中小事業者が現金決済へシフト 客離れの懸念も
2025年6月1日から、年間売上10億VND(約600万円)以上の個人・家族経営者に対し、電子請求書の発行と税務システムとの連携が義務化された。これにより、飲食店などの小規模事業者の一部がキャッシュレス決済の受け入れを停止し、現金払いのみを求めるケースが急増している。
ホーチミン市在住のAさんは、普段通っていたブン(米麺)店が突然の「現金払いのみ」に切り替わり、QRコードによる支払いができなくなったと話す。店主は「オンライン送金すると税金が色々とかかってしまう」と話し、キャッシュレス決済が税務当局に把握されることで負担が増えることを懸念している様子だった。
税務透明化に向けた制度変更が「逆効果」に?
これまで小規模店舗には「定額課税」制度が適用されていたが、新制度では実際の売上に基づく課税が行われる。これに伴い、店舗はPOSレジや請求書発行ソフトなどの初期投資が必要となり、「機器の導入費用」「納税負担額増加」「申告ミスへの罰則」などを懸念する声が高まっている。
その結果、キャッシュレス決済を一時停止し、現金取引に戻る動きが一部で見られる。しかし、こうした対応は「現代的な支払い方法に慣れた顧客の離反を招く可能性が高い」と専門家は指摘している。
顧客も理解、行政も支援を
一方で、制度変更の意図である税務の透明性向上と公平な課税への理解は浸透しつつある。定額課税制度では実際の売上にかかわらず一律の税額となるため、売上が高い店舗が優遇される構造になっていた。このため、実売上に基づく課税制度の導入は、徴税の公正化と効率化の観点からも避けられない流れである。
ただし、小規模事業者が新制度に適応するためには、行政からの技術支援や段階的導入措置が必要だとの意見も多い。制度導入直後の過度な制裁は、かえって混乱と反発を招き、デジタル化推進にも逆行しかねない。
現在、多くの消費者はキャッシュレス決済に慣れており、対応していない店には行かないという選択を取ることも珍しくない。その結果、節税目的で現金決済を強要する店舗はかえって売上を落とす可能性が高く、「得より損が多い」状況に陥るリスクもある。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN
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