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【経済】ビンズン省の平均所得が全国1位になった理由

(C)VNEXPRESS

ビンズン省は、工業団地、交通インフラ、質の高い人材の育成という3本柱の構築によって、素晴らしい成功を収めたが、これはベトナム国内では、かなり特殊な事例だ。

先日、統計総局が発表した国民生活水準調査の結果によれば、ビンズン省は一人当たりの平均月収が702万VNDとなり、全国1位となった。

この調査によれば、平均月収が500万VND以上となったのは、ビンズン省以外にホーチミン市、ハノイ市、ドンナイ省、バクニン省、ダナン市、ハイフォン市、カントー市の7つの地域があったが、いずれもビンズン省の数値には及んでいない。(全国平均は423万VND)

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フルブライト経済教育プログラムの講師であるフイン・テー・ズー博士は、ドイモイ政策以降の35年間における地域の社会経済発展の成果を評価するうえで、住民の収入の変化というのは最も重要な評価指標の一つであると述べた。「これまでにビンズン省が達成した成果は、ベトナム全国と比較しても非常に印象的な素晴らしいものです」とズー博士は評価する。

一方で、経済法科大学院科学技術学部のチン・クオック・チュン准教授は、ビンズン省の成果について、調査結果は非常に有益なデータであり参考にすべきものであるが、相対的に考える必要があると指摘する。チュン准教授によるとビンズン省の一人当たりの平均月収は、全体から見て確かに高い数字であるが、絶対的な数値として1位であるという事を強調する必要はないとのことだ。なぜならビンズン省の場合、他省から出稼ぎに来ている労働者の数が多く、一人当たりの収入を計算するのが難しくなるからだ。

一人当たりの平均収入の計算式は、分子(総所得)を分母(戸籍のある世帯のみで他省の出身者を除く)で割って求められている。

したがって、他省から来た労働者は計算の対象にならないので、一人当たりという計算は、正確性を欠くことになる。「この計算式では他省の出稼ぎ労働者が分母に入っていないので、ビンズン省の一人当たりの平均収入は実際よりも高くでることになります」とチュン准教授は分析する。

もし、もっと正確な数値を出すのであれば、ビンズン省の戸籍の有無にかかわらずビンズン省に住んでいる労働者数全体で総収入を割る必要がある。

相対的な数字であるかどうかは置いておくとしても、ビンズン省の平均収入が高い理由を推測することはそれほど難しいことではない。なぜならビンズン省は、ベトナムを代表する工業都市だからだ。2020年現在、ビンズン省には48か所の工業団地があり、総面積1万ヘクタール以上は、ベトナム南部の工業団地の総面積の1/4を占めている。ビンズン省ではさらに将来的に34か所で合計1万4790haの工業団地を開発する予定だ。

1996年にソンベー省を分割して再建されたビンズン省は、なぜこれほどまでに急速に工業都市としての発展を遂げられたのだろうか。ビンズン省は、2016年から2020年までに70億USDの外国投資(FDI)を誘致するという目標を立てていたが、2019年末には、既に102億USDのFDI誘致に成功している。

専門家は、投資家にとって最良のハード面とソフト面のインフラを整えるために、ビンズン省の政府と企業がお互いに協力していることが重要な点だと指摘する。ここで言うハードインフラとは工業団地のインフラやそれに接続する交通システムのことで、ソフトインフラとは、優れたOJTシステムや外部からの人材の流入を促進する魅力を指す。

チュン准教授によれば、ビンズン省は優れた産業インフラによって、地方の人々を労働者として育成するまでのコストを費やすことなく、多くの地方から労働力を呼び寄せることができるという利点がある。「なので、ビンズン省の人材効率が高くなるのです」とチュン准教授は指摘する。

「ビンズン省のアプローチは適切な方法で行われており、特に政府と企業との間の調和がとれています。例えば、製造業は長期にわたる発展のために、良好でインフラの整った土地を必要としており、ビンズン省はそれを提供しています」とズー博士は話す。

さらに、ズー博士によると、ビンズン省では工業団地管理委員会などが『企業の経営活動を妨害するのではなく、正しく支援する』という組織作りに成功しており、ビンズン省のビジネス環境は非常に良好なものになっている。

ビンズン省の良好なビジネス環境は、FDIの誘致結果に反映されているだけではない。ビンズン省の人口増加率からも、この地域が如何に住みやすい場所だと思われているかが分かる。1995年から2020年にかけて、ビンズン省の人口は、260%以上増加している。この数字は人口増加率2位のコントゥム省の3倍近い数字で、3位のホーチミン市、4位のビンフック省と比べて3倍以上の数字となっている。

さらに、今回の調査結果から富裕層と貧困層の格差を見ても、それほど大きな差は出ていない。具体的には格差は4.21倍で、全国で9位の数字となっている。一人あたりの平均月収トップ10の地域で見た場合、ビンズン省の格差は、ホーチミン市、ドンナイ省、ハイフォン市に次いで第4位となっている。

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ズー博士は、ビンズン省がこのパフォーマンスを維持するためには、今後、より付加価値の高い方向性へシフトする必要があると指摘する。そのためには、ビンズン省は人材の質とイノベーション能力を向上させる必要がある。また企業もより多くの優秀な人材を集め、生産性を向上させていく必要がある。

ビンズン省の指導部も上記の点は理解している。ビンズン省には現在、トゥザウモット市、ジーアン市、トゥアンアン市という3つの直轄市があり、サービス、都市化、eコマース、金融技術に関するブレークスルーを生み出せるスマートシティへの発展を目指している。

2021年3月にビンズン省人民市委員会のグエン・タン・チュック副主席は、ビンズン省は、高品質なサービスと物流サービスを発展させ、ビンズン省の輸出製品の現地化率と競争力を高め、既存のビジネスに近いレベルまでeコマースを強力に発展させることを目指すと述べた。

これは、工業化を目指す他の多くの地方都市が発展のために目指すべき方向性でもある。少なくない労働者が将来的には、地元に戻って働くことを希望する傾向にある。「5年から10年の期間で見れば、ビンズン省は、他の省よりも魅力的な部分が多く、依然として多くの労働者を引き寄せることができるでしょう。しかし、さらに長い期間で見た場合、必ずしもビンズン省が労働者を引き寄せられるとは限りません」とチュン准教授は指摘する。

また、ビンズン省は、ホーチミン市に隣接しているために物流効率が高い。「しかし、長期的には政府がホーチミン市と各地方を高速道路でつながるようにすれば、各地方の物流コストは削減され、利便性も上がるでしょう。そうなればいつまでもビンズン省だけが好条件であり続けることは出来ません」と専門家は指摘する。

「ビンズン省の事例をほかの地方にも簡単に当てはめることは出来ません」とズー博士は話す。ベトナムの全ての省と市は同じ体制で運営されているが、ビンズン省の運営方法は、他の省とは異なっており、独自の特徴がある。

ベトナムの全ての地方は、ビンズン省のようにビジネス環境を改善する必要があると頭では理解できている。しかし、実際の運用に際しては、それぞれの地域にはそれぞれの事情があり、簡単には進められない。例えば、他の省では、ビンズン省のように発展のために労働者を引き寄せることは簡単ではない。したがって多くの専門家は、ビンズン省の成功は素晴らしい事例ではあるが、他の省で同様の成果を挙げようと考えるなら、その地域独自の戦略を見つける必要があると指摘している。

出典:26/05/2021 VNEXPRESS
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