2022年のベトナムを各種のデータから振り返ってみよう。経済と貿易はかなり回復したが、製造業と観光業が少々心配。人口ボーナスはしばらく続きそうで、失業率も改善。映画はアメリカのアドベンチャー系が好き!
経済
世界に誇るGDP成長率8%を達成!
ベトナム統計総局の発表(推定値)によると、2022年の実質GDP(国内総生産)は8.02%! 前年の2.58%から急伸して2009年以降の最高値となった。第3四半期が13.7%と大きく貢献した。
業種別ではサービス業が10.0%と一番の伸びを見せ、そのうち卸売•小売業などは10.2%、新型コロナで大打撃を受けた宿泊・飲食サービスは40.6%と回復した。運輸•倉庫(11.9%)、金融•銀行•保険(9.0%)、情報通信(7.8%)も伸び率が高い。
また、鉱工業•建設業は7.8%で、うちトップが建設業の8.2%、製造•加工業は8.1%だった。農林水産業は3.4%で、トップは林業の6.1%、水産業が4.4と続いた。
国民1人当たりGDPは4110USD(約55万円)と、前年に比べて393USDの増加。税収もアップし、税務総局によると2022年は前年比8.5%増の1460兆VND(約8兆2000億円)と予測され、年間計画を24.3%上回った。
2022年に新規設立された企業は前年比27.1%増の14万8533社、一時休止の事業活動を再開した企業は同38.8%増の5万9835社。これらを併せた企業数は前年水準を30.3%上回った。
一方で、操業を休止させた企業は前年比34.3%増の7万3801社、清算手続きを待って事業を停止した企業は5.5%増の5万788社だった。
2019年を100とした2022年の消費者物価指数(推定値)は3.15%に留まる。4%以下を目指した政府目標は達成。ただ、12月の数値は全11分野中9分野が上昇して4.55%となり、3ヶ月連続で4%を上回っている。
2022年は経済全般の底上げが十分にできたと言えるが、良すぎた故に2023年への不安は残る。
製造業
回復基調だが今年はどうなる?
統計総局が発表した2015年を100とした2022年の鉱工業生産指数(推定値)は、前年比の7.8%増となった。製造業が8.0%、電力•ガスは7.0%、上下水道などは6.4%、鉱業が5.5%と伸びを支えた。
また、輸出の柱といえるコンピュータなどの電子機器は7.6%、履物は15.6%、繊維は3.4%と上昇した。自動車は12.7%、二輪車は12.3%と共に上昇しており、2022年の国内生産台数(推定値)でも自動車は前年比14.9%増の約44万台、二輪車は同9.9%増の332万台超となっている。
ただ、鉱工業生産指数は第1四半期が6.8%、第2四半期が9.8%、第3四半期が10.9%と右肩上がりが続いたが、第4四半期は3%とダウン。GDP成長率でも製造•加工業は第3四半期の11.58%から第4四半期は2.98と急減した。
S&Pグローバル社によると、2022年12月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は46.4。2022年10月まで13ヶ月連続で、好不況の基準値となる50を上回っていたが、2ヶ月連続で下回った。
2023年の製造業の動向には要注目だ。
貿易・投資
輸出入もFDIも経済を後押し
統計総局による推定値では、2022年通年の輸出額は前年同期比10.6%増の3718億5000万USD(約50兆2000億円)、輸入額は同8.4%増の3606億5000万USD(約48兆7000億円)で、貿易収支は112億USD(約1兆5000億円)の黒字となった。輸出入額は初めて7000億USD(約94兆5000億円)を超える見込みだ。
輸出額の品目別では「携帯電話・部品」の592億9234万USD(約8兆円)、輸入額では「コンピュータ・電子製品・部品」の820億7370万USD(約11兆円)がトップだった。
また、計画投資省海外投資局による2022年のFDI認可額(推定値)は、前年比11.0%減の277億1813万USD(約3兆8000億円)。国別のトップはシンガポールで、韓国、日本、中国、香港と続く。認可の地域別ではトップがホーチミン市、以下ビンズン省、クアンニン省、バクニン省の順となった。
2022年のFDI実行額(推定値)は前年比13.5%増の223億9600万USD(約3兆円)に増加し、新規認可案件数は17.1%増で2036件、認可額は18.4%減の124億4622万USD(約1兆7000億円)だった。
労働力
失業率は改善、人口は1億人に迫る
統計総局の発表では、2022年の15歳以上の労働力人口は5166万人で、前年比で110万人増加した。15歳以上の就業者は5057万人。産業別の就業者はサービス業が最も多くて1969万人(38.9%)、次が工業・建設で1697万人(33.6%)、農林水産業は1391万人(27.5%)だった。
2022年の失業率は2.32%で、前年比1.24ポイントの改善。失業率は都市部が2.79%、農村部が2.03%。15~24歳の若年層になると失業率は上がって7.72%、都市部9.70%、農村部6.68%だった。
賃金労働者の平均月給は前年比で99万2000VND増えて750万VND(約4万2000円)。最新の第4四半期の数値で平均月給は770万VND(約4万3000円)、男性労働者810万VND(約4万5000円)、女性労働者は710万VND(約4万円)だった。
また、保健省人口•家族計画局によると2022年のベトナムの人口は前年比0.97%増の9946万人。都市部の人口が全体の37.3%を占めて3709万人。合計特殊出生率は女性1人当たり2.1人と予想されている。若い労働力が豊富に揃うベトナムの優位性はしばらく続きそうだ。
外国人観光客
2023年は800万人を呼び込め!
統計総局の発表によると2022年の外国人訪問者数は366万1222人(推定値)で、前年比の23.3倍と大きく増加した。国別では1位が韓国(96万5366人)、2位がアメリカ(31万8171人)、3位がタイ(20万2246人)、日本は6位(17万4720人)だった。
しかし、新型コロナ前の2019年は1801万人が来越しており、回復率は20%ほど。2019年の1位は中国で観光客は何と580万6400人。それが2022年は12万4896人と約2%に下がった。
2019年に6位のロシアも64万6500人から3万9921人に激減。ウクライナ紛争の余波もあるだろうが、実は昨年11月のタイ訪問者数は10万人以上とベトナムの年間人数の3倍近い。VNExpressの記事によると、ロシア人の旅行1回当たりの支出(2019年)は平均1830USD(約24万円)で、日本人の2倍以上と上客だった。記事では直行便の不足や15日間の観光ビザが理由と述べている。
観光総局は2023年通年の目標として、海外観光客の訪問者数を800万人としており、各国での観光イベントへの参加や観光サービスの紹介を計画している。
映画ランキング
アメリカのアドベンチャーが好き!
2022年に最も興行収入の高かった映画は、トップ10中8本が外国映画だった。映画データサイトのBox Office Vietnamによると.、1位はスーパーヒーロー映画の『Doctor Strange 2』(米国)。興行収入は2000億VND(約11億2000万円)。2位はアニメのコメディ映画『Minions 2』(米国)で1990億VND(約11億1400万円)だった。
3位は昨年12月15日公開にも関わらず1870億VND(約10億5000万円)を叩き出した『Avatar 2』(米国)。1位、2位と同じく大ヒット映画の続編で、ベトナム史上最高の収益が予想されている。
4位に韓国映画の『6/45』が1810億VND(約10億1000万円)で入り、5位はスーパーヒーロー映画の第4続編『Thor: Love and Thunder』(米国)で1190億VND(約6億7000万円)だった。
10位以内のベトナム映画は2本。ベトナムの国民的音楽家である故チン・コン・ソンを描いた『Em Va Trinh』(彼女とチン)が6位(970億VND:約5億5000万円)、再会した仲間4人の友情がテーマの『Bay Ngot Ngao』(甘い罠)が8位(830億VND:約4億6000万円)だった。
検索キーワード
学習サイト、人気ドラマ、社会不安も
ベトナムで2022年に最も検索されたGoogleのキーワードは、「World Cup 2022」。これは順当だろうが、2位の「Olm」と6位の「Azota」はオンラインの学習サイト。新型コロナの影響が続いていたか。
3位の「Hen Ho Chon Cong So」(社内お見合い)と4位の「Big Mouth」(ビッグマウス)はどちらも韓国の人気ドラマだ。韓流ブームは音楽シーンでも健在で、Spotifyで2022年にベトナムで最も再生されたアーティストはBTS。最も再生されたアルバムの1、2、3、5位、最も再生された楽曲の1~3位もBTSだった。
国内ニュース編となると様相を変える。1位は「Gia xang hom nay」(今日のガソリン価格)。値上げと品薄の6月が思い出される。2位は甚大な被害を出した大型台風の「Bao Noru」(台風4号)。
3位は「Ukraine」(ウクライナ)、4位と5位は不動産業界の不正に関連した「SCB」(サイゴン商業銀行)と「Vsetgroup」。8位は「Sot xuat huyet」(デング熱)、10位は「Dau mua khi」(サル痘)で、ニュース検索には不安な社会情勢が反映されている。