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ベトナムニュース【経済】南部の輸出企業にリストラの嵐

(C) VNEXPRESS

工場の受注量が減少したため南部で数万人が職を失っており、このままベトナムの主要輸出国市場が回復しなければ、失業者数はさらに増加する可能性がある。

9月上旬に約900人の従業員を抱える縫製工場のS.K Vinaが韓国の親会社から操業停止の要請を受けた。操業停止の理由は、大口顧客が突然全ての注文をキャンセルしたことによるもので、S.Kグループでは穴埋めの注文を獲得することが出来なかった。S.K Vinaは11月中に解散する必要がある。従業員の給与、補償金、手当などに必要な約300億VNDは、親会社から提供される予定だ。仕掛品については、ビンズン省の工場に移管して完成させる。

S.K Vinaは、ホーチミン市で15年近く操業してきた。今年の6月以降、縫製業界の多くの企業が欧米市場の購買力低下の影響を受けたが、S.K Vinaは、依然として受注があり従業員は残業が減る程度の影響しか受けていなかった。それが突然の解散となり、「工場が解散になるとは誰も予測してませんでした。」と担当者は話す。工場は、従業員を維持しようと努力したが、受注量が減少し続けたため従業員に仕事を与えることが難しくなった。

SK Vinaから200㎞以上離れたメコンデルタ地域で、革靴を製造しているAn Giang Samho社の工場では、全従業員の53%にあたる5300人以上の従業員がリストラされた。同社が政府当局に送った文書では、売上の40%を占める大口取引先からの注文がストップしたと説明している。他の顧客からの注文も世界的なインフレ圧力によって減少し、輸出量が大幅に減少した。An Giang Samhoでは、売上の減少を賄うために新規顧客の開拓を進めたが思うように受注できず、生産規模を縮小し人員を削減する必要に迫られた。

地域の行政機関と何度も話し合いをおこなった結果、同社は、妊娠中の従業員、生後12か月未満の子供を育児中の従業員、一人で子供を育てている従業員を解雇しないことを決めた。またもし、家族の多くが同社に勤めている場合は一人だけを残すこととしている。アンザン省労働・傷病兵・社会局のファン・ソン副局長は、長年この仕事をしているが、今回のAn Giang Samhoのような一度に5000人以上もの従業員が職を失うというケースは聞いたことが無いと話す。影響を受ける従業員数が非常に多いため、当初は行政側にも混乱が生じた。

SK VinaとAn Giang Samhoは、受注量減少のために労働者の解雇を余儀なくされた南部の工場の代表例だ。ベトナム労働総同盟の統計データによると2022年9月から11月にかけて南部を中心に28の省と市で63万1300人以上の労働者が受注減の影響を受けている。このうち約57万人の労働者が労働時間が減少しており、3万4500人以上がリストラされ、3万1000人以上が無給休暇状態か労働契約の一時停止状態となっている。世界的な不況の影響を最も受けているのは、木材加工、縫製、革靴、電子部品、食品加工、サービス、旅行などの業界だ。例年は、この時期になれば各工場は増産に対応するため労働者の採用を増やすが、今年は全く逆の状況に陥っている。

ビンズン省社会保健局の統計によると、10月末までにビンズン省内で約2万8000人の労働者が仕事を失った。ビンズン省労働組合の調査によれば、影響を受けている労働者の数は約24万人にのぼっている。ドンナイ省では、過去5か月間に約3万人の労働者が労働契約を打ち切られた。ロンアン省の場合は、これまでに1000人以上が職を失っている。

ホーチミン市では10月中旬に労働・傷病兵・社会局のグエン・バン・ラム副局長が2022年中に2800人以上が失業するとの予測を示していた。しかし、各地方のデータを見ると12区、ビンタン区、クチ県の3つの工場だけで、これまでに3400人以上の従業員が解雇されている。リンチュンⅡ輸出加工区で6000人以上の従業員を抱えるある靴製造工場では、受注量の減少から大幅な従業員削減を検討している。

縫製業界で30年以上の経験を持ち、ホーチミン市縫製・刺繍協会の会長兼、サイゴンガーメント3社の取締役会長であるファン・スアン・ホン氏は、工場がこれほどの受注減少に見舞われ、大幅な労働者の削減に追い込まれているのを見るのは初めてのことだと話す。各工場では受注量が30~50%も減少したため、従業員の作業時間を短縮したり、ローテーションで休暇をとらせるなどの対策を余儀なくされている。現在の状況は、COVID-19の時よりも悪いとホン氏は話す。

「COVID-19の感染が拡大した時、私はこの病気はいずれ制御され、企業は政府に対して労働者の支援を要請できる根拠が十分にあると信じていました。しかし現在の状況にはとても混乱しています。」とホン氏は述べ、2022年の残り2か月と2023年の上半期について「まるで明りの無いトンネルの中に入っていくようなものです。」と付け加えた。多くの工場では、新年の注文が非常に少なく、新たな市場を開拓することも簡単ではないため、今後状況はさらに悪化する可能性がある。多くの工場は仕事と従業員を確保するために赤字覚悟で低価格の注文にも対応する姿勢を見せているが、それでも受注は増えていない。

ホーチミン市ビジネス協会からの情報によると、縫製業の主要輸出先であるアメリカやヨーロッパからの注文が大幅に減少している。具体的にはヨーロッパからの注文が60%、アメリカからの注文も30~40%減少している。在庫量も20~25%まで上昇した。2022年第4四半期と2023年の第1四半期についても新規の顧客は獲得できておらず、各企業間の受注競争は熾烈を極めている。多くの顧客が40~50%の値下げを要求しており、少なくない企業が労働力と生産規模の縮小を迫られている。

ベトナム商工会議所(VCCI)ホーチミン市支部雇用調整室のブイ・ティ・ニン室長は、ベトナムの履物、衣類、家具の主要輸出先である欧米の消費が停滞しており、これらの製品を製造している工場が深刻な打撃を受けていると説明する。また、日本向けの輸出企業も円安の煽りを受けて売り上げが下がっている。

ソーシャルライフ研究所のグエン・ドゥック・ロック所長は、研究所の調査結果として、工場で働く労働者の60%が採用条件が殆どない状態で採用されている指摘する。つまり、非常に簡単に採用されるが、工場が苦境に陥った場合は簡単に解雇される人員ということだ。また、この調査では、メコンデルタ地域の高齢労働者の10%以上がホーチミン市などの工業都市から帰省した人であることが分かっている。これらの労働者は、職業別の労働上限年齢は過ぎているものの定年退職年齢には達していない。このような採用構成は労働集約型産業の結果であり、労働者は感染症や不況のあおりを受けて簡単に失業してしまう。

ロック所長は、海外市場が停滞し、輸出企業が労働者に多くの仕事を提供できない状態を政府は、製造業、サービス業、建設業などの産業別のバランスをとり、労働力を調整する機会とみなす必要があると指摘する。取り急ぎ労働者に新たな仕事を提供する方法の一つとして各省庁と自治体の公共投資の促進が考えられる。現在、総額数百兆VNDの公共投資プロジェクトが展開されておらず、数百万人規模の雇用が創出されていない。

ベトナム労働総同盟のファン・バン・アイン副会長は、現在受注が減少した企業を支援するように首相に提案するための報告書をまとめていると述べた。労働組合は、苦境に立たされている労働者を支援し、企業側に対して、景気が回復するまで極力従業員を維持するように要請している。「COVID-19の教訓でわかるように、無暗に従業員を解雇した企業は、市場が回復した時に苦労することになるでしょう。」とアイン副会長は述べた。

出典:23/11/2022 VNEXPRESS
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