今年で3回目となる製パンに特化した国際展示会「VIBS(Vietnam International Bakery Show) 2025が2025年12月10~13日にホーチミン市7区のSECCで開催された。熱気があふれる、美味しい展示会だ。
若者が集まる製パンフェア
昨年に引き続いて3回目となるVIBS 2025には、ベトナム、日本、韓国、フランス、シンガポール、マレーシアなど12の国と地域から約120社、約200ブースが出展した。
会場中央に巨大ブースを構え、圧倒的な集客力を見せていたのがベトナムの有名チェーン店であるABCベーカリー。パン、ピザ、洋菓子、アイスクリームを惜しみなく提供し、ブース内は生地をこねて焼き上げるまでを実演。常に長蛇の列ができていた。
同社の創業者であり社長のKao氏がVIBS開催の発起人だ。親交のある台北ベーカリー協会(TBA)が主催として全面協力し、ベトナムベーカリー協会(VBA)やABCベーカリーらが脇から支えた。日本勢もKao氏の人脈から参加した企業が多い。
皆の思いは一緒で、「ベトナムのベーカリー業界の発展」。特に若い世代を中心に米文化から小麦文化に変わりつつあり、来場者も若者が中心で、若い女性が多かった。

パンの香りに誘われて
会場に入ると派手な看板、パン作りの実演、焼き立てパンの甘い香りに出会う。会場に並ぶのは完成品であるパン、ペストリー、ケーキ、菓子のほか、ベーカリー機器、包装機、調理機器、原材料、梱包資材、飲料なども。
パンなどのサンプルを試食できるのもこの展示会の魅力。一角にはコーヒー関連のブースが密集し、コーヒーの香りと試飲を楽しめる。カラフルな看板や幅広いブースでPRする企業がある一方で、最小コマに商品を並べただけのブースもあるが、どこも人が集まっていた。
外資系企業はTBA主催のためか台湾企業が多く、緑に統一した看板と「TAIWAN SELECT」のロゴが存在感を出していた。


三幸機械がまとめる日本勢
日本企業も10社程度が並んでブースを出しており、そのまとめ役となったのが業務用オーブンメーカーの三幸機械だ。初回から参加している。
「ABCベーカリーさんにはうちのオーブンを約20年納めていて、日本企業にも参加してほしいと誘われました」
今回は日本での競合が2社出展しているが、まずは「日本連合」で団結して一緒に頑張ろうという趣旨。世界的にも評価の高い日本の製パン機械を広めるのが目的だ。
展示した3段タイプの大型オーブンは、ABCベーカリーのブースでも複数置かれて活躍していた。
製パン関連の機械メーカー約120社が作る日本製パン製菓機械工業会(JBCM)も別ブースで出展しており、日本で開催する「MOBACショー」をアピールしていた。2割ほどが海外からの来場者で、ベトナム人にも来てほしいとのこと。
「良いパンと洋菓子作るにはやっぱり良い材料や機械が必要なんです。その機会をぜひ提供したいですね」

包餡文化に根付く日本機械
同じく長年ABCベーカリーに包餡機を納入しているのが栃木県のレオン自動機。国内と海外の販売比率は5.5対4.5で、海外比率が伸びているという。米国と欧州が好調で、アジア市場に注力している。
「ベトナムは包餡機が中心になりますね。中華まんや月餅など包む商品が多くあるからでしょう」
VIBS 2025に出展していた現地代理店のKyouwa Vietnamと協業しながら、ベトナムで販路を広げたいという。
ブースにマシンは置いてあるが実演や試食は行っていない。それでもかなりの来場者が訪れて、新しい顔に出会っているという。

可愛いメレンゲドールが登場!
初出展のアートキャンディーはケーキに載せる食べられる人形たち、「メレンゲドール」を初めて作った会社。日本に2工場があり、2000年設立のTANGO CANDYがベトナム工場だ。
1つ1つが小さくて壊れやすいため、ある程度の量を、商社経由でケーキ店等に卸すことが多い。製造から2年ほどと賞味期限が長く、ベトナム製は日本に輸出している。今回出展した理由は?
「ベトナムの方にも、箱を開けた瞬間に『わー』っと笑顔になっていただきたくて」
想定しているのは日本からの輸出なので、商社などの代理店や規模のある地場チェーン店を探しており、ABCベーカリーとも商談を進めているそうだ。
専属デザイナーがデザインし、職人が顔に目を描いて、鼻を付けて、手足を付けて、台座に乗せてと手作業で作る。乾燥しないと次の工程に進めないため、完成まで4~5日かかるそうだ。
ブースには細部まで表現した色鮮やかなメレンゲドールがいくつも並べられ、撮影する来場者が絶えなかった。

中国実績の「あんこ」を展開
こちらも初出展のTTCフーズ。食品機械商社と共に食品メーカーであり、ベトナムでは後者事業のあんこをアピール。ベーカリー向けのフィリングとして小豆のあんこをメインで紹介しながら、他の調味料やスープの素なども展示していた。
「中国と日本に工場があって、中国市場が圧倒的に大きいのですが、ベトナムの現地企業を開拓したくて参加しました」
1987年から中国に進出し、市場として中国1位、日本が2位、韓国が3位で、マレーシア、シンガポール、インドネシアなど。ベトナムでは日系ベーカリーにあんこ、ラーメンのチェーン店にスープの素などを納入している。
「お客さんの反応がすごくいいですね。展示会の規模は小さくても、、本当にベーカリーに特化していますから」
月餅で使われるような中国式の油のあんこではなく、日本式のあんこにこだわる。中国でも日本のあんこを拡販しながら市場を拓いてきた実績があり、中国での生産量は年間数トンに及ぶ。

試食で探るベトナムの味覚
2回目となるマスダックは、世界で累計約3000台を販売した小型のどら焼き機で、ミニパンケーキを焼く。前回はジャムやクリームを合わせたが、今回はもう少し高級感を出したいと、チョコレートにカシューナッツ、抹茶クリームに甘い豆の2種類を提供。ベトナムで入手可能な原材料を使った。
「配り始めると長い行列ができます。その後で、『買うならいくら?』のステッカーを貼ってもらってます」
ボードに2万、3万、4万VNDの枠があり、ステッカーが集中したのは3万VND。高評価に手ごたえを感じるものの、だからすぐに製品が売れるとは考えていない。味を変えながらトライを続けて見えてきたのは、ベトナム人の好みの鉄板はチョコレートで、チーズ味も大好き。
「どら焼きの裾野を広げて、将来は大きな食品生産ラインを販売したいです。ただ、甘くはないので、何回もしつこくやっていかないと」

製菓機器の価値を伝える
今回が2回目の型久堂は、シュークリームにクリーム、最中にあんこを入れるような充填機が主力の製菓機器メーカーだ。菓子以外では化粧品など液体の充填を得意としており、出展の大きな目的は代理店を探すことと、エンドユーザーにも良く知ってもらうことだ。
「伸び盛りの市場なので、若い方にちょっとでも興味を持っていただければと思います」
気にしているのは価格だ。他の業界でもそうだが、中国製機械は日本製の10分の1という価格もある。代理店とは少しずつ話が進んでいるが、品質と価格を理解してくれる日系企業も潜在顧客と考えている。ただ、何度か面談を繰り返し、知名度も上げる必要があるという。
「これまではほとんど日本国内のお客様でしたので、海外はまだこれから。韓国、中国、台湾、シンガポールなどの展示会にも出ています」

手洗い文化からの転換期
業務用洗浄機メーカーのクレオもABCベーカリーに納入している日本企業。パレットと呼ばれる箱の洗浄は多くの製パン会社で自動化されており、同社は日本でトップクラスのシェアを誇るという。
「正直申し上げて、今のベトナムでは手洗いがまだ多く、自動洗浄機の需要は少ないです」
ただ、これから伸びる市場であり、効率を求めたり、手洗いを軽減させたいと考える企業は間違いなく増えていると語る。
1番の狙い目はベトナムで生産して海外に輸出しているようなグローバル企業。ABCベーカリーもそうだが、ダナンで寿司のネタを加工して日本に輸出する企業などで、衛生レベルを世界標準に合わせているそうだ。

菓子ギフトが魅せた進化
前回はパン職人やパティシエによる国際ベーカリーコンテストが開催され、今回は「ベストギフトアワード」が発表された。事前の応募作品の中から「菓子ギフト」の受賞作が選ばれて、会場の一角に陳列された。
クリスタルガラスの中に置かれた菓子にスポットを当てて高級感を演出。会社名、商品説明、QRコードまで付けて商品をアピールしていた。何人もの来場者が顔を寄せてじっくりと見たり、写真を撮っており、展示会の価値を高めていた。
どんどん洗練されていくVIBSの来年が楽しみだ。






















取材・執筆:高橋正志(ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。