前回の2019年から3年ぶりとなるベトナム・モーターショー(VMS)が、10月26~30日にホーチミン市のSECCで開催。14ブランドが計120以上のモデルを展示し、5日間の来場は過去最高の約23万7000回に達した。
報道向けプレスツアーに参加
今回出展したのはホンダ、レクサス、三菱自動車、スバル、トヨタの日本勢に、アウディ、ブラバス、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンのドイツ、アメリカはジープとラム、イギリスはMGとモーガン、スウェーデンのボルボの14ブランドだ。
初日の26日は午前中がプレスツアー、午後がVIPツアーとなり、プレスツアーに参加した。最初に記者会見が開かれ、ベトナム自動車工業会(VAMA)会長のBrad Kelly氏とベトナム自動車輸入業者協会(VIVA)会長のLaurent Genet氏がスピーチ。新聞、テレビ、雑誌、Webメディアなど多くの報道関係者が集まり、ツアーが始まった。
報道陣は各ブランドのブースを順に回り、ブランドは15分程度で説明とアピールをする。ブースには少なくて2台、多ければ10台以上の車が並び、新型モデルやコンセプトカーが発表される。今回のキーワードは「SUV」と「EV」(電気自動車)だ。
アウディ自慢の高級EV
ツアー順にブランドを紹介すると、最初はSUBARU。中心的に語られたのはForester 2023の「Forester 2.0i-L」と「Forester 2.0 i-S」、スバルの衝突防止運転支援システムの「EyeSight 4.0」だ。EyeSight 4.0はビデオでの詳細な説明も流れ、ベトナムでも話題になりそうだ。
派手なダンスなどはなく、女性歌手が歌った後にスピーチというシンプルな構成だった。
Audiは前回と同じく広いフロアに数多くのクルマを並べ、横長の巨大スクリーンを使って動画を流す。発表されたのは前回のVMSでコンセプトカーとして紹介されたEV、「Audi e-tron 50 SUV quattro」だ。
VIVAの会長でもあるCEOが走行性、快適性、安全性などを細かく説明し、フルサイズSUVのスタイリッシュカーであると力説。何度も強調されたのは「All-electric」であることだ。
最後にモデルたちが登場して10台ほどある各車の横でポーズ。とても洗練された動きでベトナム・モーターショーの進化を感じてしまった。
各社の最新モデルが登場
アメリカからはJeepとRamがVMSに初参加し、共同ブースで出展した。男女のモデルたちはスリムパンツにロングブーツというワイルドなファッション。発表されたのは新型SUV、Jeepの「Grand Cherokee L」。Jeepはカラフルなボディで人目を引いた。
Jeepのモデルの変遷を1940年からイラストで追ったビデオが興味深かった。Jeepというユニークな車のデザインと、世の中の流行がリンクしていると察せられる。
Volkswagenは新型SUVの「Touareg Elegance」と「Touareg Luxury」、そして全世界で600万台以上の販売実績を持つSUV「Tiguan」の新型を発表した。
TouaregもTiguanもシリーズのハイエンドモデルだ。このような最新モデルや将来に向けたコンセプトカーを発表する場がモーターショーなのだが、以前のベトナムでは必ずしもそうではなかった。各社のベトナムへの熱の入れようと世界水準に近づいていることがわかる。
熱かったボルボのスピーチ
VMS初参加となるMGはちょっと変わった趣向でパフォーマンス。電動バランススクーターに乗って動き回る男性グループの力強いダンスで始まり、モデルは全員が欧米人女性。後者は実はありそうでないこと。
発表されたのはEVの「MG Marvel R」と「新型MG4」。Audiのe-tron 50 SUV quattroが即納可能であるのに対し、ベトナムでの販売は未定だそうだ。
Volvoはバイキング姿の男たちのダンスからスタート。広々したブースに点在するように置かれた車は全てがハイブリッドかマイルドハイブリッドで、巨大なスクリーンの下からスモークに包まれて現れたのは、SUVプラグインハイブリッドの「Volvo XC90 Recharge Ultimate」だ。
アジアパシフィックの代表が熱弁を振るい、最新モデルの説明からボルボ社が求める理想、ベトナム市場の魅力、今後の戦略までを語っていた。
メルセデスとホンダの演出
Mercedes-Benzは高級EVのEQSから「EQS 450+」と「EQS 580 4MATIC」の2モデルを発表。ベトナムで販売する初のEVで、11月から受注する予定だ。ベトナムへの期待はブース構成とパフォーマンスからも伺えた。
ブースの背後を囲むように立つ多数のスクリーンがデザインを映し、車の間をダンサーたちが情熱的に舞う。最後にモデルが登場して各車の横に着くまで、約10台の車の配置、ダンスの動きと流れ、ブース全体のライティングなどが非常に良く計算されていた。今回のモーターショーの中で最も魅力的な演出だった。
Hondaのブースでは販売モデルの「Accord」や「HR-V」などが並べられ、赤と白とのホンダカラーの衣装のダンサーが踊る。モーターショーではベトナム初登場など目玉となるモデル車にはシートが掛けられ、会場を盛り上げてから外されることが多いが、その間合いが一番長くて待ちかねた(笑)。
登場したのは第7世代の「Honda Civic Type R」。多くのブランドがSUVを発表する中で数少ないスポーツカーであり、日米に続いてASEANで初めて販売される予定だ。
ホンダのブースは14ブランドの中でおそらく最も広く、初めての大型バイクの展示コーナーが作られた。MotoGPに参戦したレース用バイク「RC213V」と販売モデルの「RC213V-S」、スポーツタイプの「CBR650R」や「CBR1000RR-R」、クルーザーモデルの「Rebel 1100」など見どころが満載だった。
トヨタとレクサスの魅力
Toyotaはハイブリッド車の「Toyota Prius」の構造がわかるように展示する一方で、今年5月に日本で発売されたSUV型BEV(二次電池式電気自動車)の「bZ4X」を中央壇上でアピール。ベトナムにおける環境対応車はハイブリッドがまずは適切で、EVは機を見ながら対応していくとのことだ。
白でまとめられたブースの上部には大型の丸いスクリーンが設置され、斬新かつ明るいブース作り。外国勢とは異なり、少々派手な普段着のダンサーが楽しそうに踊る。
トヨタと違ってレクサスはブースも大人のイメージ。男女ダンサーのバレエで始まり、展示された車の横には男女一組のモデルが並ぶ。進行役はミス・ワールド・ベトナム2019に輝いたLuong Thuy Linhさんと豪華だ。
発表されたのはbZ4Xと同じBEVのコンセプトカー「LF-Z」。AIが車両の操作を支援するなど全方位的な高級感があふれる。
こだわりの自動車メーカー
VMS初参加となるイギリスのBRABUSとMorgan。Mercedes-Benzのチューンアップを専門とするBRABUSはS 450 4MATICをベースにしたセダン「BRABUS B50」と、AMG G 63を800馬力にパワーアップした「BRABUS 800」を展示。
特にBRABUS 800はパープルのメタリックボディが印象的。チューニングメーカーという新たな付加価値を知って、興味を抱くベトナム人も少なくないだろう。
手作りの自動車メーカーとしてコアなファンが多いMorganは、最新モデルの「Plus Four」と「Plus Six」を展示。色はBRABUSと合わせたようなパープルで、レトロなデザインにときめくベトナム人も多いはずだ。
写真で見るとわからないかもしれないが、Plus FourもPlus Sixもカワイイくらいのスモールサイズ。実は横に立つモデルも小柄なのだ。
三菱自動車はコンセプトカー
Mitsubishi Motorsは「Pajero Sport」や「Xpander」といった販売モデルと共に、11月にタイで開催のAXCR(Asia Cross Country Rally)に参戦するAKA Racingチームの「AKA Triton Race Car」も展示した。
発表されたのは1週間ほど前に世界初披露されたばかり小型SUVのコンセプトカー「Mitsubishi XFC Concept」。同社はVMSで度々コンセプトカーを発表しており、ベトナムを重視していることが伝わる。Mitsubishi Motors Vietnam社長の小橋隆次郎氏のインタビューはP18を参照。
VMSの組織委員会によると、ビジター向け開催5日間の訪問数は23万6939回で過去最高を記録。雨天の日が多かったにもかかわらず特に週末に来場者が殺到し、閉館20分前になっても多くの人が行列を作っていたそうだ。
また、5日間で約2000台の車が販売され、展示会で紹介された次期モデルに数千台の注文があった。こちらも過去最高の販売台数だという。会期中には1500を超えるニュースやクリップが拡散され、300以上のメディアやニュースチャンネルが取り上げたことも影響したようだ。
今回のベトナム・モーターショーのテーマは「DRIVE OVER THE CHALLENGES」。多くの課題や難題があっても、ベトナムのモータリゼーションは進化を続けていく。