ベトナム政府は、行政違反の罰金を故意に納付しない個人や組織への強制措置として、出国の一時停止や電気・水道、インターネット通信サービスの停止などを導入する方針を示した。行政違反処理法の改正案に新たな強制措置を盛り込むもので、国会では10月26日に審議が予定されている。政府は、罰金の未納や処分命令の不履行を減らし、行政処分の実効性を高める狙いだ。
行政処分の実効性を高める5つの措置
政府が提出した行政違反処理法の改正案では、現行制度を補う5つの強制措置を追加することが提案されている。
- 出国の一時停止: 罰金の納付を逃れるために出国するケースなどを想定。
- 事業所の封鎖: 活動停止命令などの処分に従わない場合に適用。
- 電気・水道の供給停止: 活動停止命令や原状回復命令、無許可建築物の撤去命令などに従わない場合を想定。
- 車両の検査・登録の一時停止: 行政処分の履行を確保するための措置。
- インターネット・通信サービスの停止: オンライン上での違反行為などに対する執行手段を整備。
政府は、これらの措置について、行政処分が実施されない、または十分に履行されない問題への対応を目的としている。特に、納付義務を故意に引き延ばしたり、処分の履行を回避したりする個人や組織への対策を重視している。
罰金逃れの出国や環境改善命令の不履行に対応
政府の説明によると、違反者本人や組織の代表者・責任者が出国することで、罰金の納付を遅らせ、処分の執行や徴収を難しくする事例があるという。出国の一時停止措置は、こうしたケースへの対応を念頭に置いている。
事業所の封鎖は、活動停止などの追加処分に従わない場合や、環境汚染の改善、感染症の拡大防止などを命じられても対応しない場合に適用することが想定されている。
電気・水道の供給停止についても、事業活動の停止命令、違反前の状態への原状回復命令、無許可で建設した建築物やその一部の撤去命令などに従わないケースを対象とする考えだ。
政府は、こうした強制措置によって違反者への抑止力を高め、法令の順守を促すとともに、行政処分を期限内に確実に履行させたいとしている。
国境を越えるネット上の違反にも対応
改正案の検討過程では、新たな強制措置が人権や市民の権利に大きな影響を及ぼす可能性があるとして、慎重な制度設計を求める意見も出た。適用の原則や条件を明確にし、厳格に規定する必要があるとの指摘である。
これに対し、法案を主管する公安省は、電気・水道の供給停止や出国の一時停止、インターネット・通信サービスの停止については、すでに一部の現行法令で関連する規定が設けられていると説明した。今回の改正案では、行政違反処理の枠組みの中で、これらの措置をより一貫して運用できるようにする狙いがある。
特に、インターネットや通信サービスの停止は、国境を越えた電子商取引など、デジタル空間での違反行為への対応を念頭に置いている。
近年、ベトナム国内に本社や支店、駐在員事務所を持たず、インターネットを通じてサービスを提供する外国の事業者による違反が問題となっている。こうした事業者に対しては、営業許可の取り消しや事業活動の停止など、物理的な拠点の存在を前提とした従来の処分を実行することが難しい。
公安省は、デジタル空間における違反行為の防止、処理、強制執行に関する共通の法的根拠を整備することで、法制度の一貫性を確保し、オンライン上の違反に対する執行能力を高める必要があるとしている。
無関係な個人・企業への影響防止が課題
一方、出国制限やライフラインの停止、通信サービスの停止は、対象者の移動や事業活動、日常生活に直接影響する措置である。適用範囲が広がれば、違反行為に関与していない第三者への影響も懸念される。
公安省は、改正案に強制措置の適用原則と条件を厳格に定め、違反行為に関係のない個人や組織に影響が及ばないよう配慮していると説明した。
今回の改正案は、行政処分の実効性を高める一方、強制措置をどのような条件で適用するかが重要となる。国会審議では、法執行の強化と人権・市民の権利の保護をどう両立させるかが焦点となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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