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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想第70回
Hokuriku Bank

2021年12月に開設された北陸銀行ホーチミン駐在員事務所。地盤とする北陸3県、北海道の企業を支援するほか、本社のある富山県からサポートデスクを受託している。自らホーチミン事務所開設を推進した山田太一所長が語る。

近年増加するベトナム進出

山田 弊行のお取引先のベトナム進出が着実に増えてきたからです。北陸銀行が地盤とする富山県、石川県、福井県の北陸3県および北海道のお客様が約80社、7割程度が製造業です。そして、東京都、大阪府、愛知県などほかの地域の支店のお客様を含めると、合計で約210社になります。

 進出先はベトナム南部が140社、北部が65社、中部が5社で、南部には製造業を中心に多様な業種の中小企業が進出しています。少しでもお手伝いがしたいと思い、ホーチミン市に駐在員事務所を開設しました。

 北陸銀行にはニューヨーク、上海、大連、バンコク、シンガポールと併せて合計6つの海外駐在員事務所があります。

山田 多くのお客様が何かしら海外に関連したビジネスを行っており、海外進出を果たしています。進出するお客様が多くなれば、日本との間で何らかの顧客サポートを実施できる可能性は高まります。

 ベトナムに関しては、新型コロナ前まで進出先は着実に増えていました。当時、本部で国際企画の仕事に携わっていたこともあり、ベトナムに駐在員事務所を開設し、そこで働いてみたいという思いがありました。何度か書類を申請し、ようやく社内決裁を取り付けました。

 ベトナムの有望性はデータからも明らかです。日本政策金融公庫が海外に現地法人を持つ取引先の動向を把握するため、毎年「取引先海外現地法人の業況調査」を発表しています。

 中小企業が対象なのでひとつの指標としていますが、その回答の中の「今後3年程度の事業展開における有望国・地域」(2024年1月調査)でベトナムは10年連続で1位となっています。

山田 1つ目はベトナムで事業をスタート、工場を建設するなど、日本のお客様に対するベトナム進出支援です。2つ目は約210社のお客様の事業展開のサポートです。販路拡大や調達先見直しなどのお手伝いを行っています。

 3つ目は、日本のお客様とベトナムの企業とをつなげるビジネスマッチングです。日本で生産した製品のベトナム市場での販売、ベトナムから商材の調達を行いたいなどのニーズに対応しています。最近はベトナムの国内市場を目指して進出する企業が増えていると感じています。

 4つ目はベトナムの経済、金融、産業等に関する情報提供です。お取引先向けセミナーの開催や寄稿、講義などの業務です。

 また、本社が富山県より富山県ホーチミンビジネスサポートデスク事業を受託しています。北陸銀行とお取引のない、富山県内に本社や事業所を有する、ベトナムビジネスに携わる企業のご相談にも対応しています。

山田 例えば、衣料メーカーの進出支援です。高品質な日本製品をベトナム市場で販売するため、当地に販売会社を設立しました。私共は進出アドバイス、対象企業とのアポイントの設定、現地企業の視察アレンジ、外部専門業者の紹介などのサポートを実施しています。

 ほかには、ベトナムの製造業に生産を委託して、商社的な役割で日本に輸出するための現地法人を設立する事例があります。ベトナム企業の紹介から現地視察、試作、完成品の立合い、輸出入業者の紹介まで一連の工程に同席させていただきフォローを行いました。

 中国から調達している部材をベトナムからの調達に切り替えたいニーズのあるお客様には、ベトナム現地企業の紹介、現地視察アレンジ、見積書取得サポート、輸出入業者紹介等の支援を行っています。

 ベトナムフルーツを取り扱いたいというお客様に現地企業を紹介するなど、対応する商材の種類は幅広いものとなっています。

中小企業を見て気付くこと

山田 最近のキーワードは「人材」です。日本国内の人材不足からベトナム人を雇用したいというニーズが旺盛です。特にエンジニア等の技術者、ベトナム人高度人材を採用しようとする動きが活発化しています。

 外国人が日本で働く際、日本語障壁が高いと感じているというデータがありますので、私共は日本語学校を併設した、特に日本語教育に熱心な人材紹介会社を選定し、お客様に紹介するようにしています。

 ただ、今月依頼してできるだけ早く人が欲しいなどの時間的猶予がない案件の場合、紹介会社側の募集期間が確保できないことから、優秀な人材を採用できる確率は高くありません。

 事前に自社の採用計画について紹介会社側と情報共有をした上で、中長期的に採用活動を進めていければ、優秀な人材を獲得できる可能性は上がります。

 現在、弊行のお取引先である複数の飲食店チェーンがベトナムへの進出を計画しています。目的はベトナム市場の開拓だけではなく、優秀なベトナム人材の育成もあります。将来は幹部候補として、在留資格「企業内転勤」の枠組みを利用して、日本で雇用することにあります。

 ここ最近、弊行では新たに進出する製造業の案件が減少傾向にあります。ベトナムは、人件費は中国やタイに比べて安く優位性がありますが、悩みは現地調達率の低さです。そのため調達コストがかかり、少ロットでは利益を出すことが難しい事業環境になりつつあります。

 もちろんここ最近の円安進行の影響もあります。人件費や都市部近郊の土地代は年々高騰しており、総じてものづくりにかかるコストは上昇する傾向にあります。一方で、モノのやり取りが発生しない設計やITなどの企業の進出は着実に増えています。

 現地法人のガバナンスの問題も気になります。日本本社が現地法人の実態を把握できていないため、何らかの調査や検査の際、当該現地法人の不正が発覚するケースです。こうした潜在リスクを持つ中小企業は多いように思います。

 防止策として、現地の専門家の目を入れて定期的にチェックしてもらうことをお勧めしています。

山田 現地にいて、色んなことに対処できると、北陸銀行の駐在員事務所をアピールしたいと考えています。人が集まる場所には顔を出すようにしており、おかげさまで相応のネットワークもできてきました。何かしらお客様のお役に立てる対応や連携はできるのではないかと感じています。

 また、北陸銀行と北海道銀行の持ち株会社であるほくほくフィナンシャルグループ社内で活用できる金融技術や、協業可能な企業などを見出すことにも関心があります。

山田太一 Taichi Yamada
大学卒業後に北陸銀行に入行。北海道、石川県、富山県、東京都の本支店に勤務。本部では融資、営業企画、国際企画部門に携わる。2021年12月のホーチミン駐在員事務所開設と共に現職。