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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第23回
長島・大野・常松法律事務所

2014年にベトナム初のホーチミン・オフィス、2015年にハノイ・オフィスを設立した長島・大野・常松法律事務所。JCCH(ホーチミン日本商工会議所)の法務・労務委員長を務める、ホーチミン・オフィス代表の中川幹久弁護士を取材した。

企業法務が専門のロイヤー

―― 近年、日本の大手法律事務所が海外展開を進めています。

中川 弁護士はアドバイザー業務ですので、お客様の海外進出に合わせて進出し、その地で法的な支援を行います。特にリーマンショック後はアジア進出の波が起きたので、この地域への進出が増えているのでしょう。

 もうひとつは日本企業の進出理由と同じで、海外展開を進めないと組織としての成長を維持できないのだと感じます。このようなことから、大手法律事務所の海外進出はこの10年ほどで加速しています。

―― 御事務所の業務内容を教えてください。

中川 私自身は企業法務全般、特にM&A(企業の合併や買収)や不動産取引を多く扱っています。大手法律事務所は大学病院のように分野が細分化されており、私は元々M&Aチームに属していました。ですから、M&Aも担当しますが、ベトナムでは町のお医者さん的な動きもしています。どんな案件でも任せてください(笑)。

 M&Aで多いのは、日本企業がローカル企業を買収、子会社化する場合と、合弁事業のためにローカル企業と一緒に出資して会社を設立する場合です。業務は相手企業のデューデリジェンス(企業状況の確認など)をしてから、契約内容のアドバイス、契約書の作成、契約締結へと進みます。

 各種の許認可も必要ですから投資ライセンスなども取得しますし、契約が締結されてからも関係は続きます。事業が始まって法的な課題が出て来れば、そのアドバイスも行います。

―― 不動産取引のお仕事も教えてください。

中川 ベトナムでは民間企業は土地の所有権を取得できないので、土地の使用権を取得、かつ関係する許認可も取得して、建物を作るという流れです。使用権取得に当たってはその土地の過去の権利関係も調べる必要があり、すると法的な問題が色々と見つかります。これらを発見して対応策を練るという、いわば土地のデューデリジェンスをするのですが、この作業に時間を要することが多いですね。

 M&Aと不動産以外ではインフラの案件もあります。例えば、ホーチミン市のメトロ1号線をはじめベトナムのインフラ整備には多くの日本企業が参加していますが、その関係でアドバイスさせていただいたりもします。

 顧問契約を結んでの継続的な案件、一件ごとの案件、保留している案件もあり、全部でいくつあるのか自分でもわからない状態です(笑)。日々の業務内容としてはお客様との打合せや書類作成、若手弁護士が作った原稿のレビューなどです。

―― 顧客は日本・日系企業が中心なのですね。

中川 はい。私は日本人弁護士なので、様々な意味で、お客様とベトナムとのギャップを埋めるのが最大の仕事だと思っています。

 日本企業が真に欲しているアドバイス、聞きたい「本当のリスク」、知りたい真意などは、ベトナム人というより他の国の人にはつかめないと思っています。これはアメリカ勤務時代にも感じたことで、言葉の問題だけでなく、日本人や日本企業固有の感覚があるからです。それと外国との溝を埋めるのが、日本人弁護士が海外で働く意義の一つだと思っています。

ベトナムの司法改革を支援

―― JCCHでは事業環境系委員会の委員長を長く務めています。

中川 日本と異なるのが対ベトナム政府の仕事が多いことで、意識して時間を使っています。ホーチミン市人民委員会とのラウンドテーブルの準備をしたり、ベトナムの法改正や運用改善を提案するなどです。後者においては日越共同イニシアティブでの司法制度の改善があります。

 少し前までベトナムには判例制度がありませんでした。なぜなら、法令を解釈する権限が裁判所ではなく、国会の常務委員会にあるため、裁判所の判断に効力を与えられなかったのです。日本では判例が法解釈の指針になっており、いくつもの判例を研究することで対応策が立てられますが、ベトナムではできなかったわけです。

 しかし、2015年に制度改正があり、判例制度を作ることとなりました。判例の諮問委員会を作り、ここが指定した判決が判例となります。最高裁だけでなく、高等裁判所や地方裁判所の判決も含まれます。

 私は何かお手伝いをしたいと考え、ボランティアですが判例の英訳を我々で作成の上、最高裁に提供し、最高裁が内容を確認したものから順次HPにアップすることを目指しています。HPにアップされれば、日本人だけでなく世界中の人々が参考にできると思います。

―― ベトナムととても良い関係のようですね。

中川 政府や司法関係者、ホーチミン市では人民委員会、商工局や計画投資省などと、信頼関係が築け始めていると感じます。常に意識しているのは、こうしたチャネルを通してやり取りをさせていただくときに、日本人として恥ずかしくない姿勢で臨むということです。

 不都合・不便に感じることをそのままぶつけるのではなく、形を変え、ときに心の中に留めておくべき場合もあると思っています。この国の制度や法律を知れば、言うべきこと、言わなくてよいことがわかってくるときもあります。

 今回のコロナ禍でも、混乱する日本とは対照的に、ベトナムは見事に対応していると感じます。また、この苦難なときを力強く生きるベトナム人の姿には、我々日本人が忘れ去ってしまったものを感じ、改めてこの国に対する尊敬の念を強くしました。このような国に色々なお願いをさせていただくとき、日本人としての恥ずかしくない姿勢を当然考えなければいけないと思っています。

 こうした態度で接していけば、ベトナム人も長年外国人を見ていますから、「真っ当なことを言ってるな」と感じてくれていると信じています。実はこれは2014年から始まったラウンドテーブルの改革以降、私が感じてきたことです。近年は真剣に対応をしてくださっていることを随所に感じ、本当に感謝しています。

―― これからしたいことは何ですか?

中川 弁護士の仕事もJCCHの仕事もより伸ばしたいです。日本の法律事務所の海外展開はまだ歴史が浅く、新しいページを開いている段階です。例えば、今の依頼者は日本企業がほとんどですが、外資系企業に間口を広げるのも考えられます。

 日本勤務時代には、日本への投資を望む外国企業が多かったので、欧米系企業のお客様も多く担当しました。ただ、アメリカ企業がベトナムに投資する際に、アメリカ系ではなく日系の法律事務所を選ぶか。逆を考えればわかりますが、かなり難しいです。ですが、あえてそこまで目指すのも良いのではないでしょうか。

長島・大野・常松法律事務所
中川幹久 Motohisa Nakagawa
大学卒業後、2003年に長島・大野・常松法律事務所に入所。2009~2010年に米国のPillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP、2011~2014年にホーチミン市の法律事務所Allensに出向。2014年よりホーチミン・オフィスに現職として赴任。