ベトナムで運用が進む電子インボイス制度を巡り、中央税務当局と地方税務当局で購入者情報の記載方法に異なる指導が行われていることが明らかになった。専門家からは、事業者の混乱を防ぐため、財政省または税務総局による統一した運用指針を早急に示すべきとの声が上がっている。
「身分証番号がなくても発行可能」が中央税務当局の見解
税制改正に関するセミナーでは、多くの個人事業主から「購入者が氏名・住所・電話番号のみを伝え、個人識別番号(身分証番号)を提示しない場合、電子インボイスには何を記載すればよいのか」との質問が寄せられた。
これに対し、財政省税務総局の担当者は、
「購入者が提供した情報をそのまま記載すればよい。身分証番号を提供しない場合は、無理に記載する必要はない」
との見解を示した。
つまり、氏名・住所・電話番号のみでも電子インボイスの発行は可能との立場である。
地方税務当局は異なる指導
一方、ハノイ市の地方税務当局は別の企業からの問い合わせに対し、2026年政令第254号を根拠として異なる見解を示した。
電子レジ連携型の電子インボイスを発行する場合、購入者が必要事項を十分に提供しない場合は、インボイス上に「一般消費者への販売」と明記すべきだと回答した。
さらに、このようなインボイスは企業や個人事業主が経費計上や税務申告に利用できないケースがあると説明しており、中央税務当局の説明とは運用面で差異が生じている。
専門家「現場が判断に迷う」
税務・会計コンサルティング会社Keytasのレ・バン・トゥアン代表は、この食い違いは政令254号の規定が曖昧であることに起因すると指摘する。
同氏は、本来、電子インボイスの記載事項は付加価値税(VAT)の控除や損金算入に必要な情報を満たしていれば十分であり、購入者情報については、販売者が取得した範囲で柔軟に記載できるようにすべきだと主張した。
こうした運用であれば、売掛金管理や社内管理の面でも事業者の利便性が高まるとしている。
全国共通の運用ルール策定を提言
また、税務代理法人BCTCのグエン・バン・トゥック代表も、購入者が情報提供を拒否した場合は、
「購入者は情報を提供せず、インボイスも受領しなかった」
と記載できるよう制度を整備すべきだと提案した。
現行のように「一般消費者への販売」と一律に記載すると、後日、その購入者が企業や事業者だったことが判明した場合、販売者が責任を問われる可能性があるとの懸念も示している。
制度設計より「運用の統一」が課題
ベトナムでは電子インボイス制度のデジタル化が急速に進む一方で、制度の解釈や運用が地域によって異なるケースが散見される。
専門家は、法令そのものを改正する前に、財政省または税務総局が全国の税務当局に対し統一的な運用指針を示すことで、事業者の混乱を早期に解消すべきだと指摘している。



















