ベトナムの港湾が国際的な存在感を急速に高めている。ホーチミン市、ハイフォン、カイメップの主要港は世界のコンテナ港ランキングで上位に入り、ベトナムはかつての「積み替えを必要とする港湾国」から、海外の主要市場へ直接貨物を運ぶ国際物流拠点へと変わりつつある。
背景には、製造業の集積、海外直接投資(FDI)の拡大に加え、カイメップ・チーバイやハイフォン・ラックフェンなど大型船に対応できる深水港の整備がある。
主要3港が世界上位に
英国の海運専門誌「Lloyd’s List」が発表した世界のコンテナ取扱量上位100港では、ベトナムからホーチミン市、ハイフォン、カイメップの3港湾群がランクインした。
ホーチミン市の港湾群は、コンテナ取扱量が約890万TEUとなり、世界22位を維持しており、取扱量は前年から14.5%増加している。
ハイフォンは約820万TEUを取り扱い、前年から3ランクアップして26位となった。取扱量は16%を超える伸びを記録した。
カイメップは31位を維持した。南部経済圏における国際物流の玄関口として、長距離航路の拠点となっている。
3港湾群が同ランキングにそろって入るのは6年連続である。
また、海運分析会社Alphalinerが公表した上半期のデータでも、3港湾群はいずれも世界の主要港として存在感を示した。
ホーチミン市は世界19位、ハイフォンは25位、カイメップは29位となり、3港湾群が世界30位以内に入った。
かつてはシンガポールなどで積み替え
現在の姿からは想像しにくいが、ベトナムの港湾インフラは2015年ごろまで、国際物流の大型拠点とは言い難かった。
ホーチミン市のカットライ地区やハイフォンのカム川沿いなどにある港は、水深などの制約から大型の国際コンテナ船を直接受け入れる能力に限界があった。
そのため、米国や欧州向けの貨物はシンガポールや香港など域内の大型港で積み替える必要があり、輸送に時間とコストがかかっていた。
こうした構造を大きく変えたのが、深水港の整備である。
カイメップとラックフェンが転換点に
2015~2020年にかけて、南部ではカイメップ・チーバイの深水港が本格的に機能し始めた。
大型コンテナ船を受け入れられるようになったことで、米国の東海岸・西海岸などへの直行航路が開設され、従来のように域内の港で積み替える必要性が低下した。
北部でも2018年、ハイフォンのラックフェンにある国際コンテナターミナルが開業。大型コンテナ船による大洋横断航路を直接受け入れる体制が整った。
これにより、ベトナムは南北それぞれで大型船に対応する国際港湾を持つようになった。
「China+1」が港湾成長を後押し
港湾の成長を支えている最大の要因の一つが、製造業のベトナムへの移転である。
多国籍企業が「China+1」戦略を進めるなか、ベトナムへのFDIが増加。電子機器、衣料品、農産物などの輸出入貨物が増え、コンテナ輸送の需要を押し上げている。
さらに、大型船が直接寄港できるようになったことで、海運会社にとってもベトナムを航路に組み込むメリットが高まった。
海運業界では、主要な船会社連合によるベトナムへの直接寄港も増えており、ベトナムは東南アジアの海上輸送ネットワークにおける重要な寄港地となっている。
物流コスト削減が輸出競争力を高める
ベトナム海事代理店・ブローカー・サービス協会(VISABA)のファム・クオック・ロン会長は、深水港の整備によって、ベトナム企業が得られるメリットは大きいと指摘する。
従来、シンガポールや香港などで積み替えていた場合、輸送に3~5日程度余分に時間がかかり、追加のコストも発生していた。
大型船がベトナムの港から直接遠距離航路に入ることができれば、こうしたコストを削減できる。
特に農産物、繊維、電子機器など輸出競争の激しい製品にとって、物流コストの削減は国際競争力の向上に直結する。
港湾だけでなく「海洋経済圏」へ
今後の課題は、港そのものの規模を拡大することだけではない。
ベトナムでは、港湾と物流、自由貿易区(FTZ)、国際金融センター(IFC)、内陸コンテナデポ(ICD)などを組み合わせた経済圏の形成が進められている。
港湾が成長すれば、船舶への燃料供給、修理・造船、海上保険、貿易金融、倉庫など関連サービスへの需要も生まれる。
つまり、港湾は単なる「貨物の出入口」ではなく、周辺に新たな産業や金融サービスを集積させる拠点になり得る。
製造業の投資先を選ぶ多国籍企業にとっても、米国や欧州へ直接つながる物流網を持つことは重要な判断材料となる。
港湾インフラの強化が、製造業やハイテク産業への投資を呼び込む効果も期待されている。
カンザー国際港が次の焦点に
今後のベトナム南部の物流を考えるうえで、注目されるのがホーチミン市カンザーで計画されている国際トランシップ港である。
専門家は、カイメップ・チーバイとカンザーを組み合わせた港湾・物流ネットワークが、南部の国際物流機能をさらに高める可能性があると指摘する。
さらに、ロンタイン空港、自由貿易区、国際金融センター、高速道路、鉄道などを結び付ければ、港湾を中心とした大規模な物流・金融エコシステムの形成も視野に入る。
特にカイメップ・チーバイと各工業地帯を鉄道や高速道路で結ぶことは、今後の競争力を左右する重要な課題となる。
「海洋国家」を目指すベトナム
ベトナム政府も海洋経済の強化を国家的な課題として位置付けている。
2026年8月には、ベトナムを強い海洋国家へ発展させるための中央方針を実行する政府行動計画が打ち出された。
海洋空間の計画、近代的で環境負荷の低い海洋産業の発展、港湾インフラの整備、海洋経済拠点の形成、環境保護、気候変動への適応などが重点課題となっている。
ベトナムには長い海岸線があり、南北に深水港を整備できる地理的な強みもある。加えて、輸出入額の拡大と製造業への投資増加が港湾貨物の増加を支えている。
今後は、港湾の規模だけでなく、道路、鉄道、航空、金融、物流サービスをどこまで一体化できるかが競争力を左右する。
ベトナムの港湾は、かつてのように周辺国の大型港へ貨物を送り出す「フィーダー港」にとどまらない。
製造拠点として成長したベトナムが、今度は世界の物流網そのものの中核へ入り込もうとしている。
その変化を象徴するのが、世界30位以内に入ったホーチミン市、ハイフォン、カイメップという三つの港湾拠点である。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN





























