ベトナム保健省は、医療サービスと観光を組み合わせた「医療ツーリズム」の推進計画を策定し、政府の承認に向けて準備を進めている。国内の医療機関で高度な治療や健康管理を受けながら、観光や療養も楽しめる仕組みを整え、外国人患者の誘致につなげる狙いである。初期段階では、選定した8つの省・市の公立・民間病院が参加し、国際水準に近い基準に沿ってサービスを提供する方針だ。
保健省のハー・アイン・ドゥック診療・治療管理局長は、この計画によって、ベトナム人が治療のために海外へ渡航する必要性を減らすとともに、外国人がベトナムを訪れて治療や健康管理を受ける流れを促進したいと説明する。医療ツーリズムは、将来的に数十億USD規模の経済効果をもたらすことも期待されている。
カナダ人患者がラオカイ省で手術、回復後に帰国
ベトナムでは、すでに外国人患者の治療実績が積み上がっている。地方の医療機関でも医療サービスの向上が進んでおり、外国人旅行者が滞在中に病気やけがをした際の受け入れ事例もある。
ラオカイ省第1総合病院では、74歳のカナダ人男性が治療を受け、10月7日に退院した。同患者は9月23日、転倒後に左膝周辺の痛みが生じ、歩行できない状態で入院した。過去に左膝と左股関節の人工関節置換術を受けており、骨粗しょう症も患っていた。
検査の結果、人工膝関節の上部にあたる左大腿骨遠位部の骨折が判明した。過去の手術歴や骨粗しょう症を伴う複雑な骨折であり、治療方法の選択は難しいものだったという。
同院の医師チン・チュン氏によると、医療チームは患者と協議したうえで、骨折部を安定させ、早期にリハビリを開始できるよう、太ももの内側と外側からアプローチし、2枚のロッキングプレートを用いて骨を固定する方法を選択した。患者がビザの有効期間などの事情から長期間ベトナムに滞在できないことも考慮し、できるだけ早く日常生活への復帰と帰国を目指した。
手術から4日後には、患者は松葉づえを使って病棟内を歩き、リハビリに取り組めるまでに回復した。病院は帰国に必要な医療書類を準備し、空港への移動も支援した。
重症の米国人患者も回復 国内病院の連携実績
保健省によると、中央レベルの主要病院や民間医療機関でも、外国人患者の診療・治療が行われている。
公立病院では、バックマイ病院、ベトドゥック病院、国立歯科口腔病院、国立小児病院などが外国人患者を受け入れている。民間では、タムアイン病院やビンメック医療システムなどが、診療や治療サービスを提供している。
最近の事例では、昏睡状態に陥り、多臓器不全を起こした米国籍の患者が、ビンメック・スマートシティ国際総合病院で初期救急処置を受けた後、バックマイ病院で17日間にわたり専門的な治療を受け、10月19日に安定した状態で退院した。
在ハノイ米国大使館は、病院の幹部や医師、看護師に宛てた書簡で、専門性の高い丁寧なケアと、医療チーム間の連携を評価したという。保健省は、こうした事例を含め、過去数年間にベトナム国内で治療やケアを受けた外国人患者は数十万人に上るとしている。
高度医療と観光を組み合わせたサービスを整備
ドゥック局長は、ベトナム医療の強みとして、高度な医療技術を実施できる専門性と、設備の整った医療機関が増えている点を挙げる。一部の病院は国際的な医療機関評価・認証であるJCIの認証を取得しており、民間病院では設備や病室の充実も進んでいる。
ただし、医療ツーリズムは単に外国人患者を病院に受け入れることではない。外国人が自らベトナムを渡航先として選び、専門的な治療や健康管理を受けると同時に、観光、休養、リハビリなどを組み合わせるサービスモデルである。
具体的なサービスとしては、タムアイン病院やビンメックのロボット支援手術のほか、体外受精(IVF)、美容医療、歯科医療、精密な健康診断などが想定されている。今後は観光業界と連携し、健康増進や回復期のケア、伝統医学を活用したサービスも組み込む方針だ。将来的には、長期滞在型の療養や高齢者向けサービスの展開も視野に入れている。
8つの省・市を起点に国際水準の基準を整備
計画の初期段階では、8つの省・市を重点地域として選定し、それぞれの地域や医療機関に役割と目標を設定する方向で検討している。参加する公立・民間病院は、保健省が定める基準に基づき、国際基準に近い水準でサービスを提供することが求められる。
持続的な発展に向けては、サービスパッケージ、施設・設備、人材、業務手順などの基準を整備するほか、ベトナムが競争力を持つ医療サービスの選定や、誘致対象となる市場の開拓も進める。
参加医療機関には、医療従事者の専門性や外国語能力に加え、料金を明示した具体的なサービスプラン、マーケティング戦略なども必要となる。保健省は文化・スポーツ・観光省とも連携し、政府による計画承認後、短期・中期・長期の段階に分けて施策を進める考えである。
ベトナムが医療ツーリズムを成長させるには、医療技術や設備だけでなく、外国人患者が安心して利用できる受け入れ体制、明確な料金体系、治療後の療養支援、海外市場への情報発信を一体的に整備することが重要となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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