「国家産業の土台」となる材料・機械産業
ベトナム国会科学技術・環境委員会は6月15日、新たな発展段階におけるベトナムの材料産業および機械・製造業に関するシンポジウムを開催した。
開会あいさつでグエン・ホン・ジエン国会副議長は、材料産業と機械・製造業は「国家産業の基盤」であり、工業化・近代化、技術自立、生産自立を支える重要な土台であると強調した。
また、これらの産業は戦略的技術製品の開発や、自立した経済基盤の構築に不可欠な前提条件であると位置付けた。
一方で、戦略物資や先端設備、コア技術に関する自立度は依然として低いと指摘した。
半導体やAI、高速鉄道、原発関連産業を優先育成へ
ジエン副議長は今後重点的に育成すべき分野として、
- 半導体
- 人工知能(AI)
- ロボット
- 新エネルギー
- 防衛産業
- 高速鉄道
- 原子力発電
などを挙げた。
また、トー・ラム書記長兼国家主席が5月に示した方針として、材料産業については重点分野を絞り込み、
・ 基礎材料
・ 戦略材料
・ 未来材料
の3分野を中心に発展させる必要があると説明した。
高速鉄道プロジェクトで国内企業はどこまで参画できるのか
国会科学技術・環境委員会のグエン・タイン・ハイ委員長は、約40年にわたるドイモイ(刷新)政策を経て、ベトナムの材料産業と機械産業は大きく発展したものの、依然として課題が多いと指摘した。
現在の生産は汎用品が中心で付加価値が低く、半導体、AI、ロボット、原子力、航空宇宙、防衛分野に必要な戦略材料や設備の多くを自国で製造できていないという。
また、レアアースやチタンなど戦略鉱物の高度加工率も低く、サプライチェーンは未完成の状態にある。
こうした中、ハイ委員長は南北高速鉄道プロジェクトに注目している。
同氏は、「ベトナムはこれらのプロジェクトのバリューチェーンにどの程度参加できるのか。どの工程を国産化できるのか。そして技術を段階的に習得するために何を準備すべきかが問われている」と述べた。
南北高速鉄道はベトナム史上最大規模の交通インフラ事業であるだけでなく、国内産業の能力向上につながる大きな機会と位置付けられている。
原発はさらに高い技術水準を要求
原子力発電については、高速鉄道以上に厳格な要求が課されると指摘された。
具体的には、
- 特殊鋼材
- 耐熱合金
- 放射線遮蔽材料
など、高度な材料技術が必要となる。
ハイ委員長は、海外では原子力開発が冶金産業や精密機械産業の発展を大きく後押ししてきたと説明した。
半導体分野では材料技術の強化が課題
半導体産業についても、ベトナムにはグローバルサプライチェーンへ参入する機会があるとした。
しかし、半導体産業は単にチップ設計や外国企業の投資誘致だけでは成立しない。
そのためには、
- 次世代半導体材料
- チップ封止材料
- 半導体製造装置
- 高度材料技術
などの分野で自前の能力を高める必要があるとしている。
国家戦略や人材不足が課題
一方で、ベトナムの産業発展には依然として複数のボトルネックが存在する。
主な課題として、
- 材料産業に関する包括的な国家戦略の不足
- 制度・政策の分散と不整合
- 産業を牽引する中核企業の不足
- 高度人材の不足
- 人材確保のための優遇制度不足
- 研究開発と企業活動の連携不足
- 研究成果の事業化の遅れ
などが挙げられた。
ベトナム政府は今後、高速鉄道や原子力発電、半導体といった大型プロジェクトを単なるインフラ整備や投資誘致にとどめず、国内産業の技術力向上と国産化率向上につなげられるかが問われることになる。




















