12月2日午前、ベトナム国会は第10回会議を継続開催し、国民の健康保護・医療向上に向けた特別な制度・政策に関する国会決議案、ならびに2026~2035年の国民健康・人口・発展に関する国家目標プログラムについて議論が行われた。
がん治療薬の保険適用の更新を要請
ラムドン省選出のチン・ティ・トゥ・アン国会議員は、「治療費の負担が依然として患者にとって最大の障壁である」と指摘した。標的治療薬や免疫治療薬など、新世代の抗がん剤が高い効果を示している一方、その高額な費用によって最適な治療にアクセスできない患者が多いという。
統計によれば、薬剤費は診療費全体の約33%を占めており(数年前の40~50%からは低下)、依然として最も高い割合となっている。このため同議員は、特に新世代の抗がん剤や免疫調整薬について、保険適用薬のリストを迅速に更新し、国民の自己負担軽減と現在の健康保険加入者約9,550万人の権益確保を求めた。
入院費無料化の制度設計を巡る議論
ハノイ市選出のグエン・アン・チー国会議員(元中央血液・輸血研究所長)は、入院費無料化制度の内容を明確にする必要性を強調した。無料化は高品質な医療、標準化された診断・治療プロトコル、そして良質な薬剤の提供と一体でなければならないと述べた。
また、最寄りの医療施設で便利に受診できる体制を整え、保険払い制限や支払い能力に左右されず、実質的な医療レベルの区分を行う必要があると指摘。基本医療サービスは住民の身近な場所で十分な薬剤供給とともに公平に提供されるべきだとした。
「入院費無料化は段階的な導入が必要だが、2030年までに国民全体へ適用すべきだ。特に治療困難ながん、慢性疾患、人工透析を受ける患者、そして高額な薬剤を使用しているがん患者には早期適用を行うべきだ」と同議員は訴えた。
これに対し、ダオ・ホン・ラン保健大臣は、政府決議72に基づき保健省が制度案を策定しており、すでに関係機関・地方と意見交換を経て政府に実施ガイドライン作成を提案していると説明した。
医療従事者への手当引き上げを提案
政府案では、医師、予防医学医師、薬剤師について、採用時の給与等級を現在の1級から2級(係数2.67)へ引き上げる案が示されている。
しかし、ホーチミン市選出のファム・カイン・フォン・ラン国会議員は「等級2級では不十分」であり、新規採用の医師について等級3級または等級4級を検討すべきだと指摘した。さらに手当制度の拡大、特に都市部の生活費の高さを踏まえ、現行の70%・100%区分ではなく手当を2~3倍へ引き上げるべきと提案した。
医療人材不足への懸念と特例給与制度の必要性
ビンロン省選出のタック・フック・ビン議員も、等級2級への引き上げは初任給の改善に過ぎず、医療従事者の低収入問題の根本解決にはならないと指摘した。公的医療機関と民間医療機関の収入格差による退職者の増加、救急・集中治療・感染症・検査など危険性の高い診療科でも100%の職務手当が適用されていない現状を挙げ、医師不足が今後10〜15年で深刻化すると警告した。
そのため、医療分野特有の給与体系の構築、危険性の高い専門科への100%職務手当の拡大、基層医療・予防医療の手当を全国一律100%へ引き上げ、困難地域ではさらに30〜50%上乗せすべきと提案した。また医療従事者の安全確保として、強制的な専門責任保険や法的支援、心理的支援の必要性にも言及した。
医師確保へ「安定した待遇とキャリアパス」を要請
ホーチミン市選出のグエン・タム・フン議員は、専門科だけでなく職務内容ごとに責任手当を設定すべきと強調した。基層医療や集中治療・中毒治療部門では職務負担やリスクが非常に高く、適切な手当がなければ人材の定着が難しいと述べた。
ハノイ市選出のチャン・ティ・ニー・ハー議員は、現行案は医師確保に対して「十分な突破力がない」と指摘する。基層医療における医師不足は深刻であり、若手医師の短期派遣など現在の施策は一時的な効果にとどまり、医師側も長期的に定着しにくいと分析した。
同議員は、民間医療から移ってくる医師の勤続年数を公的医療と同等に扱い、給与等級も同等とすること、また、資格を有する医師については試験なしの特別枠で公務員として採用する制度を提案した。さらに、基層医療や予防医療分野で働く医師には100%職務手当、その他の医療専門職にも最低70%の手当適用を求めた。
保健省:特別手当制度を政府へ提出中
最後にダオ・ホン・ラン保健大臣は、これまで医療従事者の給与・手当制度が厳しい状況にあったと述べ、政府決議72に基づき一部の手当を段階的に引き上げる方針が示されていると説明した。現在、保健省は医療従事者向けの当直手当やその他特別手当制度の政令案を政府に提出している段階である。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN



























