ホーチミン市では、交通警察官の姿や監視カメラが見当たらない場所でも、交通違反が電子データによって記録され、後日通知される「遠隔摘発」が本格的に定着している。2026年に入ってからは約19万件の違反が確認されており、道路交通の安全確保に向けたデジタル監視体制が強化されている。
「誰にも見られていない」が通用しない時代へ
ホーチミン市公安局交通警察部(PC08)の遠隔摘発窓口には、平日を中心に違反通知を受けた市民が連日訪れている。多くは通知書や車両登録証を持参し、違反手続きを進めている。
市内在住の男性は、イベント会場の案内に従って路上駐車したところ、後日になって駐車禁止場所への駐車違反として通知を受けたという。当時は問題ないと考えていたものの、画像によって違反が記録されていたことを知り驚いたと話す。
一方、長距離バスの運転手は、乗客を自宅前で降ろすため、駐停車禁止区域に短時間停車した。周囲に警察官やカメラが見当たらなかったことから「気付かれないだろう」と考えていたが、通行人が撮影した映像をもとに違反が確認され、後日通知を受けたという。
また、約30年の運転歴を持つコンテナ運転手は、フーミー橋の下り坂で速度が制限をわずかに超過し、後からスマートフォンで違反情報を確認した。長年運転していても、一瞬の油断が違反につながると振り返っている。
約19万件の違反を記録 速度超過が最多
PC08によると、2026年初めから現在までに、監視カメラや各種技術機器によって19万862件の道路交通違反が確認された。このうち2万8,200件以上が法令に基づき処分されている。
違反内容では、
- 速度超過
- 信号無視
- 車線・道路標示違反
- 駐停車違反
が特に多く、交通量の多い幹線道路で頻繁に確認されている。
違反通知までには厳格な確認手続き
PC08は、画像があるだけで直ちに違反通知を発行するわけではないとしている。
摘発までの流れは、
- カメラや取締機器からデータを収集
- 担当者が映像を確認
- ナンバープレート、日時、場所、違反内容を特定
- 車両登録データや住民データベースと照合
- 所有者を確認後、正式な通知を発送
という複数段階の確認を経る。
誤認防止のため、違反者、車両、違反内容を正確に特定することが義務付けられており、慎重な審査が行われている。
処分には「4つの条件」が必要
PC08によれば、すべての映像が証拠として採用されるわけではない。
違反として認定されるためには、
- ナンバープレートが鮮明に確認できること
- 正確な日時が確認できること
- 正しい場所が特定できること
- 違反行為が明確に確認できること
という4つの条件を満たす必要がある。
雨天や夜間、画像が不鮮明な場合などは証拠能力が認められず、処分対象にはならない。
映像確認で大半が違反を認める
窓口では、「信号無視はしていない」「車線変更は問題なかった」と主張するケースも少なくない。
しかし、実際に違反時の映像や動画を確認すると、多くの人が自らの違反を認めているという。
PC08は、今後も電子機器による監視を強化するとともに、違反情報は電子プラットフォーム上にも順次反映されるため、市民はスマートフォンなどから自ら違反状況を確認できるとしている。
公安省交通警察局のドー・タイン・ビン局長は、交通安全教育に加え、科学技術の活用は交通秩序の向上に不可欠であり、電子データを活用した客観的かつ透明性の高い取締りが、法令順守意識の向上につながるとの考えを示している。



















