ベトナムが締結する自由貿易協定(FTA)が、輸出拡大の大きな原動力となっている。特にEUとの自由貿易協定(EVFTA)は2026年8月で発効から6年を迎え、この期間のEUとの貿易総額は3,838億USDに達した。
企業はEVFTAに加え、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)や地域的な包括的経済連携(RCEP)なども活用し、市場開拓や競争力強化を進めている。
EVFTA発効後6年間で対EU貿易が急拡大
ベトナム財政省税関局および統計局によると、1995年から2026年6月までのベトナムとEUの累計貿易額は9,000億USDを突破した。
このうちEVFTA発効後の約6年間だけで3,838億USDとなり、累計貿易額の約43%を占めている。
2026年上半期だけでも双方の貿易額は414億USDとなり、
- ベトナムからEUへの輸出:318億USD
- EUからベトナムへの輸入:97億USD
となった。
その結果、ベトナムの対EU貿易黒字は上半期だけで220億USDとなり、EVFTA発効前の2019年通年(217億USD)をすでに上回る過去最高水準を記録した。
欧州企業もFTAの恩恵を実感
欧州商工会議所(EuroCham)の調査では、
- 欧州企業の50%がEVFTAによる関税優遇の恩恵を受けた
- 66%が5~30%のコスト削減を実現 した
と回答した。
また、一部企業ではベトナムとEU間の取引の80%以上が優遇関税率の対象となり、製品価格を5~15%引き下げることで競争力向上につながったとしている。
CPTPPやRCEPも輸出拡大を後押し
恩恵はEVFTAだけではない。
ベトナム企業は、
- CPTPP
- RCEP
- ベトナム・韓国FTA(VKFTA)
- ASEAN関連FTA
なども積極的に活用している。
水産加工会社BASEAFOODは、日本とのFTAにより中国を経由せず日本へ直接輸出できるようになり、日本向け売上は30~40%増加したという。
また、
- ミンフーグループはCPTPPを活用しカナダ、日本、オーストラリア向けエビ輸出を拡大
- ビンホアン社はカナダなどCPTPP加盟国でパンガシウスの販売を拡大
- ロックチョイ社はコメ輸出を拡大
- ビナミルク社は韓国やASEAN市場で乳製品輸出を強化
- ホアファット社はRCEPを活用し鉄鋼輸出を拡大
するなど、多くの業界でFTA活用が進んでいる。
繊維業界でも、ベトナム繊維・衣料グループ(Vinatex)がカナダやオーストラリア、ニュージーランド向け受注を増やす一方、原産地規則に対応するため紡績から染色までのサプライチェーン整備を進めている。
関税だけではないFTAの価値
専門家は、FTAの効果は単なる関税引き下げにとどまらないと指摘する。
原産地規則や品質基準への対応を通じて企業の競争力が向上し、生産体制の高度化やサプライチェーンへの組み込みが進んでいるという。
一方で、その恩恵には企業間で差もある。
大企業は情報収集力や技術力を生かしてFTAを積極的に活用しているが、中小企業では制度への理解不足や人材・資金面の制約から十分に活用できていないケースも少なくない。
非関税障壁への対応が今後の課題
水産業界では、FTAの活用余地は依然として大きいものの、EUによるIUU(違法・無報告・無規制漁業)問題に伴う「イエローカード」などの非関税障壁が輸出拡大の妨げになっている。
業界団体は、政府に対し非関税障壁の緩和や関税割当(TRQ)の拡充に向けた交渉を進めるよう求めている。
FTAはベトナム経済の競争力強化へ
専門家は、FTAは輸出拡大だけでなく、ベトナム経済全体の構造改革を促す重要な政策でもあると評価する。
各協定を効果的に活用できれば、高付加価値投資の誘致や生産能力の向上、国際競争力の強化につながる可能性がある。
その一方で、FTAの効果を最大限引き出すには、企業自らが経営戦略を見直し、技術力や品質管理、原産地規則への対応力を高めることが不可欠となりそうだ。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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