ベトナム国家賃金評議会は7月16日、2027年の地域別最低賃金改定に向けた第2回会合を開催し、最低賃金の引き上げ幅と適用時期について本格的な協議を行う。
労働組合側は最大9.8%の賃上げを2027年1月1日から実施するよう求めているのに対し、企業側は経営への影響を理由に同年7月1日からへの延期を主張しており、双方の意見は大きく分かれている。
労働組合側は最大9.8%の賃上げを提案
ベトナム労働総同盟(VGCL)は2027年の最低賃金について、2026年比で8.5%または9.8%引き上げる2案を提示している。
具体的には、地域別最低賃金を月額31万5,000~52万VND引き上げる内容で、適用開始日は2027年1月1日を提案している。
同団体は、GDP成長率や消費者物価指数(CPI)、労働生産性、企業の経営状況などを総合的に考慮した結果として、この水準を算出したとしている。
物価高が家計を圧迫
近年、食品や生活必需品、教育費などの生活コストは上昇が続いており、多くの労働者は賃金の引き上げを望んでいる。
ハノイ市の日系企業で働く女性労働者は、「夫婦とも工場勤務で、基本給は1人当たり月1,200万~1,300万ドン程度。住宅費はかからないが、娯楽や外食、買い物をできる限り減らして家計をやり繰りしている」と厳しい生活実態を語った。
労働組合側は、最低賃金の早期引き上げが、物価上昇によって低下した購買力の回復につながると主張している。
企業側は「1月実施は準備期間が短い」
一方、ベトナム商工会議所(VCCI)は、2027年1月からの実施では企業の準備期間が不足するとの立場を示している。
企業側は、賃上げを実施する場合でも2027年7月1日からの適用を希望している。
製造業では年間予算を策定する際、人件費の増加を4~5%程度に見込む企業が多く、約10%の賃上げは想定を大きく超えるとの声も上がっている。
ある企業経営者は、燃料価格の上昇によって物流費などのコストも15~20%増加しており、この状況で急激な人件費増は収益を圧迫しかねないと指摘。「早期実施が避けられないのであれば、4~5%程度の引き上げが現実的だ」との考えを示した。
専門家「本来は1月実施が法律の趣旨」
こうした議論について、元国会文化・社会委員会副委員長のブイ・シー・ロイ氏は、「最低賃金は1月1日から適用するのが労働法の趣旨に沿っている」と説明する。
同氏によれば、最低賃金は前年10月までに公表し、企業が新年度予算や事業計画へ反映できるよう、翌年1月から適用することが想定されているという。
また、最低賃金の見直しは、
- 消費者物価指数(CPI)
- 経済成長率
- 労働市場の需給
という3つの要素を総合的に判断すべきだと指摘。適切な賃上げは労働者の生活を支えるだけでなく、生産性向上や人材定着にもつながると述べている。
業種ごとに実施時期を分ける案も
一方で、企業と労働者双方への影響を考慮し、業種によって実施時期を分けるという折衷案も提案されている。
電子・半導体・ハイテク産業など収益性が高い業種は2027年1月から適用し、物流コストの影響を受けやすい繊維・アパレル、履物、工芸品などの労働集約型産業については7月から適用する案である。
こうした柔軟な運用により、労働者の待遇改善と企業負担のバランスを図るべきとの意見も出ている。
2027年の最低賃金改定は、物価上昇への対応と企業競争力の維持という双方の課題をどう両立させるかが最大の焦点となる。国家賃金評議会が今後どのような妥協点を見いだすのか、その議論の行方に注目が集まる。



















