2024年末以降、ホーチミン市ではAirbnbを通じた短期宿泊サービスの多くが「住宅の用途に適さない」として営業を停止させられている。これにより、多くのホストが予約済みの契約をキャンセルせざるを得ず、観光客にも混乱が生じている。
市当局は治安維持を目的とした措置と説明するが、背景には根本的な問題が存在する。それは、ベトナムにおいてAirbnbなどテクノロジーを基盤とする短期宿泊業の法的定義が明確に存在しないという制度の空白である。
“合法化できないなら禁止”という発想のリスク
現在、行政は「合法化できない業態は排除する」という最も簡便な方法を取っている。これにより、柔軟に観光業に参加しようとする市民のニーズが無視され、社会的資源の有効活用も妨げられている。シェアリングエコノミーは、本来、コスト削減と資産活用の効率化に寄与するモデルであるにもかかわらず、活用の道が閉ざされているのだ。
UberやGrabの初期と似た構図
Airbnb問題は、2014~2016年にUberやGrabが登場した当時の状況と重なる。当初は伝統的タクシー業界の反発を受け、規制強化や全面禁止が議論された。しかし、国家は段階的な合法化へと舵を切り、現在では都市交通に欠かせない存在となっている。
この経験が示すのは、適切な管理フレームワークを構築すれば、新しいサービスモデルも社会インフラの一部として機能し得るということである。
各国の“禁止しない”選択肢
韓国のソウルでは2015年、ホテル業界の反発を受けながらも、Airbnbを禁止せず「家族宿泊法」を制定し、登録制・期間制限・報告義務などを導入し、システム上で当局との情報連携を行う体制を築いた。
スペインのバルセロナでは宿泊ライセンス制度、地域ごとの宿泊人数制限、独自の観光税導入などを通じて調整を図っている。
シンガポールも全面開放はしていないが、すべての取引を税務当局に報告させるなど、法の下での透明な監視体制を重視している。
問題はAirbnbそのものではない──“管理能力”が鍵
Airbnbは単なる仲介プラットフォームに過ぎない。重要なのは、その利用に対応できる法的・技術的インフラを国家が用意できるかどうかである。新たなサービスモデルを拒むのではなく、制度と運用のアップデートが求められる。
提案される解決策
法的定義の明確化:短期宿泊を「テクノロジー型宿泊サービス」として明文化し、従来のホテル業とは切り離して規定する。
簡素な登録制度の設計:Airbnbで貸し出すには「宿泊登録コード」を取得し、営業期間の申告や定期的な安全基準の検査に応じる仕組みが求められる。
データ連携の推進:AirbnbやBookingなどの企業と連携協定を結び、ユーザー情報の共有や納税の管理を行う。
柔軟で透明な税制度の導入:宿泊回数や収益規模に応じた課税、プラットフォームからの自動徴税の仕組みなどで徴税漏れを防ぐ。
さらに、ホーチミン市、ダナン市、ニャチャン市など観光インフラの整った地域でのパイロット導入が提案されている。最終的には、「規制による排除」ではなく、「制度構築による統合と活用」こそが、デジタル経済時代の行政の在り方であるべきだ。
「禁止」から「管理」へ──思考の転換を急げ
デジタル経済は待ってくれない。今動かなければ、眠っている社会的資産は再び国外へ流出するだろう。創意工夫ある市民が機会を得られず、制度の欠如が経済的損失につながる。
ホストたちは“合法的に認めてくれさえすれば、堂々とサービスを提供できる”と訴える。国家は排除するのではなく、管理し、税収という形で恩恵を受けることも可能である。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN
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