ベトナム経済は輸出を拡大してきたが、その多くを外資系企業が担い、国内に残る付加価値をどう増やすかが課題となっている。政府は国有企業と民間企業の双方で産業を牽引する大企業の育成を進めており、鉄道や重工業、先端技術などへの投資も広がりつつある。重要なのは企業の規模を大きくすることだけではなく、中小企業を含む国内のサプライチェーンを形成し、経済全体の競争力を高めることである。
輸出は拡大も、国内に残る付加価値は限定的
2006~2025年の統計によると、外資系企業の輸出額は年平均16.4%増加した。国内企業の伸び率は11.4%であり、外資系企業がより速いペースで輸出を拡大してきた。
1995年には国内企業が輸出総額の約73%を占め、外資系企業は27%だった。しかし、2026年には構図が逆転し、外資系企業が輸出総額の約80%、国内企業が約20%を占めるまでになった。2026年1~9月も、外資系企業の輸出比率は80%を超え、国内民間企業は20%未満にとどまった。
ベトナム経済・世界経済研究所のファム・アイン・トゥアン副所長は、この状況について、輸出における外資系企業への依存が強まっていることを示すものだと分析する。
ベトナムはハイテク製品の輸出を増やしているものの、国内で生み出される付加価値の伸びは十分ではない。外資系企業が輸出の大部分を担う一方、国内企業の技術力は輸出拡大に見合うほど向上していないという。
輸出額が増えても、原材料や部品の輸入への依存が大きければ、国内に残る付加価値は限られる。貿易規模の拡大を持続的な経済成長につなげるには、国内企業の生産能力を高め、裾野産業を育成し、部品や原材料の現地調達率を引き上げる必要がある。
ベトナム商工会議所(VCCI)の関係者も、外資系企業の生産モデルは組み立て加工が中心で、輸入投入財の比率が高いため、国内に残る付加価値が限定されていると説明する。また、外国投資を誘致するために税制優遇措置が活用されてきたことも指摘した。
さらに輸出への貢献が大きいサムスン、キヤノン、インテルなどが、納税額上位200社のリストに含まれていない点にも言及している。外資系企業が同リストに占める納税額は、全体の約18%とされる。
こうした状況を踏まえ、今後は輸出額の拡大だけでなく、国内企業の技術力や調達網を強化し、経済成長の成果を国内により多く残すことが課題となる。
国有・民間の双方で「産業を牽引する企業」を育成
ベトナムは2045年までに先進国・高所得国となることを目標に掲げている。その実現に向け、個々の企業の成長だけでなく、産業全体を牽引する中核企業の育成が重要な政策課題となっている。
2026年には、国有企業と民間企業の双方について、大規模で競争力のある企業を育成する方針が打ち出されている。
国有経済の発展に関する政治局決議79号(79-NQ/TW)は、技術力を備え、地域および国際市場で競争できる国有企業・企業グループの形成を目指す。2030年までに、東南アジアの売上高上位500社に国有企業約50社を入れ、世界上位500社に1~3社をランクインさせる目標を掲げている。
一方、民間経済の発展に関する政治局決議68号(68-NQ/TW)は、民間企業を数の面で増やすだけでなく、国内外で事業を展開できる大規模な企業や企業グループの育成を重視する。技術力や経営能力を高め、サプライチェーンを牽引できる企業を育てることが狙いである。
ここで重要なのは、少数の巨大企業を単独で成長させることではない。中核企業が市場や技術、受注、品質基準を生み出し、その周囲に一次・二次サプライヤーや多数の中小企業が育つ構造をつくることだ。
中核企業の投資が国内の部品メーカーや素材メーカー、物流企業などの受注につながれば、企業単体の成長を産業全体の生産能力へと広げることができる。
鉄道・重工業へ進出するベトナム民間企業
2026年、ベトナムの民間企業は従来の商業、不動産、消費財、サービスなどに加え、鉄道、航空、交通インフラ、重工業、特殊鋼、エネルギー、先端技術といった分野への進出を進めている。
こうした産業は巨額の投資を必要とし、投資回収にも長い期間を要する。国内企業が海外の技術企業と連携しながら、国内での製造能力を築こうとしている点が特徴である。
ビンスピード、THACO、ホアファットが鉄道分野へ
ビングループ傘下のビンスピード(VinSpeed)は2026年4月、ハノイ―クアンニン間の高速鉄道の建設に着手した。路線延長は約120.2キロメートル、設計最高速度は時速350キロメートルで、発表された総投資額は147兆VNDを超える規模である。
THACOは自動車・機械分野から鉄道、重工業、先端技術へ事業領域を広げている。研究開発から製造、施工、据え付けまでの能力を構築する方針で、ホーチミン市の都市鉄道事業にも参画を目指している。
ホアファットはズンクアットでレール・特殊鋼の生産工場を整備している。設計生産能力は年間70万トン、投資額は約10兆ドンで、2027年第1四半期に初の鉄道用レールを生産する目標を掲げている。
これらの動きは、ベトナム企業が鉄道インフラへの投資、機械製造、施工、素材生産、技術導入など、サプライチェーンの複数の段階に進出し始めていることを示す。
高速鉄道や航空、半導体、通信機器、防衛産業などでは、高度な技術と専門知識が不可欠である。国内資本だけですべてを賄うのではなく、海外の技術と国内企業の資本・製造能力を組み合わせ、段階的に現地化を進めることが現実的なアプローチとなる。
サービスや農業でも中核企業は生まれ得る
産業を牽引する企業は、重工業分野に限られるものではない。農業・食品分野でも、原材料の調達から加工、流通、ブランド展開まで、バリューチェーンの複数段階を掌握できれば、中核企業としての役割を果たすことができる。
サービス分野では、BRGグループが挙げられる。グエン・ティ・ガー会長の下、同グループは従業員2万2,000人超を擁する多角的なサービス企業グループへと成長し、幅広い商品・サービスを展開している。
重要なのは、企業の規模そのものよりも、その事業活動が取引先や関連産業にどれほど波及するかという点である。
大企業の成長を中小企業の成長につなげる
経済専門家のチャン・ズー・リック氏は、ベトナム経済が発展するためには、各産業やバリューチェーンを牽引できる規模と能力を持つ民間企業を育てる必要があると指摘する。中小企業が個別に活動するだけではなく、企業間の連携を通じて産業全体の競争力を高めることが重要だという。
同氏は、産業を牽引する企業とは単に規模の大きい企業ではなく、市場を開拓し、バリューチェーンを組織し、サプライヤーに受注機会を提供し、生産基準や技術水準を引き上げる企業だと説明する。
そのためには、大企業だけを個別に支援するのではなく、研究開発・設計、原材料、部品、製造・加工、物流、流通、ブランド形成まで、各段階を結び付ける仕組みが必要となる。
中核企業が安定した需要を生み出し、調達基準を示すことで、周囲の中小企業も設備投資や技術改善に取り組みやすくなる。こうして数百社、場合によっては数千社の企業がバリューチェーンに参加できれば、大企業の成長が産業全体の生産力や競争力の向上につながる。
元統計総局長のグエン・ビック・ラム氏も、国際的に通用するベトナム企業を育てるには、資本や技術、市場の拡大だけでなく、企業の挑戦を支える制度環境と、成長を目指す経営者の存在が重要だとの考えを示している。
企業の規模から、国内に生み出す価値へ
ベトナムでは、外資系企業が輸出の大きな部分を担う一方、国内企業の技術力やサプライチェーンへの参加は、輸出の拡大に見合うほど進んでいないという課題がある。
この状況を変えるには、国内企業の規模を拡大するだけでは十分ではない。中核企業が技術や受注を国内に広げ、部品・素材メーカーや中小企業の成長を促すことで、国内で生み出す付加価値を高める必要がある。
鉄道や重工業などへの大型投資が、国内の技術蓄積や調達網の拡大につながるかどうかも、その重要な試金石となる。ベトナム企業が国際市場で競争力を高めながら、国内の産業基盤をどこまで厚くできるかが、今後の経済成長の質を左右することになりそうだ。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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