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ベトナムビジネス情報Vol117|
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第19回目となる繊維・縫製関連の展示会、VTG(Vietnam Int’l Textile & Garment Industry) 2019が11月20~23日にホーチミン市のSECCで開催。ベトナムは中国、インドに次ぐ世界の縫製工場であり、最新事情に注目が集まった。

生地よりマシンに来場者

 VTGは繊維やアパレル生産の総合的な展示会であり、併催のVFM(Vietnam Int’l Footwear Machinery and Material)と共にホールA1とA2で、生地など素材系のVitaTex(Vietnam Int’l Textile and Apparel Accessories)はホールDとEで開催された。12の国と地域から500以上のユニットが参加した。

 VTGにはいくつかの国際パビリオンがあり、パープルのイメージカラーで統一した韓国パビリオンは生地の展示が多くて、ファッショナブルなイメージ。他の展示会のように中国や台湾など中華系企業も相変わらず多いが、何より目立ったのはインドパビリオンだ。出展の常連企業に聞いても、「こんなことは初めて」と言うほどの数多く、生地などの他にインド原産らしい糸の展示が多かった。

 VFMのエリアは靴を作る加工機などが展示され、出展は中華系企業が中心。VitaTexも中華系がほとんどで、展示は生地が8割以上で糸やボタンが少々。生地など素材系は一目で他社との差別化が難しそうで、来訪者が少なく感じた。逆に人が集まっていたのがマシン系の展示も多いVTGであり、今回はここを紹介したい。

 VTGには小さなブースも多いが、大型の刺繍機やアパレル用大型プリンターはそのサイズもあって圧巻。針が動く刺繍機を下から覗き込んだり、仕上がりをチェックする来場者が少なくなかった。そんな高速刺繍機をホールの中心近くで並べていたのが、大手刺繍機メーカーのTAJIMAグループだ。「毎年出ており、15回は出展しているはず」という。

シェア誇る日本製の刺繍機

 同社は1991年に進出し、ベトナムでのシェアは6割以上と見込む。刺繍機の品質はもとより、早期にベトナム市場に参入したこと、アフターサービス等を行う直営サービスセンターを重要拠点と位置付け、いち早く体制を整えたことを理由と考えている。

 展示したのはコンピュータ制御による高速刺繍機のトップモデル。刺繍機が1台のマシンを単頭機、複数並んだものを多頭機といい、これは12頭機のマシンだ。他にも20頭機やコンパクトな単頭機などを豊富に揃えた。

「多頭機はベトナムで年間に100台程度、単頭機は20~30台売れます。縫製工場は設備投資を続けており、新規案件も買替え需要もあります。VTGの開催4日間で7台くらい売れると思います」

 顧客で多いのは一番がベトナムの縫製工場などで、国内向けと輸出用。2番目は中国、台湾、香港、韓国などの外資系企業で、ほぼ100%輸出用。その次に日系企業と続く。刺繍は一般的なインナーやアウターの他にスポーツウェアでよく使われ、帽子や靴など身に付ける日用品にも幅広い需要があるという。

 ただ、中国企業のコピーマシンがあり、値段は3分の1程度とかなり安価。購入する工場もあるが、品質、仕上がり、生産性などの点から「戻ってくる」顧客も多いという。

「バイヤーが仕上がりを見て”No”を出すこともあります。競合として心配はしていません」

時代を先取りする展示品

 アパレル産業向けCAD/CAMシステムの販売、導入、保守を行うVJC TECHNOLOGY。設立は2013年だがアパレル関連業務では10年以上の経験があり、5年ほど前からはブラザーの代理店としてガーメントプリンターなどを取り扱っている。その場で服に印刷できる大型のプリンターで、来場者は興味深そうに見つめていた。

 アパレルショップで服を選んでその場で印刷したり、Webサイトで注文を受けて販売するなども可能。スマホの中の写真を印刷することもできる。

「家族の写真を使って、お父さんはLサイズのVネック、お母さんはMサイズの丸首、子どもはSサイズの長袖Tシャツといったオーダーもできますね」

 難点はプリンターのインクが高価なことで、販売価格が上がってしまう。そこで尻込みする人もいるようだが、むしろ高く売ったらよいとアドバイスしている。

「少し前のベトナム人なら、『皆と同じファッションで高価なもの』を欲しがりましたが、今では『自分だけのユニークな一着』を求めています。価値があるのですから値段を高くしてもいいと思います」

 実際、代理店を始めて3年ほどはあまり売れなかったが、最近は伸び始めて、小型の刺繍機と一緒に提案しているそうだ。CAD/CAMの顧客は大手の工場がメインだが、ガーメントプリンターは小規模小売店やベンチャーのWebショップなどが多い。

 また、洗濯の注意表示などを記した小さな「ケアラベル」の装置も展示。大量生産向けではなく、自社で内製する場合を想定している。RFIDのタグを作る装置も展示。手間のかかるバーコードの読み取りではなく、籠の中に何枚も入れたままでレジ計算される。

「普及前で時期尚早と思いましたが、始まったら一気に広がると感じて出展しました。当たり前になってから出すのでは遅いですから」

 縫製系の展示会には10年ほど出ており、出展者同士の情報交換も魅力と語る。

クリーニング関連の共同出展

 ちょっと珍しい展示がワイエイシイマシナリー株式会社で、クリーニング店が使う複数の専用マシン。クリーニング専門の展示会がないため、VTGに初めて参加した。展示品はシャツなどのアイロンの自動機で、襟と袖のカラーカフスプレス、腕用のスリーブプレス、シャツ全体のボディプレスの3台と、ジャケット用のスチームアイロンを展示。

 日本でもなかなか見る機会がないが、スチームで襟がパリッと伸びたり、腕の部分のしわがなくなったり、シャツ全体をスチームでプレスする様子に人が集まっていた。日本、韓国、タイなどではこうしたマシンが既に導入されているという。

「ベトナムの人件費は安くても上昇しており、現在は機械化への過渡期だと感じています。2015年から代理店経由で販売しており、この2年くらいで売れ始めました」

 個人経営の店ではなく大手のクリーニング店がターゲット。来場者からの反応は良いが、物珍しさもあるだろうと見ていた。

 同じブースにはワイエイシイマシナリーを含めて5社の日系企業が出展。同社が主催する形で、付き合いのある企業が参加した。そのうちの2社を紹介すると、最初はカミナガ販売株式会社。初出展で、業務用のシミ抜き剤を実演していた。

「ハノイの日系クリーニング店で使われていて、ベトナム人の間では『落とせないシミは日系へ』と言われているそうです。ニーズを見込んで出展しました」

 白い布にボールペンでインクを付けて、シミ抜き剤を霧吹きし、手で布をこすり合わせるとインクが消えていく。効果がすぐにわかるためか、来場者の反応は良いとのこと。

 もう1社を紹介するとMNB TECHNOLOGYのマイクロバブル発生装置。1cc中に1億個の微細な泡を作り出すそうで、シャツの漂白以外にも用途は多彩。養殖場でのエビやウナギの生育促進、美容、消臭、工作機械の研削液の腐敗防止などにも効果があるそうだ。

多彩に広がる関連分野

 マシンや資材だけでなく、サービスの出展もあった。ホーチミン市とハイフォンに工場を持つKUWAHARA VIETNAMは、衣料品や雑貨などの検品、修整、加工が業務。誤って含まれる針などの検品は一般的だが、衣料品の汚れ、穴、傷などのリペアも行う。布地に糸が抜けている部分があればそこに新しい糸を通すなどもあり、来場者からは「こんなことできるのか」という声も。

「日本で弊社の認知度は高いのですが、ベトナムでの知名度を高めようと初めて出展しました。ベトナム人だけでなく、中国人や韓国人の来場者とも会えています」

 パンフレットは韓国語版や中国語版も用意し、修整前後の布地を並べて作業内容を展示。同社の顧客には日系企業が多く、ベトナム市場としてはこれからだろうと読む。

 KURABO INDUSTRIESはクラボウ(倉敷紡績株式会社)の染料自動調液装置を展示。染色工場のラボで使う装置で、染色液の配合を自動で計算する。3回目の出展だが、こうした装置の展示は初めてだそうだ。

「今年からベトナムに拠点を出しており、ケミカルメーカーなどと共同で展開したいと考えています。ただ、染色の加工業は少なく、今回は市場調査を兼ねて出展しました」

 ベトナムには毎年4月に開催されるSaigon Texなど、繊維や縫製関連の展示会がある。製造業全般を対象としたMTAやMETALEXに比べると来場者を選ぶが、縫製業は輸出の柱の一つであり、一度覗いてみても損はしない。