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ベトナムビジネス特集Vol152
輸出と内需の変化の中で
木製家具を作る仕事

木材大国のベトナムは世界有数の木材家具輸出国だ。世界的な注目度が高まる一方で、国際的な景気の低迷から大幅な輸出減となるなど、この数年の変化が著しい。業界動向を含めて3社がそれぞれの立場で語る。

日本の高級ソファを国内販売
2パターンの輸出向け家具

 1929年に群馬県高崎市で創業した馬場家具は、ソファに特化した洋家具メーカーだ。2006年に100%出資のLivax Vietnamをハイフォンに設立し、家具工場で日本輸出用のソファの生産を始めた。

 2014年からは本格的にベトナム国内販売を開始し、その営業職として赴任したのが阿部氏だ。現在はホーチミン市を中心に高級家具店への卸売をしており、ソファはハイフォンからの海上コンテナで年間約70本分が届く。

 受注生産をしており、顧客がモデル、色、素材などを選んで当地で製造する。対応モデルは約150あり、ベトナム国内向けは約30モデルに絞った。ベトナムでも家具店からの注文を受けて作り、ソファの価格はおよそ4000万~1億VND、顧客は富裕層が中心だ。近年はこうした高級家具の国内需要が増えている。

「日本では1~2人掛けの小サイズが多いですが、ベトナムでは家族が多いこと、広いリビングに置くなどから5人以上が座れる大型サイズ、大型セットが中心です。ソファは趣味性が高いので、品質やデザインにこだわる方も多いです」

 阿部氏は2018年に社内ベンチャーとしてクラシコを起業し、馬場家具の仕事と並行しながら家具や展示会のコンサルティングなど仕事の幅を広げ、ベトナムの木材加工団体にも知己が多い。ベトナムの木材家具メーカーは大きく2つに分かれるという。

「ベトナム産の木材を使って安く大量に生産し、海外に輸出する企業。もうひとつは輸入した質の高い材料で高級家具を生産して輸出する企業です」

好景気と不景気の乱高下
世界的な買控えが止まらない

 ベトナムは木材大国でアカシア、ユーカリ、ラバーウッドなどが大量に伐採できる。これらは安価ではあるが高品質とは呼べない。だから安価な大量生産ができるのだが、この事業の最大手国は中国だ。もう少し上等な家具の生産国にはマレーシアとインドネシアがあり、ベトナムも追い上げている。

「小ロットへの対応、丁寧な作業、比較的安い人件費などでアドバンテージがあり、ベトナムはこの4~5年は注目されていました」

 そんな中で起きた新型コロナは輸出家具業界に好影響を与えた。世界各地で外出が禁止・自粛されたことで2020~2021年には「巣ごもり需要」があり、最大の輸出国であるアメリカをはじめ各国からベトナムへの発注が急増したのだ。

「中国は数年前からの米中貿易戦争でアメリカへの輸出が難しく、マレーシアでは作業員の減少によって工場の稼働率が低下するなどの追い風もありました」

 ロックダウンが続いたベトナムでも、自宅での暮らしを快適にしたいなどの理由から家具を購入・新調する人が増えた。Webや動画で商品の目星を付けてから来店するといった方法で、馬場家具のベトナム国内販売の売上も30%ほど上がった。

 しかし、2022年は世界的なインフレで海外からの注文は軒並み激減し、材料費や物流費は高騰している。ホーチミン市手工芸・木材加工協会(HAWA)によれば、木材加工品輸出の70%余りを占める欧米諸国への輸出減で、今年の第4四半期の注文は年初数ヶ月に比べて60%ほど減るという。

「日本市場は縮小していても底堅く、新設住宅着工戸数を見れば先の需要はある程度予測できます。そのため、馬場家具としては、以前から計画的に海外販売を進めてきました。しかし今年の大不況は予測不能で、今後は業界全体が淘汰に向かうと思います」

製品の付加価値向上にシフト
内需と輸出の今後はどうなる

 ベトナムでは政府も各地域の木材加工協会もOEM生産からODM生産、高級家具の輸出に舵を切ろうとしている。安価な家具の大量生産、バイオマス用などの木材チップ、パルプ生産などは付加価値が低く、思ったほど利益にならないからだ。

 そのため商用木材の大規模な植林や付加価値の高い加工貿易への支援などが始まっているが、外国が求めるハイセンスな高級家具へのハードルは高い。

「ローカルの家具メーカーは国内向けと輸出向けに大きく分かれています。後者が国内販売しないのは輸出品のデザインをコピーされてしまうからです。オリジナルの高級家具を作れる企業は極めて少ないでしょう」

 特にテーブルや机などの木製家具は簡単にコピーできて見分けるのが難しい。馬場家具も8000万VNDのソファをコピーされて800万VNDで売られていたそうだが、ソファは材料の品質や座り心地などの技術的な優位性があり、顧客もその差がわかるという。

 ただ、大手家具メーカーなどは将来を見据えて、オーナー社長が子どもを海外留学などさせている。そして、育った彼らが親の会社に入り始めており、世代交代による商品のレベルアップに期待したいと阿部氏は語る。

 一方、国内では収入の増加もあって、低価格から高価格帯までの家具が売れ始めている。新型コロナ後は中間層の購買力が下がり、富裕層に高級家具を買う人が増えているという。

「販売店と協力して高価格路線に切り替えました。2年前は5000~6000万VNDのソファがよく売れましたが、最近は1億VND程度が売れ筋です。この1年で、ベトナム国内販売は過去最高の売上を達成しました」

 ドイツやイタリアの高級家具も売行きが良いようで、輸出の不振からベトナム国内販売を始めた欧州系の大手家具メーカーもあるそうだ。一方、東南アジアからの輸入を止めた家具店があるという。低価格品はクレーム対応や修理が必要になるため、売上の割に負担が大きいからだ。

「家具のベトナム国内需要は5~10年は続くと思います。ただ、それよりはるかに売上規模が大きい輸出向けは先が見えず、2023年後半までは、厳しい状況が継続すると思います」

学習セット、コタツ、ベッド…
「季節商品」を350人で生産

 ジャパンニューファニチァは徳島県の木製家具メーカーだ。日本本社は営業や設計を担当し、ベトナム現地法人であるジャパンニューファニチァベトナムが木製家具をOEM生産している。顧客は日本の大手家具メーカーが中心で、木材の調達から検品までをベトナム側で完結させ、日本に商品を輸出している。

 福村氏は1994年のジャパンニューファニチァ設立前から、協力会社を探すためにベトナムに来ており、2003年にジャパンニューファニチァベトナムを設立した。現在はビンズン省の自社工場で、家庭用の学習セット、コタツテーブル、ベッド、食器棚、介護家具、ホテル用家具、仏壇まで幅広く生産している。

「主力商品は子ども用の机やイスなど7歳以上が対象の学習セットです。これらの関連家具で年間に約4万台を生産しています」

 生産するのは主に季節商品だ。学習セットは小学校入学時の4月、コタツテーブルは秋から冬、ベッドは独り暮らしを始める春などのシーズンがあり、その前が売行きのピークとなる。

 出荷する2~3ヶ月前に注文を受け、顧客からデザインや仕様をもらって設計に入る。サンプルを完成させ、顧客がベトナムで確認して、その後で生産に入る。

 新型コロナの流行で渡航が制限された時期はテレビ会議で顧客と打合せをし、サンプルは日本へ送った。工場内で生産、食事、宿泊をする3オンサイトの時期は、従業員約350人のうち約130人で生産を続けたそうだ

 工場は下地ライン、木加工ライン、プリントライン、組立てラインなど工程ごとに分かれており、従業員は工程を覚えるのに3ヶ月、一人立ちするのに5ヶ月ほどかかるという。同社ではこうした家具職人を育てたいと技術級手当などを支給している。

「品質管理と検品も徹底しています。詳細なチェックリストを作り、使うネジも1本ずつ検品していますので、不良率は非常に少ないです」

材料、物流、為替の影響が大
業務の平準化のために工夫

 同社の特徴は印刷技術で、木材に直接印刷するダイレクト印刷を得意とする。ベトナム産のアカシアやラバーウッドの木材チップを原料に成型したMDF(中質繊維板)や、木材の細片を原料に成型したパーティクルボードなどの板を仕入れて、板の上に木目などを印刷している。

 大量生産が基本だが、100台単位の小ロットにも対応しており、多品種生産でもある。主力の学習セットならおよそ100個の部品で構成され、色違いを含めて月に約150種類を生産。こうした家具を月に30~35本、毎日1~2本をコンテナで出荷している。

「日本への輸出は約75%で残りはベトナムへの国内販売です。大手スーパーマーケットに什器などを納品しています」

 新型コロナで外出が控えられた2020~2021年は世界的な巣ごもり需要があり、日本からも注文が増えた。自宅の環境を充実させたい人向けのソファやテーブル、本格的に始まったテレワーク用のデスクなどで、同社の売上にも貢献した。

 ただ、コンテナ輸送の価格が4~5倍に上がるなど、物流費や材料費の価格が大きく変化した時期でもあった。

「今は落ち着いていますが、昨年の3~4月はあらゆる資材が値上がりしました。木材が30%、塗料が40%、プラスチックが40%、鉄関係が50%ほどでしょうか」

 受注も生産も今は平均的な量に戻ったが、今度直面したのは大幅な円安だ。米ドルでの取引、支払いがメインなので影響を受けている。

 上記の季節商品のように、家具の発注時期には波がある。また、輸出国で売れる時期と生産国で作る時期も異なる。同社では業務の平準化を図るために商社を介して取引し、商社が家具の在庫調整などサポートをしているが、輸出家具生産は元々変動が激しい業界なのだ。

 今年は最大の輸出国であるアメリカを筆頭に、世界的な不景気から発注が減り続けた。ビンズン工場の周辺には同業の木製家具メーカーが多くあり、経営者が集まって相談することがあるという。

「輸出先には在庫があるので、本格的な発注が戻るのは在庫の消化後でしょう。この状態が2年は続くという意見が多いです」

国内市場は拡大の可能性
今後は日本の新業界開拓も

 ベトナムの国内販売はどうか。福村氏によれば、ベトナム人は住宅家具があまり要らない生活を長い間続けていたが、所得の増加や都市化の影響で、近年は家具を購入する人が増えたという。テーブル、机、ベッド、ソファ、小さい物ではテレビボードなど様々な家具が揃ってきた。

「ベトナム製の家具の品質は値段に準じます。低価格品には安い材料や塗装が使われ、作りも雑です。一方、外国向けの輸出用家具は中級品以上が多く、品質が高いですね」

 特に欧米系企業は家具への要求や品質管理のレベルが高く、生産にはその国のISOを取得する必要もある。ベトナムのレベルは以前と比べて格段に上がったという。

 ベトナムはスマートフォンが急激に普及するなど、新しいライフスタイルに急変する傾向があり、国内家具市場も一気に拡大する可能性があると指摘する。ただ、同社が家庭向けの一般家具を国内販売する予定はない。所得が上がったとはいえ日本とは比較にならず、5万円はする同社の家具では商売にならないと思うからだ。

 ジャパンニューファニチァは1年ほど前、東京に販売強化のための営業所を設立した。従来の家具店やホテルだけでなく、住宅メーカーなども新規開拓していく。日本の企業を対象としたベトナムでのOEM生産を続けるつもりだ。

「技術力は自慢できますし、特許も多数取得しています。幅広い家具に対応できるのが我々の強みです」

「林地残材」を輸出で再利用
ベトナムで加工して日本へ戻す

 大阪府にある丸紅木材は、日本産のヒノキを材料にベトナムで子ども用の机やイス、玩具などを生産している。その目的とプロセスが非常に興味深い。

 日本でヒノキが伐採されると、商品化されるまっすぐな部分は切り出されるが、根元に近い曲がった部分や上部の枝(節)の多い部分は費用対効果がないと放置され、「林地残材」となることが多い。これらは環境破壊や人的被害、土砂崩れなどを誘発する危険性もあり、丸紅木材では再利用を考えていた。

 同社は中国のポプラ材を日本の住宅建築で活用した先駆者であり、現地で加工したポプラLVLを輸入して、住宅メーカーや家具店などに卸している。ベトナムでのLVL販売のために2013年に駐在員事務所を開設し、中国から輸入してローカル企業に販売していた。

 その後、2017年に現法のMARUBENI LUMBER VIETNAMを設立し、クイニョンに約10haの土地を購入。工場を建てる1年の間に新しい事業を模索した。

「捨てられた日本のヒノキを使えないかと考えました。日本から端材を持ってきて、現地の企業に子ども用の家具や玩具に加工してもらったのです」

 想像以上に仕上がりが良く、自社での生産を決めた。日本のヒノキを日本の技術で活用し、環境対策にもなる。林地残材は短いものが多く、商品は子ども用の家具と玩具にした。調べると日本の木製玩具は輸入品が多く、日本製は手作りの少量生産なので、大量生産には優位性もあった。

「といっても、社員は材木屋のおっさんばかりです(笑)。設計の経験もないので、他社製品を購入して見よう見まねで始めました」

 この時、「子ども向け」が奏功する。家具は小さくてシンプルなデザイン、玩具には安全性や食品衛生の試験もあるため、自然と形状が限定されるのだ。ヒノキの香りを出したいと無塗装にしたため、塗装の必要もなくなった。

 2018年4月にクイニョンの工場が竣工し、6月から日本への出荷がスタート。ブランド名は「HINOKI」を逆にした「IKONIH」(アイコニー)となった。

「『ヒノキング』という案もありましたが全力で阻止しました(笑)。そんな時に1人が、ヒノキを逆さまにしたらどうか呟いたのです」

家具は幼稚園がお得意様
出荷前に組み立てて確認

 販路開拓のため、製材所や住宅メーカーなど顧客や関連会社に声をかけて、9社に代理店になってもらった。営業先はデパートのイベント、バザーなど地域の催事、家具店、雑貨店、玩具店などのショップ、そして幼稚園と保育園だ。

 現在、玩具はIKONIHブランドだが家具は一部で、主に幼稚園や保育園から受注している。木製家具の購入には自治体から補助金が出ることも大きな理由で、商品は机とイス、それとロッカーがほとんどだ。

 2018年12月に初めて幼稚園に納品し、新型コロナの影響で2020~2021年は開園の延期が続いたが、2021年までに大阪、京都、兵庫、岡山、福岡、東京、名古屋などの約60園に納めた。

「小学校も考えましたが、机やイスには強度が必要なので鉄パイプなどが使われています。木材だけでは困難とわかりました」

 日本から輸入するヒノキの量は新型コロナ前の2019年で年間約30コンテナ。売上は出荷ベースで家具と玩具が同程度。輸出先は日本が中心で約7割だが、玩具を中心にアメリカやオーストラリアなど約3割は他国だ。

 工場の作業スタッフは約100人。経験者が教えることで早ければ2~3ヶ月で一人前になるという。機械加工で誰が操作しても均一の商品となるよう平準化を進めているが、手作業の工程もある。

 部材の角などの尖った部分をサンドペーパーなどで丸く削る面取りなどで、針葉樹のヒノキは手間がかかる。また、完成した各パーツは木材の湿気や相性で微妙にサイズが異なるため、同じ部品でも合わないケースが出てくる。そこで家具も玩具も出荷前に一度組み立て、完成後に分解して輸出している。

「無駄にしない、捨てないが信条です。家具用に材料を用意し、残りで玩具を作り、それでも余った端材はサシェ(香り袋)の中身に使います」

 サシェ用ではヒノキの伐採時期などで香りが異なるため、ヒノキオイルを交ぜて一定の香りにしている。このヒノキオイルは丸紅木材が製材時に出るオガ粉から作った商品で、販売もしている。

木を切る大切さを子どもたちへ
これからは海外市場を開拓

 ベトナムの輸出向け家具メーカーはどこも受注が減り、ヨーロッパ向けは光熱費の高騰、アメリカ向けは金利上昇とインフレ、日本向けは円安などで住宅着工戸数や購入者が減っていると語る。

「そんな中でもSDGs関連商品への問合せが増えています。業界全体への普及には時間かかると思いますが、今後は今以上に持続可能な木材を利用した商品作りが求められるでしょう」

 一般的な輸出用家具と異なる同社の商品は、日本市場で今後も伸びそうだ。日本政府は国産木材の使用を推進しており、国産材を利用した家具の購入には補助金を負担している場合が多い。瀧本氏をはじめ丸紅木材の社員は、木を切る大切さを小学校などで啓蒙している。

「今の山の木は切らないと成長しない。切ったものを大切に使って、新しい木を植えて、それが二酸化炭素を吸収していく。こうした話を紙芝居などで伝えています」

 日本以外の国への輸出はこれからだ。米大手企業との提携話があるが、厳しい条件や基準があり一筋縄ではいかない。昨年から台湾市場の開拓を始め、2コンテナ分のヒノキの玩具を台湾へ納品した。

「ヒノキの家具や玩具をもっと世界に広めたいです。そしてベトナム国内でも機会を作って販売したいですね」