ベトナムのコーヒー産業の価値を高める取り組みが進む中、国内外の専門家が集まり、持続可能な開発や文化価値を議論する国際フォーラムが開催された。
「ダックラック省のコーヒー栽培・加工の知識」が国の無形文化遺産に
2025年3月、ダックラック省の文化・スポーツ・観光局は「ダックラック省のコーヒー栽培および加工に関する知識」を国家レベルの無形文化遺産として認定した。
今回開催された国際科学シンポジウム「世界コーヒー産業バリューチェーン―グローバル・ローカル・サステナブルの発展」は、この遺産の保護と価値向上に向けた重要な一歩となり、今後ユネスコ「人類無形文化遺産の保護における模範的実践」への登録申請プロセスを推進する場となった。
ユネスコ登録の有望候補に
ユネスコはこれまで、アラブのコーヒー文化(2015年)、エチオピアのコーヒー儀礼(2010年)、トルコのコーヒー文化(2013年)など、コーヒーに関連する多くの文化的実践を登録してきた。
「ダックラック省のコーヒー栽培・加工の知識」は、地域コミュニティによる自然な継承、暮らしへの貢献、文化交流の促進、国際的発信力などの要素を備えており、登録に向けて大きな可能性を持つと評価されている。
登録されれば、ベトナムのコーヒーブランド価値の向上、バンメトート市およびダックラック省の世界文化遺産地図における存在感向上につながる。
ユネスコ担当者「文化価値を世界に発信する好機」
フォーラムでUNESCOベトナム事務所代表のジョナサン・ベイカー氏は次のように述べた。
「『ダックラック省のコーヒー栽培・加工の知識』を無形文化遺産として申請する取り組みは、時宜を得た大きな意義を持つイニシアチブであり、ダックラック省だけでなくベトナム全体が文化価値を世界に発信する絶好の機会です」
行政・地域・企業・農家が一体となった長年の努力
今回の取り組みは、国家レベルの政策、地方政府の情熱、専門家コミュニティ、企業、そしてバンメトートのコーヒー農家の長年の協働の成果である。
特に、チュングエン・レジェンド(Trung Nguyên Legend)は、「深い加工への投資とベトナムコーヒー文化の世界発信に注力する数少ない企業」として、多くの専門家から評価が寄せられた。
チュングエン・レジェンドの貢献:文化発信から世界市場展開まで
同社は2005年からダックラック省と協力し、地理的表示「バンメトート・コーヒー」と文化発信施策を推進してきた。2011年にはバンメトートのコーヒーフェスティバルが国家級の祭典として認定され、国内外から数千人のコーヒーファンが集うイベントへと成長した。
2012年には、同社創業者のダン・レ・グエン・ヴー氏が世界経済フォーラム(WEF)において「世界コーヒー産業のための7つのイニシアチブ」を提唱し、ダックラック省をグローバルなコーヒー経済・文化の中心地とする構想を示した。
目標は「ベトナムのコーヒー産業が年間20億USDを生み出す体制の構築」である。
“コーヒー外交”として評価されるブランド力
チュングエン・レジェンドのロブスタコーヒーと文化的ブランド価値は、世界市場で大きく認知されつつある。
同社のコーヒーは「外交用コーヒー」として国家元首や国際政治家、大使への贈答品に用いられ、同社のコーヒーショップは中国、米国をはじめ、今後オーストラリア、カナダ、日本、韓国、ロシア、欧州などへ展開予定とされる。
とりわけ、創業者が提唱する哲学「コーヒー道(The Tao of Coffee)」は、国際メディア(Discovery、CNN、Bloomberg)からも高い関心を集め、同社の象徴的理念として紹介されている。
コーヒーを通じた文化・産業の国際的地位向上へ
グローバル化が進むなか、ベトナムのコーヒーは地域文化や知識体系と結びつきながら、新たな文化価値を形成しつつある。
こうした動きは、バンメトートおよびダックラック省の地位を国際文化遺産とクリエイティブ産業の地図上で高めるとともに、コーヒーを戦略的農産物にとどまらず、国家ブランドと持続可能性の象徴へと押し上げることが期待される。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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