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【経済】中断されたニントゥアン原子力発電所開発プロジェクトのその後

(C) VNEXPRESS

長年の検討の末、ベトナムは原子力発電政策を承認したが、7年間の準備といくつかの付帯プロジェクトの展開の後、ニントゥアン省の原子力発電所プロジェクトは中断された。

原子力発電所開発プロジェクトは、1970年代から検討されてきた。その後、ベトナムの経済と電力需要が急激に拡大する中で、ベトナム政府は、国のエネルギー安全保障を目的として、1996年から2009年の段階まで、この発電方法を真剣に研究した。

プロジェクトが立案された2008年の時点で、政府は今後の年間経済成長率を平均9~10%と予測し、電力需要が17~20%増加すると試算していた。このような急激な電力需要の増加に対して、既存の火力発電所と水力発電所以外に、経済効率が良く安定した新たな発電エネルギーが必要とされた。

ニントゥアン省原子力発電所開発プロジェクトへの投資方針は、2009年末に政府が国会に提出したもので、ニントゥアン省のトゥアンナム県とニンハイ県にニントゥアン1とニントゥアン2の2か所の原子力発電所を建設し、総発電量は4000MWとされていた。当初の総投資額は200兆VNDだった。

原子力発電所建設予定地の土地の調査は、非常に重要な課題とされ、慎重に検討された。8か所の候補地で現地調査が実施され、ニントゥアン省の2つの地区が原子力発電所建設予定地として承認された。この地域は、事前調査によって潜在能力があり、安全とされ、他の場所の選択肢はないとまで考えられていた。

このプロジェクトの投資とインフラ整備の準備作業は、政府、関係省庁、地方自治体、ベトナム電力公社(EVN)によってその後6年間実施され、、ニントゥアン省沿岸道路建設やタンミーダム建設などが進められた。

7年間の準備期間の末、2016年11月に国会はニントゥアン省原子力発電所開発プロジェクトの中断を決めた。中断の理由について政府は、技術的な問題や安全性の問題ではなく、プロジェクトを承認した当時の予測に対してベトナムのマクロ経済の発展状況には多くの変化があったことが理由だと説明している。当時、ベトナムはインフラ整備と社会経済発展の原動力となる重要プロジェクトへの投資に巨額の資金を必要としていた。

「原子力発電所開発プロジェクトの中断は、プロジェクトの実現可能性が低くなったことが理由です。」と国会の科学技術及び環境委員会の元副委員長であったレ・ホン・ティン氏は、国会がプロジェクトの中断を決定したときの記者会見で説明した。

ティン氏によれば、政府が国会に原子力発電所開発プロジェクトを提案した時点では、将来的な経済成長率は非常に高い数字が予測されていたが、2016年時点で、経済成長率は6~7%程度となっており、当初予測を大幅に下回っていた。2020年の電力需要の伸びも、当初の半分程度であり、その後10~15年では1/3程度になるとみられている。

原子力発電所プロジェクトが中止されたもう一つの理由は、このプロジェクトのために新たな借り入れをすると、公的債務が上限を超える可能性があったからだ。

プロジェクトの中断が決定される前に、ベトナム電力公社(EVN)とニントゥアン省は、事前プロジェクトとして7つのプロジェクトに2兆3000億VNDを投資していた。その中には、フィージビリティスタディ報告書、電力供給システムと建設工事用インフラ整備、立ち退き住民の移住先調査、建設予定地の立ち退き補償、プロジェクトの付帯施設の建設工事などが含まれていた。また450人近い学生と技術者が原子力発電施設の専門技術に関してロシアと日本で研修を受けていた。

原子力発電所開発プロジェクトの中断後に政府は、ニントゥアン省の発展に向けた支援政策を承認した。その中には、ニントゥアン省での再生可能エネルギー(風力発電、太陽光発電)施設集積プロジェクトや、バックアイ水力発電所投資プロジェクト、カナの液化天然ガス発電プロジェクトが含まれている。

ニントゥアン省は、2017年11月の政府決定により2020年末まで太陽光発電プロジェクトによる2000MWの発電量に対して、1kwあたり9.35セントの優遇価格が適用されている。

再生可能エネルギーへのシフトによってニントゥアン省は過去数年間に多くの投資を誘致してきた。それまでこの地域は、一人あたりの年間所得が全国平均を下回っていたが、原子力発電所開発プロジェクトの中止から5年後の2020年までに毎年平均10.2%の経済成長を遂げ、一人当たりの年間所得が6000万VNDを超えるまでになった。2021年にニントゥアン省の予算規模は3兆9070億VNDとなり、2015年の2.2倍近くに増加した。

しかし、生産安定化と住宅地開発プロジェクトの承認が遅れており、原子力発電所開発プロジェクト実施予定地だった地域の住民は依然として多くの困難に直面している。

ニントゥアン1原子力発電所建設予定地は、政府によって再生可能エネルギー開発地域に調整された。一方でニントゥアン2原子力発電所建設予定地は、そのままの状態で残されている。なぜなら、商工省の決定によるニントゥアン省原子力発電所建設プロジェクト建設予定地は、依然としてその効力を失っていないからだ。

ニントゥアン省選出議員代表団のダン・ティ・ミー・フーン副団長は、この地域の住民が土地の使用を制限されたり、売買や譲渡が認められなくなることを不安視している。新たな投資が受けられない公共施設は、深刻な劣化被害を起こしている。また、土地の所有者が亡くなっても土地を次の世代に相続させることが出来ないケースも発生している。

ニントゥアン省原子力発電所開発プロジェクトは、2016年から中断されている。中断決定から5年が経過し、国会の経済委員会は、次のエネルギー開発段階として原子力発電の研究を再開する提案をおこなった。委員会では、ニントゥアン1とニントゥアン2の原子力発電所建設予定地について政府から正式な決定が出るまでは現状維持を継続するように提案している。

出典:04/06/2022 VNEXPRESS
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