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【社会】COVID-19によって家族を失った子供たち

(C)VNEXPRESS

13歳のニューは、ホーチミン市を襲ったCOVID-19の感染拡大の波が自分たち姉弟の両親や祖父の命まで奪うとは考えもしなかった。

ニューの新学期は9月13日に母方の祖父母が暮らすドンナイ省でスタートした。制服、教科書、ノート、友達、全てが新しくなったがニューには気に入らなかった。

「私のお気に入りは全部サイゴンにあるの。そして、両親と祖父の遺灰もそこにあるの」と彼女は話した。

数か月前、ニューたち姉弟は、ホーチミン市8区のアパートで両親と父方の祖父と一緒に暮らしていた。ホーチミン市で感染拡大が起きると父と母がCOVID-19に感染した。7月20日にニューの母親は祖父に連れられて病院にいき、父親は家に残った。母親が病院に向かったた後、父親も重症化した。迎えに来た救急車の救急隊員はニューに「お父さんの心臓が止まっている」と告げた。

翌日の朝、父親の死から6時間後にニューは母親が亡くなったという知らせを受け取った。残された最も身近な身内は祖父だけだった。しかしその3日後、祖父もCOVID-19によって息を引き取った。

ニューと7歳の弟のフイの姉弟は、COVID-19によって孤児となった数百人の子供たちのうちの2人だ。ホーチミン市でも4月末からの感染第4波によって僅か数か月で約250人の子供が孤児となった。ベトナムではこれまでに62万人以上がCOVID-19に感染し、1万5000人以上が亡くなっており、その殆どが感染第4波によるものだ。

タン(11歳)とハオ(18歳)の兄妹も1か月前に父親を亡くした。父親の遺灰を受け取った時、遺影を持つタンの両手は震え、泣きたいと思ったが泣けなかった。

二人の父親は、12区のタントイニャット街区の職員だった。ホーチミン市内でCOVID-19の感染が拡大した際に彼らの父親は感染防止活動に参加し、8月初旬にCOVID-19に感染した。およそ10日間の自宅療養後、父親はこの世を去った。

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第4野戦病院(市立小児病院)の医師たちは、このように突然両親や身内を失った子供たちを数多くみている。

8区に住む9歳のケンの母親はCOVID-19に感染し、病院に到着する前に亡くなった。ケンの父親は妻の葬儀の準備と重症化した年老いた母親の看病をしなければならくなった。1人で病院で過ごすことが多くなったケンを病院のスタッフたちは我が子のように可愛がった。

「いま最も心配なのは、多くの子供たちが愛する家族を失ったことで心的外傷後ストレス障害を引き起こす可能性が高いことです。」と労働省児童局のダン・ホア・ナム局長は話す。過去2年間の感染拡大は私達の生活様式を変えた。しかし、これらの孤児たちにとってはそれは、生活様式以上の変化であり、恐ろしい人生の変化であった。

ニュー姉弟の祖母であるグエン・ティ・フーンさんは、孫たちの不安定な様子に気付いていた。弟のフイは両親が亡くなったことをまだ知らされていない。嫌なことがあれば母親を呼ぼうとする。「先日、私の作ったすっぱい卵のスープが母親の作ったスープの味と違うと言ってフイは駄々をこねました。」とフーンさんは話す。

しかし、家族はニューのことについて、弟のフイ以上に心配している。ニューは、部屋に閉じこもりがちで、突然錯乱したように大声で叫び出すことがある。ニューによると、最愛の3人の家族の事がいつも思い出されるが、弟のフイに真実を知られないようにするため、感情を押さえつけて我慢しているとのことだった。

タンとハオの兄妹は、父親について考えるときに様々な後悔の念が押し寄せてくる。父親と過ごした時間は短く、それはもう取り戻すことが出来ない。4年前、ハオは学校の勉強にストレスを感じていたので、母親はタンとハオをタイニン省の実家に連れて帰り、父親だけがホーチミン市に残った。今年の初めにホーチミン市の家を改築し、兄妹2人のための部屋が完成した。家族の誰もが一緒に暮らせるようになることに興奮していたが、実際の同居生活が半月しか続かないとは夢にも思っていなかった。

父親の死に直面した兄妹2人の反応は対照的だった。母親によると、兄のハオは泣くこともなく感情を表に出さないので冷たく感じるほどだった。一方のタンはいつも父親のことを思い出しては泣いていた。亡くなってから1ヶ月が経ってもタンは毎晩、携帯電話を開いて父親の写真を黙って見つめていた。タンは父親の顔を忘れたくないと言い、時間と共にあの平和で暖かな日々を与えてくれた父を忘れてしまうのが怖いと話した。

心理学者のチャン・キム・タイン博士によるとCOVID-19によって突然両親を失った子供たちは、大きな心の痛みに耐えなければならず、短期的にも長期的にも深刻な心理的ダメージを負うだろうと指摘する。さらに、これらの子供たちは、精神的にも物理的にも支えてくれる肉親を失ったことで、将来的にも人生の中で様々な問題に直面し続けるだろう。

「突然の別れによる悲しみは想像を絶します。愛する家族を救うために何もできなかった自分に無力感を感じ、罪悪感、苦い後悔、お別れの言葉もない別れ、見送る人のいない空虚な葬儀、将来への不安などが、子供たちの心に大きな傷を与えるでしょう。」とタイン博士は話す。

専門家たちは、感染症との戦いの中で、COVID-19によって孤児となった子供たちの存在が忘れ去れてしまう事を危惧している。タイン博士によると、親類や社会からの精神的なサポートに加えて、子供たちの心理カウンセリングプログラムが必要だという。更に言えば社会がこれらの子供たちのメンタルヘルスを様々な側面からサポートできる文化的なバックボーンが形成されることが期待されている。

多くの政府機関や団体が、孤児となった子供たちの生活を安定させるためのサポートを提供している。9月11日にホーチミン市労働局は、COVID-19の犠牲となった孤児に対する毎月の助成金プログラムを発表した。

ホーチミン市評議会のグエン・ゴック・ニュン副会長は、COVID-19の影響を受けた子供たちの高校卒業までの奨学金制度立ち上げたと発表した。立上げから1ヶ月で385人の子供への奨学金給付が決定している。

第4野戦病院では、毎週子供たちに政府機関や民間企業からのプレゼントが渡されている。8月5日には、ケンに病院のスタッフからサプライズでケーキとプレゼントが贈られ、9歳の誕生日が祝われた。

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ハノイ社会人文科学大学のグエン・トゥアン・アイン助教授は、COVID-19が過ぎ去った後で孤児たちが取り残されることを心配している。「子どもたちの家庭環境、生活状況、学習環境、ニーズ、希望と政府、地域コミュニティ、社会からの支援能力を理解したうえで、子供たちの人生を再編するためのソーシャルワーキング活動が必要です。我々の社会は子供たちが出来る限り最良の条件を享受して成長できるようにすることを目指すべきです。」とアイン助教授は話す。

新学期の最初の授業が終わると、ニューには新しい先生や友達ができた。ニューのこれまでの学業成績は非常によく、ニューはこれからも勉強を頑張ることを誓った。
「学校の先生になりたいと7年前から思ってました。でもこれからは、お医者さんになるという夢に向かって頑張ります。」とニューは将来の夢を教えてくれた。

出典:14/09/2021 VNEXPRESS
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