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親の介護を他人に任せるのは親不孝か ベトナムで議論広がる「新しい親孝行」の形

ベトナムの有名歌手ドアン・チューン氏の家族写真
(C)THANH NIEN

親の介護を他人に任せるのは親不孝なのか

毎年6月28日の「ベトナム家族の日」を迎えるなか、親孝行のあり方を巡る議論がベトナム国内で広がっている。

特に注目されているのは、「親の介護を他人に任せることは親不孝に当たるのか」というテーマである。

伝統的な価値観では、子どもが自ら親の介護を担うことが最も望ましいと考えられてきた。しかし、都市化や海外移住、共働き世帯の増加など社会環境が大きく変化する中で、「介護を専門家に委ねることも立派な親孝行ではないか」という意見も増えている。

歌手ドアン・チューン氏「親以上に大切な存在はない」

歌手のドアン・チューン氏は、自身の経験を振り返りながら、親との時間を十分に持てなかったことへの後悔を語った。

若い頃は仕事に追われ、家族の生活を支えるため昼は外資系企業に勤め、夜は歌手活動を続けていたという。

父親が2008年に亡くなって以降は旧正月期間の仕事を断るようになり、家族との時間を優先する生活へと転換した。

また、晩年の母親については約5年間にわたり芸能活動を事実上引退し、自ら介護に専念した。

母親は90歳を超え、高血圧や糖尿病など複数の持病を抱えていたが、ドアン・チューン氏は「家事を手伝う人は雇っていたが、母の食事や投薬、身の回りの世話は家族自身で行った」と語る。

「誰よりも子どもが親をよく理解している」との考えから、自ら介護する道を選択したという。

海外在住者にとって介護は現実的な課題

一方で、すべての子どもが親のそばで介護できるわけではない。

日本の静岡県で暮らすベトナム人女性グエン・ニャー・コア氏は、「親の介護は子どもの責任だが、自分ができる範囲で最善を尽くすことが重要だ」と話す。

母親に脳卒中の兆候が見られた際には、帰国して介護することはできなかったものの、体重を減らすためにヨガ講師を手配し、食事管理を支援するなど遠隔からサポートを行った。

海外で働くベトナム人は年々増加しており、物理的な距離の問題から介護サービスを活用せざるを得ないケースも少なくない。

「放置」が親不孝であり、介護サービス利用は親不孝ではない

ホーチミン市の語学教師ボー・アイン・チェット氏は、「介護者を雇うこと自体が親不孝なのではなく、その後の関わり方が重要だ」と指摘する。

親の世話を他人に任せたまま連絡も取らず、健康状態にも無関心であるならば問題だが、介護サービスを利用しながら定期的に面会し、精神的な支えとなっているのであれば、それは十分に親孝行であるという考えだ。

また、専門知識を持つ介護スタッフの存在は、高齢者の生活の質を向上させる可能性があるとも述べている。

さらに、高品質な介護施設や老人ホームについても、「同世代の人々と交流しながら、適切な医療や栄養管理を受けられる環境であり、前向きな選択肢の一つ」と評価した。

介護の専門家「大切なのは時間ではなく心」

16年間にわたり高齢者介護に携わってきた介護士グエン・ホアン・ラム氏も、「親不孝とは親が孤独を感じているにもかかわらず、子どもが無関心でいることだ」と話す。

介護には医療知識や経験、忍耐力が必要であり、家族が長期間仕事を休んで介護に専念しても、精神的な負担が蓄積し、かえって親子関係が悪化する場合もあるという。

都市部では生活費も高く、介護サービスの利用には相応の費用がかかる。

それでも、働き続けて経済的基盤を維持しながら、専門家の力を借りて親により良い生活環境を提供することは、現代社会における合理的な親孝行の形として受け入れられつつある。

ベトナム社会で変わる「親孝行」の価値観

ベトナムでは長らく「親を自宅で看取ること」が美徳とされてきた。

しかし、核家族化や海外就労の拡大、高齢化の進展に伴い、親孝行の定義そのものが変化し始めている。

専門家からは、「重要なのは誰が介護をするかではなく、親が安心して暮らせる環境を整え、継続的に愛情と関心を注ぎ続けることだ」との声が上がっている。

介護サービスや老人ホームの利用は、もはや親不孝の象徴ではなく、時代に適応した新たな家族の形として受け止められ始めているのである。

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