ベトナム税務総局は、企業や個人事業主による「二重帳簿」を利用した脱税行為への監視を強化すると発表した。電子請求書や銀行取引、会計データを組み合わせたリスク分析を進めることで、申告内容と実際の売上との乖離は従来よりも発見しやすくなっているとして、自主点検を呼び掛けている。
「二重帳簿」は売上隠しによる脱税行為
税務総局によると、「二重帳簿」とは、実際の売上や事業規模を意図的に隠し、税額を少なく見せるために複数の会計帳簿を管理する行為を指す。
財務省税務総局は4月以降、関係機関や事業者に対して協力を要請する文書を相次いで発出しており、今回新たに公表したガイドブックでは、企業や個人事業主に対し、自社に不正の兆候がないか確認するよう求めている。
売上や請求書、銀行データの不一致を重点監視
税務総局は、次のようなケースを不正のリスクが高い事例として挙げている。
- 実際の売上と発行した電子請求書の金額が一致しない
- 商品を販売しても請求書を発行しない、または実際より低い金額で発行する
- 業種に比べ現金取引の割合が極端に高い
- 会計システム、電子請求書、銀行入出金データの内容が一致しない
- 複数の会計ソフトを使用し、データを分散管理している
- 売上は増加しているにもかかわらず、利益が長期間にわたり異常に低い、または赤字が続いている
- 税務申告書と金融機関への提出資料で売上や利益が大きく異なる
また、個人事業主が課税基準を下回る売上を申告している一方で、実際の売上が基準を超えているケースや、正当な証憑書類のない経費計上なども重点的な監視対象となる。
AIやビッグデータ活用で摘発能力が向上
税務総局は、近年の税務行政のデジタル化により、不正の発見能力が大きく向上していると説明する。
電子請求書や会計データ、銀行の決済情報を相互に照合するほか、ビッグデータ分析やリスク管理システムを活用し、業種ごとの売上や利益率と比較して異常値を検出する仕組みを導入している。
さらに、銀行、電子商取引(EC)事業者、決済サービス会社、会計ソフト・電子請求書システム提供会社などとの情報共有も進めており、「申告額と実際の事業実態との差を隠すことはますます難しくなっている」と警告した。
脱税は刑事責任を問われる可能性も
税務総局によると、二重帳簿による脱税が発覚した場合、不足している税金の全額納付に加え、延滞税が課される。
行政処分では、脱税額の1~3倍の罰金が科される可能性があり、悪質なケースでは刑事責任が問われる。
ベトナム刑法では、脱税額が一定額を超えた場合、脱税罪として立件される可能性があり、個人では1億ドン以上、法人では2億ドン以上が起訴の基準となる(一定の条件下では、この金額未満でも刑事責任を問われる場合がある)。
会計ソフト会社にも法的責任の可能性
税務総局は、企業だけでなく、会計ソフトや電子請求書システムを提供するIT企業にも注意を促している。
二重帳簿を作成・維持できる機能を持つソフトウェアの開発や提供、運用支援は行うべきではないとしたうえで、売上や請求書、入出金データの不一致を自動で検知・警告する機能の実装を推奨した。
また、二重帳簿システムの構築を支援したソフトウェア企業などについては、脱税行為の共犯または幇助(ほうじょ)として法的責任を問われる可能性があると警告している。



















