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ベトナム、マンションにEV専用駐車・充電設備を義務化 2026年12月から新規則適用

ベトナムのマンションの駐車場に設置されたEV充電設備
(C)THANH NIEN

ベトナム建設省は、マンションにおける電気自動車(EV)および電動バイクの駐車・充電設備に関する新たな規則を定めた通達第31号(31/2026/TT-BXD)を公布した。

2026年12月15日以降、すべてのマンションはEV専用の駐車エリアを設置し、ガソリン車や電動バイク、自転車用エリアと分離しなければならない。

今回の規則は、EV普及に伴う火災リスクへの対応と、電動交通手段の利用拡大を両立させることを目的としている。

リチウムイオン電池火災を想定した厳格な安全基準

新規則では、リチウムイオン電池から発生する火災の延焼リスクを抑えるため、異なる車種の駐車区画間に最低2メートルの安全距離を確保することを求めている。

スペースの制約で距離を確保できない場合は、高さ2メートル以上の不燃性壁または防火パーティションの設置が義務付けられる。

また、EV充電設備は屋外または地上階への設置が推奨される。

地下に設置する場合でも、半地下または地下1階までに限定され、十分な換気設備と緊急時に車両を速やかに移動・隔離できる仕組みを備えなければならない。

地下駐車場の充電設備数にも上限

通達では、地下駐車場の各区画に設置できる充電設備数も制限した。

  • EV用充電設備:最大25台分
  • 電動バイク用充電設備:最大50台分

とし、充電出力も22kW以下に制限する。

建物内の電力網への過負荷を防ぐ狙いがある。

さらに、充電エリアには24時間監視体制が義務付けられる。

監視カメラは中央管制室へ常時映像を送信し、自動火災報知設備に加え、一酸化炭素やフッ化水素などバッテリー火災時に発生する有毒ガスを検知する専用センサーの設置も求められる。

マンションで広がった「EV締め出し問題」

今回の規則制定の背景には、2025年から2026年にかけてハノイ市やホーチミン市で発生した「EV締め出し問題」がある。

当時、一部のマンション管理組合や管理会社は火災リスクを理由にEVや電動バイクの駐車・充電を禁止した。

法的な基準が明確でなかったため、

  • 正規に購入したEVが駐車場利用を拒否される
  • 住民がバッテリーを取り外して部屋で充電する
  • 共用部分以外での充電が増加する

といった混乱が各地で発生した。

弁護士や専門家からは、管理組合が住民の財産権を侵害しているとの批判も上がっていた。

管理会社側にも現実的な課題

一方で、管理会社やデベロッパー側にも事情がある。

多くの既存マンションはEV普及以前に設計されたため、

  • 電力設備容量不足
  • 変電設備の老朽化
  • 地下駐車場の防火対策不足

といった問題を抱えている。

防火壁の設置や専用消火設備の導入、監視システムの構築には多額の費用が必要となる。

その費用を修繕積立金から支出できるのかなど、実務面での課題も残されている。

「EV普及の障害ではなく安全な土台」

専門家は今回の規則をEV普及の障害ではなく、安全な普及を支える基盤と評価している。

ホーチミン市フンブオン大学のチャン・ベト・アイン副学長は、「EV化は不可逆的な流れであり、安全基準が先行して整備されるべきだ」と指摘した。

中国ではEV普及の過程で年間数千件規模の車両・バッテリー火災が発生し、その後、充電設備や防火基準が強化された経緯がある。

専門家は、ベトナムは後発国としての利点を生かし、事故発生後ではなく事前にリスク管理を進めるべきだとしている。

グリーン交通政策を支える制度整備へ

ホーチミン市開発研究院のレ・タイン・ハイ氏は、新規則がEV利用者とマンション管理側の長年の対立解消につながると評価する。

同氏によると、ホーチミン市で検討されている約40万台のガソリンバイクから電動バイクへの転換計画でも、充電環境の不足が最大の課題だった。

新規則により、条件を満たした地下駐車場での充電が制度的に認められる一方、厳格な防火・監視基準も義務付けられる。

ベトナム政府が掲げるネットゼロ目標や交通の電動化政策を進めるうえで、今回の制度整備は重要な転換点となりそうだ。

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