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ベトナムニュース【法律】企業は昇給時に労働者に有利な規定を廃止できない?

(C) VNEXPRESS

労働・傷病兵・社会省と労働総同盟は、企業に対して訓練を受けた従業員には地域の最低賃金から少なくとも7%以上高い給与を支払うという規定など、労働者に有利な条件を引き続き実施するように求めた。

6月17日に労働・傷病兵・社会省と労働総同盟は7月1日以降の最低賃金の調整に関する政府議定38号の実施に関するガイドライン文書を発行した。

それによると、雇用者は適切な賃金を調整するにあたり、労働契約書、団体労働協約、およびその他の全ての関連規定を参照する必要がある。また企業は、労働法の規定に基づき定められた労働者の残業、夜間労働、現物支給、福利厚生などに関する規定を削除したり、削減してはならないとされている。

つまり訓練を受けた労働者は最低賃金の少なくとも7%以上高い給与が支払われるなど現行の労働契約や労働協約の規定が議定38号の規定よりも労働者に有利な場合、その規定を継続する必要があるとされている。ただし、労使間で別の内容の合意がなされた場合は、その限りではない。

労働・傷病兵・社会省の労使関係調整局のグエン・フイ・フン局長は、企業が労働契約書または、労働協約によって訓練を受けた労働者に対して最低賃金から少なくとも7%以上高い給与を支払うとの規定を定めている場合、その規定は引き続き実施されると説明した。

原則として、給与の改定が行われる際には雇用主は、労働者にその内容を明確に通知する必要があり、労働契約書及び、労働協約または、就業規則においてその内容を記載しなければならない。しかし、実際には多くの企業で従業員に給与の改定が通知されても、労働契約にその内容が記載がされていないケースが存在する。

フン局長によると、この状況は賃金に関する労働法の規定に違反しており、直ちに是正する必要がある。今後、当局は監査によって規定を遵守していない企業を処分するとしたうえで、フン局長は一方で国内にある100万社近い企業を全て監査することは実際には実現不可能であるとも認めている。

そのため、労働者の権利を守るための昇給交渉は、企業の労働組合の交渉力に大きく依存し、企業との団体交渉に労働者が参加することが自らの利益を守るために必要になってくる。

「原則的には、労働契約書や労働協約による労働者へ有利な規定は、継続する必要があります。」とフン局長は話し、今回のガイドラインは、労働法の規定よりも労働者にとって有利な条件獲得を目指した労労使交渉において、各レベルの労働組合の交渉能力を強化することを目的としている強調した。もし、交渉過程で問題が発生した場合は、労働・傷病兵・社会省へ報告すれば、すぐに指導と処理をおこなうとしている。

議定38号は、7月1日以降、地域の最低賃金を現行の金額から6%アップに相当する18万~26万VND引き上げると規定している。これによって地域Ⅰの最低賃金は468万VND、地域Ⅱが416万VND、地域Ⅲが364万VND、地域Ⅳが325万VNDとなる。これに伴い、地域の最低時給もそれぞれ、地域Ⅰが2万2500VND、地域Ⅱが2万VND、地域Ⅲが1万7500VND、地域Ⅳが1万5600VNDと規定された。

一方で、新たな議定では、これまでの賃金に関する議定では規定されていた企業は訓練を受けた労働者に対して地域の最低賃金から少なくとも7%以上高い給与を支払わなければならないとの規定は削除され、規定された最低賃金以上の給与を支払うことのみが義務付けられた。

この7%の規定が廃止されたことで、多くの企業の労働組合が7月1日以降に従業員の給与が引き上げられないことを不安視している。なぜなら、多くの企業では、既に新たに規定される最低賃金を上回る給与体系が設定されているからだ。上記の規定の廃止によって、企業がガソリン価格の高騰や原材料費の値上げに伴いコストカットを進めている中で、労働組合は、企業と給与交渉をおこなううえでの法的根拠を失ってしまった。

弁護士のファン・タイン・フー氏(ホーチミン市弁護士協会所属)によると、議定38号には、もし企業と労働者双方の合意によりこの議定より労働者に有利な規定が労働契約書や労働協約で規定されている場合、引き続き効力を有すると規定されている。しかしながら、もし労働契約書または、労働協約内に”7%以上高い給料を支払う”という規定が記載されていない場合、労働組合は企業との昇給交渉において苦しい立場に立たされる。当然のことながら、労働組合の交渉の結果、企業と労働者が地域の最低賃金で合意した場合、議定38号に反することにはならない。

「しかし、企業は、労働者の専門知識や労働生産性を向上させることを奨励するために訓練を受けた労働者への適切な給与体系を規定しておく必要があります。」とフー氏は強調する。

なお、議定38号では、7%の規定が削除されているが、2017年の社会保険に関する決定595号には「訓練を受けた労働者の社会保険対象給与額は、地域の最低賃金から少なくとも7%以上高くなければならない」との規定があり、この決定は依然として有効なため、給与交渉の根拠になる得るとの意見も存在する。しかし、フー氏によると決定595号は、正式な法令文書ではなくあくまで社会保険徴収プロセスのガイドラインに過ぎない。一方で政府の議定38号は、正式な法律文書であり、もし決定595号の内容が議定38号に反する場合、その内容は7月1日以降無効となる。

5月20から6月5日までに議定38号草案変への意見聴取が行われた際、一部の有識者からは、労働者の権利を守るために、これまでと同様に訓練を受けた労働者は、地域の最低賃金から少なくとも7%以上高い給与が支払われるという規定を維持すべきとの意見が出された。しかし、労働・傷病兵・社会省は2012年の労働法の規定で、政府は企業の賃金テーブルと昇給について原則のみを規定するとしていると指摘した。

2013年に発行された議定49号は、企業が給与テーブルや昇給の原則を作成する際の必要最低限の内容を定めている。労働・傷病兵・社会省は、このような規定は、以前のように労働者の交渉能力が限られている状況でのみ適切であると説明する。しかし現在の状況では、このような規定は”企業の賃金制度への直接介入”と考えられ、市場経済の原則に合わないと判断されている。

2019年の労働法では、政府が企業の給与テーブルを作成することについての規定がもはや存在せず、労働の生産性と成果に応じて当事者同士の交渉によって給与を決定すべきとしている。そのため、政府は、単純労働をおこなう労働者の保護を目的とした最低賃金の規定のみをおこなっている。訓練を受けた労働者のようにそれ以上の給与体系の決定に関して政府は、当事者間の交渉に任せたい考えだ。

出典:17/06/2022 VNEXPRESS
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