ホーチミン市建設局は、バス車体広告制度を抜本的に見直し、新たな運営方式へ移行する方針をホーチミン市人民委員会へ提案した。従来の一括入札方式を廃止し、バス運行事業者が自ら広告主を開拓し、広告事業を運営できる仕組みに改めることで、公共交通の安定財源確保とサービス向上を目指す。
2017年開始の制度は期待した成果を上げられず
ホーチミン市は2017年、公共バスの新たな収入源を確保する目的で、車体広告事業を開始した。
当初は4つの広告パッケージを入札にかけたものの、落札されたのは25路線・492台を対象とする1案件のみで、契約額は約1,610億VNDとなった。
この事業により、市は3年間で約1,350億ドンの歳入を確保し、年間平均では約450億ドンの収入を得た。一方、残る案件は入札条件を3度見直しても応募企業が現れず、2021年3月以降は事業が停止している。
制度上の課題が普及を妨げる
建設局は、制度が定着しなかった背景として、複数の課題を挙げている。
バス車両は市の資産ではなく運行事業者の所有物であるにもかかわらず、広告収入は事業者へ十分配分されなかったため、車両提供へのインセンティブが働かなかった。
また、新型車両への更新が進んだことで広告施工の調整が難しくなったほか、協同組合方式の運行会社では車両所有者が塗装への影響を懸念し、車体への広告ラッピングに同意しないケースもあった。
さらに、新型コロナウイルス感染症の流行やSNS、動画配信サービス、デジタル広告の急速な普及も、従来型のバス広告市場に逆風となった。
約2,400台のバスが新たな広告媒体に
現在、ホーチミン市では180路線、約2,432台のバスが運行している。
市は公共交通の利用拡大を進めており、今後もバス路線網の拡充を計画していることから、車体広告の市場価値はさらに高まると見込んでいる。
建設局は、世界の主要都市でも公共交通機関への広告は一般的であり、広い広告到達率を持つ媒体として企業ニーズも高いと分析している。
運行会社が広告を直接販売へ
新制度では、市による一括入札を廃止し、バス運行会社が広告主を直接開拓し、市場価格で広告枠を販売できるようにすることを提案している。
広告内容については、広告法など関係法令を順守し、バス運行の安全性や公共交通の運営に支障を与えないことが条件となる。
また、広告収入は法定の納税義務を果たした後、原則として運行会社が全額受け取れる仕組みとする方針である。
広告収入をサービス向上へ活用
建設局は、広告収入が増えれば運行会社は車両の整備や清掃、安全管理を強化できるほか、車内カメラや無料Wi-Fi、LED案内表示など設備の充実にも投資しやすくなるとしている。
さらに、バス停や待合所などのインフラ整備にも活用できるほか、広告収入の約30%を活用して無料乗車キャンペーンや利用促進イベント、公共交通のPR活動などを実施する案も盛り込まれた。
ホーチミン市は、広告事業を公共交通の新たな財源として再構築することで、市民のバス利用促進と財政負担の軽減を同時に実現したい考えである。




















