ベトナムの都市部で、小型の電気自動車(EV)が急速に存在感を高めている。特にビンファスト(VinFast)の「VF 3」や「VF 2」、Minio Greenなど、コンパクトな車体と手頃な価格を特徴とするモデルが街中で目立つようになった。
渋滞の多い都市部での取り回しの良さに加え、購入費や維持費の安さ、環境負荷の低さも支持を集める理由となっている。小型EVの普及は、単なる自動車市場の変化にとどまらず、ベトナムの都市交通そのものを変える可能性を見せ始めている。
街中で存在感を増す小型EV
最近、ホーチミン市中心部やハノイ旧市街を走ると、ビンファスト VF 3やMinio Greenなどの小型EVを目にする機会が増えている。
コンパクトな車体に鮮やかなカラーリングを施した車両も多く、ステッカーやアクセサリーなどで個性的に装飾する利用者も少なくない。
ホーチミン市の市民劇場周辺を訪れていた英国人観光客のデビット・ミラーさんも、小型EVが混雑した交差点を走る光景に興味を示した。
ミラーさんは、中国でも小型EVを見たことがあるとしたうえで、ベトナムの車両について「かわいらしく、利用者がアクセサリーなどでそれぞれ個性を出している」と評価。騒音や排気ガスを出さずに混雑した市街地を走る姿に、現代的な都市の印象を受けたという。
VF 3が販売をけん引、VF 2には大量の予約
小型EVの人気は販売実績にも表れている。
7月にはビンファスト VF 3の納車台数が5,564台に達し、ベトナムの自動車市場全体で首位となった。Minio Greenも2,429台を記録し、販売を伸ばしている。
さらに注目を集めたのが、新型のVF 2である。7月末の販売開始から数日間で約2万9,000件の先行予約を獲得した。
原記事によれば、単純計算では1時間当たり約399件、1分当たり約7件、約9秒に1件のペースで予約が入ったことになる。
予約はキャンセルや返金ができず、名義人の家族や親族、企業などへの譲渡に限られるという条件も付けられている。
こうした数字は、小型EVが一時的な話題ではなく、ベトナムの消費者にとって現実的な自動車の選択肢になりつつあることを示している。
渋滞都市で評価される「小ささ」
小型EVが支持される大きな理由の一つが、都市部での使いやすさである。
ホーチミン市のニャーベー地区に住むミン・アインさんは、1年以上にわたってVF 3を利用している。渋滞の多い道路では、車体が小さいため方向転換がしやすく、狭い場所にも駐車しやすい点をメリットとして挙げる。
また、外観からは車内が狭く見えるものの、実際には天井が高く、足元にも十分な空間が確保されていると評価する。
こうした「小さいこと」が、道路や駐車スペースが限られるベトナムの都市環境では大きなメリットとなっている。
さらに、比較的低い購入価格に加え、ガソリン車に比べた走行費やメンテナンス費の低さも消費者を引きつけている。
1億VND台の価格が「車を持つ」ハードルを下げる
特に価格面では、VF 2が大きな注目を集めている。
同車の価格はバッテリー込みで1億8,800万VNDとされ、これまで自動車購入をためらっていた層にも手が届きやすい価格帯となっている。
さらに、販売開始直後の800万VNDの優待や、ビンファスト(VinFast)のガソリン車オーナー向けの最大8,000万VNDのバウチャーを利用した場合、実質的な購入負担が約1億VNDまで下がる可能性があるという。
自動車はこれまで、ベトナムの多くの家庭にとって大きな買い物だった。しかし、小型EVの低価格化によって、これまでバイクを主な移動手段としてきた層が自動車へ移行する可能性も高まっている。
充電費用を抑える政策も追い風に
EV普及を後押ししているのは車両価格だけではない。
ビンファスト(VinFast)は、全国のV-Green充電ステーションを対象に、2029年2月10日まで月10回の無料充電を提供する政策を実施している。
また、EVはガソリン車と比べてメンテナンスの頻度を抑えられることも、都市部の利用者にとってメリットとなっている。
小型EVは都市の大気汚染対策にもなるか
小型EVの普及は、自動車市場だけでなく都市環境にも影響を与える可能性がある。
ベトナムの大都市では、バイクが主要な移動手段となっており、ガソリン車から排出される二酸化炭素(CO₂)や微小粒子状物質(PM2.5)などが大気汚染の一因となっている。
小型EVがガソリンバイクやガソリン車の一部を置き換えれば、少なくとも車両から直接排出される排気ガスの削減につながる。
欧州でも、道路や駐車スペースが限られる歴史的な都市を中心に超小型EVへの関心が高まっている。ベトナムでも、都市部の渋滞や駐車スペース不足という独自の事情が、小型EVの普及を後押ししている。
今後、都市部で小型EVの利用者がさらに増えれば、ベトナムの交通風景だけでなく、都市の環境や自動車市場の構造にも変化をもたらす可能性がある。



















