオディエン地区のベトナム人家庭でメイドの仕事をしており、月収は1500万VNDになった。
「ベトナムで働くことができてラッキーだったと思います。仕事も収入も安定しています。フィリピンにいる子供たちの生活も良くなりました」とローズマリーさんは話す。
出典:18/05/2023 VNEXPRESS
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