ベトナムのレ・ミン・フン首相は10月28日、ホーチミン市で開催された「2026年秋季経済フォーラム」の首脳級全体会合で演説し、外国企業に対して、ベトナム国内への投資にとどまらず、ベトナムと共に技術や事業を生み出す「共創型投資」を進めるよう呼びかけた。人工知能(AI)や半導体などの戦略分野で研究開発(R&D)を促進するほか、高度人材の育成、先端技術の実証、長期資金の確保に向けた国際協力を強化する方針である。
フォーラムにはフン首相のほか、中央省庁の幹部らが出席し、国内外から1,500人以上の代表者が参加した。
「ベトナムへの投資」から「ベトナムと共に投資」へ
フン首相は演説で、世界経済が大きな変化の局面にあると指摘した。主要国間の戦略的競争や各地での戦争・紛争に加え、経済の分断やサプライチェーンの再編が進んでいる。一方、AIをはじめとする科学技術の急速な発展、デジタル化、グリーン転換、エネルギー転換が、生産方式や経済発展のモデルを大きく変えていると述べた。
フン首相はこうした環境下では、各国が自立性を高めると同時に、国際協力を深めることが重要だと強調した。単独での取り組みだけでは世界共通の課題を効果的に解決できず、国際法の尊重や対話、多国間協力を通じた信頼構築が必要だとの認識を示した。
そのうえで、ベトナムが求めるのは、外国企業による資金投入だけではないと説明した。企業や研究機関がベトナム側と共に研究し、イノベーションを進め、技術を開発し、人材を育成することで、双方の成長につながる関係を築きたい考えである。
首相は、外国企業に対して「ベトナムに投資する」だけでなく「ベトナムと共に投資する」ことを呼びかけた。また、「ベトナムで生産する」だけでなく、研究開発やイノベーションを共同で進め、地域・世界で競争力を持つ新たなバリューチェーンの形成を目指す姿勢を示した。
2030年に中所得国上位、2045年に高所得国を目指す
ベトナムは現在、2030年までに近代的な工業を備えた中所得国上位の国となり、2045年までに高所得国となることを長期目標に掲げている。
フン首相は、2026~2030年を重要な転換期と位置づけ、マクロ経済の安定やインフレ抑制を維持しながら、GDP成長率を年平均10%以上とすることを目指す方針を説明した。
目標の実現に向けては、経済発展モデルを大幅に見直し、生産性や競争力を高める必要があるとした。従来型の成長エンジンを刷新するとともに、科学技術、イノベーション、デジタル転換を主要な成長の原動力として、新たな産業や経済分野の育成を進める。
また、国際統合の深化と国内経済の自立性強化を両立させる考えを示した。高い経済成長には生産性の向上を伴わせ、外国投資の誘致と国内企業の能力強化を並行して進める。国際市場との結びつきを深めながら、経済の耐性と自立性も高める方針である。
このため、行政や法制度、国家統治の仕組みを国際的な慣行・基準に沿って改善し、成長を促す環境を整える。科学技術やイノベーションの推進、高度人材の育成に加え、民間経済や国有経済、外国投資企業部門の質と効率の向上にも取り組むとしている。
AI・半導体を軸に研究開発拠点への転換を目指す
フン首相は、ベトナムが単なる生産拠点にとどまらず、国際的な研究開発拠点となることを目指す考えを示した。地理的条件、資源、人材などの強みを生かし、特にAI、半導体、新素材といった戦略技術分野で、外国企業と国内企業・地方政府との連携を強化したい考えである。
演説では、今後の協力に向けて4つの具体的な方向性を提示した。
第一に、国際企業とベトナムの地方政府・企業による共同イノベーションを促進する。 外国企業の技術や知見と、ベトナム側の人材・事業基盤を組み合わせ、研究開発や新たな産業の創出につなげる。
第二に、デジタル人材と先端科学技術人材の育成を進める。 世界経済フォーラム(WEF)や国際パートナーに協力を求め、企業と人材が新技術を導入・活用し、将来的には自ら技術を使いこなす能力を高める。
第三に、戦略技術の実証制度を検討する。 AIや新エネルギーなどの先端技術について、管理された環境下で実証実験を行う仕組みを企業と共同で構築し、安全性を確保しながら実用化を迅速に進めることを目指す。
第四に、中長期資金の調達に向けた国際協力を強化する。 ホーチミン市とダナン市に設置を進める国際金融センターを活用し、世界の中長期資金と、ベトナム国内のインフラ、エネルギー、グリーン転換、イノベーション分野の資金需要を結びつける構想である。
国際金融センターを資金と成長分野の接点に
フン首相が示した方針では、国際金融センターも重要な役割を担う。ホーチミン市とダナン市の国際金融センターを通じて、中長期の国際資金を国内の成長分野に結びつけ、インフラ整備やエネルギー転換、技術革新を支えることを目指す。
これは、外国投資の受け入れを資金の流入だけで捉えるのではなく、国内企業の能力向上や新技術の導入、国際的なバリューチェーンへの参加につなげようとする考え方である。
首相は、ベトナムが国際社会の信頼できるパートナーとして、共通課題の解決や新たな成長機会の創出に取り組む用意があると述べた。秋季経済フォーラムについても、対話の場にとどまらず、具体的で長期的な成果を生む協力や事業を生み出す場となることに期待を示した。
さらに、国内外の企業から寄せられる提案や課題について、実現可能な提案には明確な担当窓口を設け、有望なプロジェクトには具体的な推進計画を示し、正当な問題については責任を持つ機関・担当者を明確にして迅速な解決を図ると表明した。
ベトナムが目指すのは、外国企業から投資を受け入れる国から、技術、人材、資金、事業機会を国際パートナーと共同で生み出す国への転換である。今後、研究開発や人材育成を伴う投資をどこまで具体的な事業に結びつけられるかが、政策の実効性を測る焦点となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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