世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「世界イノベーション指数(GII)2026」で、ベトナムは139の国と地域の中で43位となった。前年から1つ順位を上げ、ASEANではシンガポール、マレーシアに次ぐ3位を維持した。
特にハイテク輸出と創造的製品の輸出で世界1位となるなど、国際的な製造・輸出分野での競争力がベトナムのイノベーションを支える形となっている。
2016年から16ランク上昇
ベトナムのGII順位は、2016年の59位から2026年には43位まで上昇した。10年間で16ランク上昇したことになる。
2026年の特徴は、イノベーションの「投入」だけでなく、その成果を示す「アウトプット」の伸びである。ベトナムのイノベーション・アウトプットは世界35位となり、インプットの54位を大きく上回った。
WIPOは、ベトナムについて、研究開発などの投入資源に比べてイノベーションの成果が高い国の一つと評価している。2013年以降、ベトナムは中国、インドなどとともに、中所得国の中で長期的に順位を伸ばしてきた国として挙げられている。
ハイテク輸出は世界1位
ベトナムの強みとして特に目立つのが、国際貿易におけるハイテク分野である。
GII 2026では、ベトナムは「輸出全体に占めるハイテク輸出の割合」で世界1位となった。また、「輸出全体に占める創造的製品の割合」でも世界1位、ハイテク輸入では世界3位となっている。
このほか、GDP規模を考慮したモバイルアプリ開発は世界5位、労働生産性の伸びは世界6位となった。
つまり、ベトナムのイノベーションは、研究室や大学だけで生まれる技術革新というより、海外企業を含む製造業やグローバルなサプライチェーンを通じて、技術を製品や輸出につなげる力に強みがあるといえる。
WIPOも、ベトナムが国際的な製造・サービスネットワークへの統合を通じて成長しており、特にハイテク製造とハイテク輸出では高所得国並みの水準に達していると分析している。
ASEANでは3位、タイを上回る
ASEAN地域では、ベトナムは3位となった。
2026年の順位は、マレーシアが34位、ベトナムが43位、タイが44位、フィリピンが52位、インドネシアが55位となっている。
ベトナムは2025年に続いてタイを上回っており、中所得国の中でも上位グループに位置している。
また、ベトナムは2013年以降の順位上昇が目立つ中所得国7カ国の一つにも挙げられている。
「投入」以上の成果を生み出すベトナム
GII 2026で興味深いのは、ベトナムが単純に研究開発費や人材などの「投入」を増やした結果として順位を上げているわけではない点である。
WIPOによると、ベトナムのイノベーション・インプットは世界54位であるのに対し、アウトプットは35位である。投入に対して、実際に生み出される成果が相対的に大きい。
WIPOは、ベトナムについて、グローバル・バリューチェーン、高度技術貿易、デジタルサービス、デザイン、ブランド、知的財産、スタートアップなどを通じて、国内の能力を市場につなげていることが成長の一因と分析している。
これは、近年ベトナムに製造拠点を置く外国企業が増えてきたこととも無関係ではない。海外から導入された技術や生産ノウハウを、ベトナム国内の製造・輸出活動に結び付けることで、イノベーションの「成果」を伸ばしている構図である。
一方、研究開発には課題も
もっとも、今回の43位という数字だけを見て、ベトナムのイノベーション能力全体が先進国並みに高まったと判断するのは早い。
WIPOは、ベトナムについてハイテク製造や輸出では高所得国の水準に達している一方、科学論文やPCT特許出願など、国内での知識創出に関する指標では中所得国の中央値を下回っていると指摘している。
つまり現在のベトナムは、「自ら最先端技術を生み出す国」へ完全に移行したというより、世界の製造・技術ネットワークを取り込み、それを輸出という成果につなげる力を伸ばしている段階と見ることができる。
2030年に世界40位以内を目指す
ベトナム政府は、科学技術、イノベーション、高度技術を今後の成長モデルの中心に据えている。
今回のGIIでの順位上昇をさらに進め、2030年には世界40位以内、2045年には30位以内を目指すとしている。
今後の課題は、現在強みを持つハイテク製造や輸出だけでなく、研究開発、特許、科学技術人材、大学・企業間の連携など、国内の知識創出能力をどこまで高められるかにある。
ハイテク製品を「輸出する国」から、その技術や製品を「国内でも生み出す国」へ移行できるかどうかが、ベトナムの次のイノベーション戦略の焦点となりそうである。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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