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ベトナムビジネス特集Vol127|
韓国企業のベトナム戦略

ベトナムで存在感を高めている韓国系企業。その数は約8000社、近年は1年に約1000が生まれるという。彼らはなぜベトナムを攻め、どんな戦略を立てているのか。弊誌でコラムを連載するインテージベトナムのコメントと合わせて、代表的な3社を紹介する。

CAFE24 VIETNAM
Vietnam Branch Manager Mr. Igyong Kim

海外の友人たちが勧める国
会社に復帰してベトナムへ

 簡単にECサイトを構築できる、ASPカート型のECプラットフォームが世界中で利用されている。クラウドを使うのでサーバーを持たずに済み、プログラミングなどの専門知識も必要なく、手軽にオンラインショップを立ち上げられるからだ。

 ECプラットフォームのプロバイダーで日本で知名度が高いのは「BASE」、世界シェアトップと言われるのが      「Shopify」、そして韓国で1999年に創業して同国で圧倒的なシェアを誇るのが「Cafe24」だ。同社はアメリカ、中国、日本、フィリピン、台湾に進出。6番目の海外支社として2019年7月にCAFE24 VIETNAMを設立し、2020年3月から事業をスタートした。

「3年前に6ヶ月ほどアメリカとカナダを旅行し、シリコンバレーやニューヨークで働いている友人に会いました。彼らのほとんどが、ベトナムはとても人口が多くて、特に若い人が多くて、かなりホットな国だと勧めるのです。その後、初めてハノイに行ったのですが、毎日新しいビルが建ち、人々はとても勤勉で、とてもダイナミックかつエネルギッシュだと感じました」

 2018年にCafe 24が(韓国の証券市場である)KOSDAQに上場した後、Mr. Kimは会社に復帰するように依頼された。彼は2006~2011年の6年間、同社で働いていたのだ。その時点で新しい海外進出先としてベトナムが選ばれており、彼自身が注目していたこともあって、貢献できるはずと引き受けた。

Cafe24によるECサイト「LocknLock Mall」

 ベトナムはECの初期段階
20年のノウハウで勝負

 Cafe24のベトナムでの特徴は、「ハイパーコネクト」(Hyper Connect)を強く意識していること。ECのプラットフォーム事業にはECショッピングモールをはじめ、ホスティング、Web制作、決済、物流、広告、マーケティング、教育センターなど様々なパートナー企業の協力が欠かせない。顧客はもちろん彼らと共にエコシステムを作るハイパーコネクトが、顧客の成功を支援していくという。

 実際、ベトナムの状況は他国と違うようだ。CAFE24 VIETNAMは3~9月の半年間で約700の顧客とパートナーを獲得。登録者は8月には毎日20~30があったが、9月には5~10に減った。これは広告を止めたことが理由である。

「広告はいったん止めて、今年いっぱいはローカライズに注力し、来年からPR活動を再開する予定です。20年前からECを使っていた韓国や日本と異なり、ベトナムはECが始まった段階なので難しい。ただ、非常に有望な市場です」

 ECの収益では、ベトナムはタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアに遅れを取っており、Tiki,、Lazada、Shopee、Sendoの大手4社も、注力しているのは規模の拡大であって利益ではないという。

 しかし、電子決済アプリ等によるオンライン決済の急拡大、ECショップが在庫を持たない「ドロップシッピング」が主流なのでオンラインでの管理と販売が簡単なこと、ECユーザーが3540万人以上いることなどから、東南アジアで最も急速にECを発展させていると語る。

「新型コロナ禍以前の購買者は主にミレニアル世代でしたが、現在はベビーブーマー世代など、中高年がオンラインショッピングを好む傾向が出てきました」

 Cafe24の強みはECプラットフォームの利用が無料であること。そして次の段階として、便利な商品の検索・表示機能や、商品レビュー機能が追加料金となる。

「まずはお客様に稼いでもらいます。そしてその後で、より発展する機能を提供して我々は収益を得ています。我々には20年の経験とノウハウがあり、Shopifyのようなグローバル企業や競合するベトナム企業より優位性が高いと思います」

Cafe24によるECサイト「CSHOP_BEAUTY」

 韓国企業進出のきっかけ
一生懸命働くのは皆同じ

 近年では韓国企業の進出が著しい。そのきっかけは、大宇(テウ)グループの金宇中(キム・ウジュン)会長の決断で、1990年代初めにベトナムに進出したことだそうだ。彼は建設業や製造業の支社を数多く作り、アジア通貨危機の影響で大宇グループは解体となるが、その後も韓国企業のベトナム進出が続いた。

「タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアなど、東南アジアの多くの国には日本が既に進出していました。ベトナムは『残された国』だったのです」

 もう1つの大きな波は、ベトナムサッカー代表監督である朴恒緒(パク・ハンソ)氏の活躍。朴監督の手腕によりU-23アジア選手権での準優勝、アジア大会4強進出、スズキカップでの優勝などを達成し、ベトナム人が熱狂した。

 これにより韓国人や韓国へのイメージが格段にアップしたことを知った韓国企業が、「今がチャンス」と見て相次いでベトナムに来たそうだ。そんな韓国企業の強さの源について聞くと、しばらく考えた末に、「わからない」と答えた。

CAFE24 VIETNAMのオフィス

「韓国企業も日本企業もどの企業でも、全ての企業は一生懸命に取り組んでおり、皆同じだと思います。Cafe24について言えば、お客様を引き付けて、問題をできるだけ早く解決することにのみフォーカスしています」

ORION FOOD VINA
Marketing Director Mr. Jeong Jong Yeon

広告戦略で認知度アップ
営業担当は4つのステップ

 ベトナムで圧倒的な知名度を誇る菓子が、韓国最大の菓子メーカーであるオリオンの「チョコパイ」(Choco Pie)だ。食べたことのある読者も多いはず。世界60ヶ国以上で販売されており、2018年には世界で20億個以上を売り上げた。そのうちベトナムでの販売は4億5000万個以上で、同社の屋台骨を支える一大市場となっている。

 1974年に韓国で発売されたチョコパイは。1994年からベトナムに輸出を開始。1997年には初の海外進出で中国に工場が完成し、その後は中国から輸出を始めた。ただ、輸送に1ヶ月ほどかかるのでどうしても商品の品質は落ち、価格も高くなってしまう。そこで2005年にホーチミン市、2009年にハノイに現地工場を竣工させた。

「1997年にホーチミン市、2002年にハノイに駐在員事務所を開設し、2000年からから広告を始めました。キャッチフレーズは『ベトナムで、オリオンはチョコパイです』でした」

 当時は色々なメーカーがチョコのパイを販売していたため、チョコパイ=オリオンを印象付けようとしたのだ。白雪姫をモチーフにしたテレビCMも放送を開始し、2005年からはキャッチフレーズを「愛はチョコパイです」と変える。こうしたPR効果もあって、チョコパイはベトナム人に浸透していった。

 そして、オリオンの本格的な営業戦略が始まる。2005年のベトナムの菓子の販路は、パパママショップのトラディショナルトレードがほとんどで、オリオンの営業部隊は代理店20社と営業担当50人だった。しかし、工場が竣工したこともあり、2008年には代理店は160社、営業担当は2000人へと大幅に増強させた。ベトナム市場の将来性を感じたからだ。

 各営業担当は小売店を1社1社訪問し、合計で約20万人の店主に対応した。1人当たり100店ほどを受け持った計算になる。

「彼らは毎週店舗を回り、商品を説明するとともに、棚を整理したり商品を並べ直すなどの手伝いをしました。これが店主たちの心をつかみました」

オリオンの菓子

 彼らは3年前からPDAを使うようになったが、今でも営業スタイルは変わらず、4つのステップが基本だそうだ。まずは挨拶、次が商品や店内の整理で、3ステップが在庫のチェック、最後に注文を取る。店主との信頼関係が何より大切であり、信頼が生まれれば新商品の説明などもしやすくなる。

 営業担当は現在も変わらず約2000人おり、他の従業員は2工場で約800人、役員やバックヤードが約100人で、同社がどれだけセールスに力を入れているかがわかる。そしてチョコパイは、ベトナムのパイ市場でシェア約60%を占めるようになったのだ。

チョコが溶けにくい配慮
価格設定は良心的

 オリオンは販売国によって味や原材料を変える現地化をしており、チョコパイも同様だ。チョコパイを構成するのは大きくチョコレート、ソフトビスケット、マシュマロに分かれるが、例えばパイの間に挟むマシュマロは、韓国版では豚皮から作ったゼラチンが原料だ。

 しかし、豚肉を禁忌するイスラム圏の国では牛肉からのゼラチンを、イスラム教徒と牛肉を忌避するヒンドゥー教徒が暮らすインドでは海藻類からのゼラチンを使っている。

 ベトナムの場合は基本的な味付けや原材料は韓国版と同じで、マシュマロも豚皮が原料。ただし、熱帯性の気候に合わせて、チョコレートが溶け始める融点を上げるように工夫している。これがロシアでは逆で、極寒の気候に合わせているという。

 サイズでは韓国版の39gに対して、当初のベトナム版は28gだった。輸入によるコスト高が理由であり、現地生産をしている現在では33g。価格はおよそ1箱約2万5000VNDから20年以上で約5万VNDとなった。

「この間、フォーは1杯5000VNDから5万VNDと約10倍になっています。かなり良心的な価格設定だと思いますよ」

北部と南部も同じ「ファン」
ベトナム市場にますます期待

 他国と比べたベトナム市場の特徴は、何より若い人が多いことだという。その若者たちは新しいものが好きで、市場の動きはダイナミック。それが同社のアドバンテージにつながっているという。ただ、北部と南部では人の気質が分かれると考えている。

 北部では習慣を守ることを大切に思う人が多く、子どもの頃に食べたチョコパイを忘れずに、大人になっても好きでいてくれる。先祖(仏壇)にチョコパイを供えてくれるのも、北部の人が多いそうだ。南部の人もチョコパイが好きだが、成長すると新しいものに興味を示しがちになる。

中秋節用のギフトセット

「例えばポテトチップスなどのスナック菓子です。しかし、我々はベトナムでも数多くのスナック菓子を販売しており、買っていただいています。この意味でも、とてもポテンシャルがある国です」

 韓国企業がベトナムに注目したのは、大きな縫製工場や靴工場の進出がきっかけと語る。若者が多く、賃金が安く、彼らが作る品質は高かった。それを知った他の韓国企業も進出を始めたのだが、オリオンは早い段階で投資を決断した。

 2017年からはカカオ含有量70%の「Choco Pie Dark」を、2019年から米菓の「An」を発売し、どちらもベトナム市場で好評を得ている。そして、ベトナムでのチョコパイの売上は、本国韓国のそれを既に上回っている。

WOORI BANK VIETNAM
 General Manager Bien Hoa Branch Mr. Jung Min Sik

四半世紀前に支社を設立
2017年に新ライセンス取得

 韓国でメガバンクの一角を占め、日本にも支店を持つウリィ銀行(WOORI BANK)。世界約40ヶ国に478のネットワークを持つグローバル企業でもある。    ベトナムでは韓国系銀行の設立が増えているが、同社は約四半世紀前と早く、1996年にハノイ、2006年にホーチミン市に進出した。現在ではベトナム国内に14の支店を持ち、資産は約13億USD、売上は約400億USDに上る。

「ウリィ銀行は世界展開において、東南アジアではベトナムとカンボジアに注目しています。ベトナムは韓国企業が数多く進出し、FDI(海外直接投資)も大きいからです」

 韓国企業は1990年代からベトナムに進出するようになったが、その理由は人件費の安さ、外資系企業へのサポート、輸出における税制優遇などで、まさに日本企業の進出理由と重なる。その後、中国に進出した韓国系企業がベトナムに拠点を移すようになる。中国の人件費高騰や規制強化などが理由で、製造業のサムソンや鉄鋼業のポスコなどがその代表だ。

「インフラは整ってきましたし、教育を受けた優秀な人材が多く、経済成長で国内市場も拡大しています。今後もチャンスは続き、多くの韓国企業が進出して、工場移転も増えると思います」

 進出当初は韓国での顧客のベトナム支社との仕事が多かったが、ウリィ銀行ベトナムは現在、事業を大きく方向転換しようとしている。2017年にベトナムの法人向けに子会社設立のライセンスを取得したことが理由で、ベトナムの韓国系銀行では、新韓銀行    (Shinhan Bank Vietnam)に次いで2番目だそうだ。

ウリィ銀行のキャッシュカード

「我々の戦略は3つあり、1つ目はプロダクトとサービスの差別化、2つ目は顧客の現地化、3つ目は自社スタッフの現地化です」

ベトナムを攻める3戦略
顧客もスタッフも現地化

 戦略の1にある「プロダクト」とは、住宅ローンや自動車ローンなどの商品を指す。戦略は細かく3つに分かれ、顧客が希望するサービスのセグメント、融資や他行への貸出しによるビジネス、ノンインカムビジネスがある。

 顧客の現地化とは、ベトナムの法人・個人への融資、インターネットバンキングなど個人向けサービスの拡充、最後は自社ブランドの強化だ。これらはまさにローカルビジネスにシフトしているからで、自社の知名度アップもそれに起因している。

 現在では広告媒体としてSNS、雑誌、新聞などを使っているが、来年からは著名人を使ったテレビCMを放送し、キャッシュカードの利用でホテルやレストランが割引になるサービスを始める予定だ。

「ベトナムでは他国に比べてキャッシュカードを持つ人が少なく、保険もあまり購入されていません。個人向けサービスもぜひ広げていきたいです」

 今年3月には自社アプリケーション「Woori WON Banking Vietnam」の提供を始めた。このアプリを使えば口座の開設や、登録口座からの振込みなどが簡単にでき、個人顧客の獲得を狙っている。

 最後のスタッフの現地化とは、能力の全体的な底上げ、顧客対応マネジャーへのベトナム人登用の増加、より一層のベトナムへの注力だ。同社は全国で韓国人が約50人、ベトナム人は約450人が働いている。

「ベトナム進出が早かったこと、世界中のネットワークを使えることから、韓国企業だけでなくベトナム企業にも、幅広くコンタクトできることが強みです」

我々は既にベトナム企業
事業拡大の借入は良い判断

 Mr. Jungによれば、同社は本国のウリィ銀行からスピンアウトしており、既に韓国系企業ではなくベトナム企業になったという。これは新韓ベトナム銀行も同じだそうだ。

「弊社と新韓銀行は韓国メガバンクのメジャーであり、ベトナムでは新韓銀行が先行してサービスを進めています。ただ、弊社ならではの特徴があります」

 新韓銀行は韓国の商品やルールに従う傾向があるが、ウリィ銀行は独立志向が強いために自由度が高く、顧客の希望に合わせた商品を作るなどができるという。だからこそ、今後の目標であるローカルビジネスにもフォーカスできる。

 ベトナムの顧客について尋ねると、韓国とは少し事情が異なると語る。まず、ベトナム企業は希望する融資額が多く、たくさん借りたがるということだ。韓国での顧客は負債比率(負債÷自己資本×100)が200%くらいだが、ベトナム企業はそれを超えるという。

 次に異なるのが借入の目的。ベトナム企業は自社の成長・発展のためがほとんどで、韓国では従業員の給与の支払いなど投資目的でない場合も多いそうだ。負債比率が高いこともあってベトナム企業は返済のリスクが高く、融資の判断は厳しくなる。しかし、Mr. Jungは好意的にとらえている。


ウリィ銀行のマグカップ

「ベトナムは経済成長を続けており、事業拡大を目的に多くの融資を求めるのは、良い判断だと思います。我々は既にベトナム企業ですから、今後も多くのベトナムの法人と個人をサポートしていきます」