ベトナム北部クアンニン省で、人工透析を終えた母親と息子を病院から自宅まで送り届けたタクシー運転手が、運賃の受け取りを辞退し、「そのお金はお母さんの薬代に使ってください」と声を掛けた出来事がSNSで大きな反響を呼んでいる。
何気ない一言と温かな心遣いが、多くの人の共感を集めている。
「薬代に使ってください」と運賃を辞退
SNSで拡散された動画には、タクシー車内で交わされた運転手と親子の会話が収められている。
病院からの帰路、息子は運転手との会話の中で、母親が毎月人工透析のため病院へ通院していることを明かした。自宅へ到着し、息子が運賃を支払おうとしたところ、運転手は受け取りを断り、
「お母さんは透析治療を受けているのでしょう。運賃はいりません。そのお金は薬代に使ってください」
と伝えた。
さらに、「また病院へ行く時は連絡してください。迎えに来ます」と声を掛け、親子を励ましたという。
20キロの送迎、運賃25万ドンを受け取らず
この運転手は29歳のブイ・タイン・トゥンさん。
数日前、この息子を自宅前で乗せた後、クアンニン省のバイチャイ病院で人工透析を終えた母親を迎えに行き、自宅まで往復約20キロを送迎した。
道中の会話で、トゥンさんは、息子の話で母親が腎不全を患い、定期的な透析治療を続けていることを知った。
また、父親は建設作業員として働き、治療費を工面するため節約を重ねていることも耳にした。
目的地に到着した際の運賃は25万VNDだったが、トゥンさんは受け取らないことを決めた。
「重い病気の患者からは料金をもらわない」
トゥンさんによると、このような対応は今回が初めてではない。
タクシー運転手としての収入は決して多くないものの、救急患者や重い病気で通院する人を乗せた際には、これまでも運賃を受け取らないことがあったという。
「無料で送迎しても、お金以上に、人の役に立てたという喜びを得られる」とトゥンさんは話す。
今回の動画が大きな反響を呼んだことには本人も驚いており、「小さな行動でも助け合いの輪が広がればうれしい」と語った。
苦労を知るからこその思いやり
トゥンさんは現在独身で、タクシー運転手として約4年間働いている。
幼い頃に父親を亡くし、早くから自立して生活してきた。兵役を終えた後は建設機械のオペレーターとして働き、その後タクシー業界へ転身したという。
自身も決して裕福ではないが、「自分にできる範囲で困っている人を助けることは当然のこと」と考えている。
後日、この親子の息子はハノイへ仕事に向かうため再びトゥンさんへ送迎を依頼した。しかし当日は予定が合わず、同僚の運転手を紹介したという。
その後、息子はメッセージで改めて感謝の気持ちを伝え、トゥンさんの善意に深い謝意を示した。



















