韓国サムスン電子グループが、ベトナムの半導体関連事業に約60億USDを投じる計画だ。LGイノテックやインテル、BYD、ドイツのインフィニオン・テクノロジーズも、ベトナムで半導体・電子産業の生産や研究開発体制を拡充している。世界的なサプライチェーン再編を背景に、ベトナムは高付加価値製造業の投資先として存在感を高めつつある。一方、こうした外資投資を国内企業の技術力向上やサプライチェーンへの参入につなげられるかが、今後の重要な課題となる。
サムスン、半導体関連事業に約60億USD
韓国紙「コリア・ヘラルド」は10月11日、サムスングループ傘下の企業が、半導体の生産・検査能力を拡大するため、総額約91.5億USDに相当する投資計画を進めると報じた。報道によると、総投資額は12兆2,600億ウォン(約91億5,000万USD)で、このうち約8兆ウォン(約60億USD)がベトナム向けとなる。残りは韓国国内の先端製造能力の強化に充てられる見通しだ。
投資の中心となるのは、サムスン電子とサムスン電機(Samsung Electro-Mechanics)の2社である。サムスン電子はメモリー半導体の検査能力、サムスン電機は高性能プロセッサー向けの半導体パッケージ基板の生産能力の拡充をそれぞれ担う。
サムスン電子は、ベトナムでの半導体事業拡大に向けた人材育成も進めている。韓国紙「ソウル経済新聞」によると、同社は2026年7月から、ベトナム人技術者約100人を韓国の天安(チョナン)と温陽(オニャン)の半導体関連拠点に派遣し、専門的な研修を実施している。
研修では、製造ラインやメモリーチップの品質検査工程、実際の生産現場で発生する技術的な課題への対応などを学ぶ。ベトナムで計画する半導体関連施設の運営を見据え、現地の技術者を育成する狙いがある。
LGイノテック、インテルも生産体制を拡充
サムスン以外の大手企業も、ベトナムで半導体・電子産業への投資を進めている。
韓国のLGイノテックは2026年、10億USDを投じる半導体関連工場プロジェクトに着手した。長年にわたり電子産業の生産拠点を築いてきた北部ハイフォン市で、既存の産業集積をさらに強化する動きである。
米インテルも、コスタリカから半導体の組み立て・パッケージング・検査工程の一部をホーチミン市ハイテクパークの工場へ移管した。ベトナムの同工場は総投資額約15億USDで、2,700人超の高度技術職を生み出している。2025年の輸出額は116億7,000万USDに達した。
生産工程の移管は、ベトナムがインテルの世界的な半導体製造ネットワークにおいて、重要な役割を担うようになっていることを示す動きといえる。
BYDは電子機器工場への投資を増額
中国のBYDも、ベトナムで電子機器関連の生産能力を拡大している。
北部フート省では、BYDベトナム電子のフーハー工業団地における投資プロジェクトについて、投資登録証明書の変更が認められ、投資額が4億7,980万USD増額された。変更前の登録投資額は2億6,900万USDだった。
事業は電子機器、タブレット端末、スマートデバイスなどの生産に関連する。こうした投資の拡大は、ベトナムが電子機器のサプライチェーンにおける製造拠点として引き続き選ばれていることを示している。
インフィニオン、ホーチミン市に新オフィス
ドイツの半導体大手インフィニオン・テクノロジーズは10月5日、ホーチミン市に新オフィスを開設した。新拠点は、ベトナム南部における研究開発(R&D)、営業、マーケティング活動の拠点となる。
同社は2023年にハノイで半導体関連の研究開発センターを開設しており、今回のホーチミン市への拠点拡充によって、ベトナム国内での活動範囲を広げる。
インフィニオン・テクノロジーズのアジア太平洋地域社長兼最高経営責任者(CEO)、C.S.チュア氏は、新オフィスの開設について、ベトナムの長期的な成長可能性に対する同社の信頼を示すものだと説明した。また、企業活動の支援、現地人材の育成、国内半導体産業のエコシステムへの貢献を通じ、ベトナムが世界のイノベーションネットワークで果たす役割を強化していく考えを示した。
外資投資を国内企業の成長につなげられるか
大手多国籍企業による大型投資は、ベトナムが世界のバリューチェーンにおける役割を高める機会となる。一方、投資額や輸出額が拡大するだけでは、国内産業の技術力が自動的に向上するわけではない。
国民経済大学の国際貿易・経済研究所で上級講師を務める経済・国際貿易専門家のグエン・トゥーン・ラン氏は、大手企業の投資拡大は、ベトナムがグローバルバリューチェーンにおける位置を引き上げる好機であると指摘する。同時に、その効果を持続的なものにするには、インフラ、人材、産業政策を整える必要があるという。
長期的な経済効果を左右するのは、技術移転の進展、国内調達率、ベトナム企業の参入度合い、高度な専門知識を持つ技術者の育成などである。外資企業の生産規模が拡大しても、主要技術や部品、供給網を外国企業が握り続ければ、国内企業に波及する効果は限定される可能性がある。
ホーチミン市経済大学(UEH)ビジネス研究所のボー・スアン・ビン所長は、ベトナムへの高付加価値製造業や半導体分野の外国直接投資(FDI)の流入は、以前から見られた傾向だと説明する。新世代FDIの誘致に関する政策や半導体産業の育成方針を背景に、その動きが一段と明確になっているという。
サプライチェーンの再編と技術競争が進むなか、ベトナムは複数の国・地域から投資を受け入れることで、技術や知識の移転を促し、人材を育成し、国内の技術力を段階的に高める機会を得ている。
裾野産業と国内サプライヤーの育成が課題
ただし、ビン所長は、外資資金と技術を呼び込むことは出発点にすぎないと強調する。重要なのは、ベトナム企業がサプライチェーンの外側に取り残されないようにすることだ。
そのためには、裾野産業の育成や国内サプライヤーの能力向上、研究開発への投資、専門人材の育成を進める必要がある。政府機関にも、国内企業と外資系企業の連携を促し、高度技術分野への投資が生産規模や輸出の拡大だけで終わらず、経済全体に広く波及するよう支援する役割が求められる。
ベトナムが今後、半導体や電子産業でより高い付加価値を獲得できるかどうかは、外資企業を誘致できるかだけでなく、その投資を国内企業の技術力や供給能力の向上に結びつけられるかにかかっている。
サムスンをはじめとする大手企業の投資拡大は、ベトナムにとって大きな機会である。その機会を持続的な産業競争力へ転換するには、国内企業が供給網に参加し、技術を習得し、自ら研究開発や生産能力を高めていける環境づくりが不可欠となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN




























