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【社会】職場でのセクハラ行為にはなぜ罰則規定がないのか?

(C) VNEXPRESS

労働法では、職場でのセクハラ行為を規定しているが、セクハラを受けた労働者が一方的に労働契約を解除できるという以外に特に処分は規定されていない。

「セクハラ」とは職場で厳格に禁止される行為として2012年の労働法で初めて規定され、セクハラ行為を受けた従業員は、事前の通告なしに一方的に労働契約を解除できるとされている。しかし、労働法では、セクハラ行為の具体的な定義が無く、雇用者に対するセクハラ防止対策を義務付けてもおらず、セクハラ行為を特定するための文書やガイドラインも存在していないため、セクハラ行為を働いた者への処分が困難である。

2015年、労働・傷病兵・社会省、ベトナム労働総同盟及び、ベトナム商工会議所(VCCI)は、職場でのセクハラ行為防止規定を公布した。この規定では、セクハラ行為は、身体の接触を伴うセクハラ行為、非接触型のセクハラ行為、言葉によるセクハラ行為の3つに分類されている。

ただし、この規定は強制力を持つものではなく、労働者が、自分自身を守るためにセクハラ行為とは何かを定義し、職場環境の改善のために、政府機関や企業がこの内容を就業規則に取り入れることを推奨しているに過ぎない。

現在ベトナムには、職場でのセクハラ行為に関する正式なデータは存在しない。2014年にActionAic Vietnamがハノイ市とホーチミン市の2000人以上の女性を対象に実施した調査では、『職場で頻繁にセクハラ行為がおこなわれている。』という結果が出た。職業別では、これまでに2~5回のセクハラ行為を受けたと回答した割合は、学生が60.5%で最も高く次いで公務員が59.5%、メイドが57.7%、OLが57.7%、工場労働者が47.9%の順となった。

各業種グループでは、それぞれ異なったセクハラを経験している。調査に回答した学生のうち73%が口笛を吹かれたり、からかわれたりしたと回答した。公務員の場合は、外見や身体についての言動を挙げる人が多くいた。OLの場合は、メッセージ、メール、画像によるセクハラ行為や下ネタ発言を挙げる人が多かった。

セクハラ行為防止規定の作成にかかわった労働省の元法務部長であるハー・ディン・ボン氏は、セクハラ行為については、法律の規定では無く、職場の就業規則に従って処分されることを期待して、セクハラ行為防止規定が作成されたと説明する。セクハラ行為が頻繁に発生する職場では、小さなことの積み重ねで職場環境がどんどんと不快なものに変わっていくとボン氏は指摘する。

ボン氏によると、性的暴行、強姦などの深刻な犯罪行為は刑法によって処分される。しかし、セクハラ行為に該当するような嫌がらせ行為を刑事処分する法律を策定することは非常に難しい。セクハラ行為の防止規定を作成する際には、嫌がらせ行為をどのように解釈するかや嫌がらせ行為自体をどのように特定するか、相手の同意があったのかどうかなど判断が非常に難しい問題があり、様々な意見が出された。

しかし、最終的には職場環境を改善し、嫌がらせ目的の行動を抑制し、嫌がらせを受けた人もそれらの行為に対して明確な反対の意思を表明できるようにするため、セクハラ行為防止に関する行動規範を策定する必要があると関係者全員の合意が得られた。法律の枠組み以外に、道徳的な規範を示すことは、人々の行動を抑制するのに役立つ。

「最初は気にも留めないような行為でも、誰かが抑制したり声を挙げなければ、ますますエスカレートしてしまう可能性があります。」ボン氏は話し、2018年に起きたクアンチ省での公務員男性によるセクハラ行為を例に挙げた。

2012年の労働法の施行から8年が経過したが、いまだに具体的なセクハラ行為の定義と処分に関するガイドラインは作成されていない。この点についてボン氏は、セクハラ防止規定が作成された時点で、政府の専門機関は、一定期間経過後に政府機関や企業でのセクハラ行為防止対策への取り組み状況を評価し、関係者からのヒアリングをおこなって新たなガイドラインを作成する計画があったと説明する。しかし、2016年には労働法の改定作業が本格化したため、このガイドラインの公布は先送りされてしまった。

セクハラ行為は、2019年の労働法でも明確に記載されており、企業は書面による具体的な規定によって職場でのセクハラ行為を防止することが求められている。

2020年に発行された議定145号では、企業に対して就業規則によって内部の違反者を処分する手続き、違反者の処分内容、被害者への賠償、および発生した結果への是正措置を規定する権利を与えている。各省の人民委員会は、企業におけるセクハラ防止対策を中心とした女性労働者保護対策の実施状況を確認する責任がある。

ボン氏によると、規定をどれだけアップデートしても実際の状況に追いつくことは難しく、セクハラ行為を特定することも難しいため、職場で、セクハラ行為防止規定を状況に応じてアップデートし続ける必要ある。しかし、この規定は強制力を持たないため、セクハラ防止規定を導入するかどうかは、雇用者の意識にかかっている。多くの労働者は、自分が当たり前のように行っている行為が実は他人への嫌がらせ行為に該当していることに気づいていない。

ボン氏は、専門の政府機関が役所や企業、学校でどの程度セクハラ行為が発生し、どのように処分されているかを調査し、どれくらいの企業が就業規則にセクハラ対策を取り入れているかを確認し、企業と労働者双方からセクハラ問題についての意見聴取をおこない、新たなガイドラインを策定すべきだと提案している。

出典:09/06/2022 VNEXPRESS
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