チャイルドシート義務化をめぐる「自家用車は義務・タクシーは免除」の理由
ベトナムでは、10歳未満かつ身長1.35m未満の子どもを乗せる際にチャイルドシートなどの安全装置の使用を求める制度が導入される一方で、自家用車と営業用車(タクシー・配車サービス)で適用ルールが異なることが議論を呼んでいる。
7月1日から義務化、ただし営業車は対象外
7月1日以降、運転者は10歳未満かつ身長1.35m未満の子どもを乗せる場合、適切な安全装置を使用させる必要がある。
ただし例外として、旅客輸送事業用車両(タクシーや配車サービスなど)は適用対象外とされる。この点が「なぜ同じ自動車で差があるのか」という議論を生んでいる。
「高級車でも義務、タクシーは免除」は不公平か
制度を巡っては、「自家用車は高級車でも義務なのに、タクシーは免除されるのは不公平ではないか」といった疑問が市民から上がっている。
一方で、車両の価格や安全性の問題ではなく、制度設計上の合理性が背景にあるとされる。
立法過程で見直された制度設計
2024年に成立した道路交通秩序・安全法では、当初すべての車両に対してチャイルドシート使用を義務付ける方針であった。
しかし2025年末の法改正審議において、実務上の課題が指摘された。
議員からは以下のような問題点が提示された。
- チャイルドシートは年齢・体重により4〜5種類存在する
- タクシーに全種類を搭載するのは現実的に困難
- 1種類のみ搭載では複数児童に対応できない
- 非利用時の保管スペース確保が難しい
- 空車時の荷物スペースを圧迫する
- 緊急時(病院・予防接種など)の利便性低下
こうした理由から、営業車への一律義務化は非現実的であるとして、免除規定が導入された。
その後、施行時期は2026年1月から同年7月1日に延期された。
「チャイルドシート以外でも安全確保可能」
法律専門家の見解としては、制度の本質は「チャイルドシートそのものの義務化」ではなく、「子どもの安全確保」にあるとされる。
身長1.35m未満の子どもはシートベルト単体では十分な保護ができず、衝突時に首や頭部を損傷するリスクが高いとされる。
そのため、チャイルドシートだけでなく、補助ベルトやブースターシートなどの代替手段も認められている。
現場課題:認証制度が未整備
一方で、ベトナム登記検査機関の報告によれば、現時点ではチャイルドシートに関する適合性評価を行う認証機関が整っていないという問題も指摘されている。
規格(QCVN 123:2024/BGTVT)に基づく運用が制度面で完全には整備されておらず、実務上の課題が残っている。
当局「必ずしもチャイルドシートでなくてよい」
交通警察当局は、必ずしもチャイルドシートに限定せず、子ども用ベルトやブースタークッションなども条件を満たす安全装置として認める方針を示している。
重要なのは形式ではなく、事故時に子どもの安全を確保できるかどうかであるとされる。
制度は「安全」と「実務」の折衷設計
今回の制度は、国際基準に沿った安全強化を目指す一方で、タクシーなど公共交通の実務負担とのバランスを取った結果として設計されたものである。
今後は運用ルールや認証制度の整備が、実効性の鍵を握ることになる。



















