前回、ベトナム組織における変化の「起こし方」を解説しました。しかし、変化を起こしても、すぐ元に戻ることは少なくありません。定着の鍵を握るベトナム人の管理職から、反発を受けたという話もよく聞きます。
背景には、職務定義を重視する文化があります。業務範囲は明確な一方、「組織マネジメント」までを自身の役割と捉える管理職はまだ少数派です。
この状況で変化の定着を促すには、「モデルケースの創出」と「組織全体への波及」が重要です。成功事例となる部署が生まれると、その変化に影響を受け、行動を変える人が増えます。変化が広がれば、反発していた人も変化の波に巻き込まれ、組織全体が変わっていきます。
実際、ベトナムのあるIT企業ではエンゲージメントサーベイを起点に組織変革に取り組んだ際、「この結果は間違いだ」と反発する管理職がいました。しかし、別の管理職が半年間で、組織と事業の双方の成果を高めた姿を見て、その管理職は危機感を抱き、積極的に変革に取り組むようになりました。以後、「成果を出すには組織マネジメントが必要だ」と認識が変わり、今では他の管理職を巻き込みながら全社的な変革を先導しています。
組織変革には「臨界点」があります。新たな取り組みが組織の1/3以上に受け入れられると、同調圧力がポジティブに働き、急速に組織全体に浸透します。定着には、臨界点を超えて組織全体に変化を広げることがポイントです。
最終回となる次回は、定着の先にある「組織力の底上げ」について解説します。


























