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ベトナム、「経済成長」から「国民の幸福」へ 生活の質を発展の新たな指標に

「社会主義型のコミューン・街区」モデルの対象地域であるトゥーラム地区
(C)THANH NIEN

ベトナムでは、経済成長率やGDPといった経済指標だけでなく、国民が実際にどれだけ豊かで安定した生活を送れるかを発展の重要な尺度とする考え方が強まっている。

ハノイ市では、行政運営や地域社会のあり方を見直す新たなモデルの試行も始まった。目指すのは単なる経済規模の拡大ではなく、教育、医療、社会保障、生活環境などを含め、住民が発展の成果を実感できる社会である。

「暮らしがもっと良くなること」が発展

ハノイ市トゥーラム地区に住む71歳の元軍人ドアン・ゴック・カン氏は、戦争と困窮の時代から現在まで、ベトナム社会の変化を見てきた。

トゥーラム地区はハノイ市が試験導入する「社会主義型のコミューン・街区」モデルの対象地域の一つに選ばれている。

カン氏にとって、このモデルは大きな理念や抽象的な政策ではない。最も重要なのは、住民の生活がさらに良くなることだという。

道路や電力、学校、医療施設などのインフラが整備され、生活環境が改善されることに加え、地域社会における人々の意識や文化、住民同士の責任も変わっていくことを期待している。

同氏は、幸福とは単一の指標で測れるものではないと語る。子どもや孫が健やかに成長し、教育を受けられること、医療を安心して受けられること、生活が安定し、故郷が発展していくこと。こうした身近な生活の改善こそが幸福につながるとの考えである。

トゥーラム地区、96の取り組みを開始

ハノイ市からモデル地域に選ばれたトゥーラム地区では、「トゥーラムの発展と住民の幸福のための100日間行動プログラム」を開始した。

取り組みは大規模な建設事業だけに限らない。緑豊かで清潔な生活環境の整備、行政サービスの向上、行政手続きの改革、デジタル化に加え、教育、医療、社会保障など住民の日常生活に直結する分野にも重点を置く。

地区全体では、さまざまな分野で96件の事業・取り組みを登録しており、住民自身が参加し、その成果を直接享受できる地域づくりを進めている。

トゥーラム地区人民委員会のファム・チョン・ラ委員長は、モデルの導入は単なる行政管理手法の変更ではなく、「住民に奉仕する」という行政側の発想そのものを変える取り組みだと説明する。

道路や生活環境の改善だけでなく、子どもたちがより良い環境で教育を受けられること、住民がより便利に医療サービスを受けられることも地域発展の重要な成果になるとの考えである。

「満足度」と「幸福」を行政評価の指標に

ハノイ市が試行する「社会主義型のコミューン・街区」モデルは、トゥーラム地区とフックティン地区の2地域を対象とする。

両地域の合計面積は86平方キロメートルを超え、人口は約20万人である。

モデルでは、行政や地域社会の発展状況を評価するため、54項目の基準を設定。このうち52項目は具体的な数値による定量評価とし、残る2項目には「住民の満足度」と「幸福度」を設定している。

ハノイ市党委員会のチャン・ドゥック・タン書記は7月の試行開始会議で、住民から寄せられる意見や満足度を地方政府の成果を評価する重要な基準とする考えを示した。

つまり、行政が何を実施したかだけではなく、その結果、住民の生活が本当に良くなったのかを評価しようという考え方である。

GDP成長率から「幸福度」へ

国の発展モデルについて、国会議員を務めたチャン・カック・タム博士は、GDP成長率などの「数字」から、国民の幸福を示す指標へと視点を移す必要があるとの考えを示している。

所得水準が高い国が、必ずしも最も幸福な国とは限らないためである。

同氏は、今後の政策では国民を中心に据え、行政機構の合理化や行政手続きの改革などについても、「国民にとって利益になるのか」「企業の負担が軽減されるのか」という視点から評価する必要があると指摘する。

ベトナムは2045年までに先進国・高所得国を目指す長期的な目標を掲げている。経済規模を拡大するだけでなく、その成長の成果を一人ひとりの国民が実感できるかどうかが、今後の発展を測る重要なポイントになりそうである。

「発展の成果を誰もが享受できる社会」へ

ベトナム祖国戦線中央委員会の幹部であるグエン・トゥック氏は、過去40年にわたるドイモイ(刷新)政策から得られた重要な教訓として、「国民を根本に置くこと」「発展の法則を尊重すること」「利益の調和を図ること」を挙げる。

経済成長そのものを否定するのではなく、成長によって生み出された成果を、国民が実際に享受できる状態にすることが重要という考えである。

ベトナムが今後、経済成長から生活の質、そして国民の満足度や幸福へと発展の評価軸を広げていくのか。ハノイで始まった自治体モデルの試行は、その方向性を具体的に検証する取り組みの一つとなる。

※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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