ベトナム最大のイベントが「テト」(旧正月)の長期休暇。2023年1月のテトに向けてベトナムがどのように動いていくかを、大手ニュースメディアのTuoi Tre Onlineの記事から追った(以下の写真はTuoi Tre より)。ベトナムはテトで回ってる!
食品の生産は11月がピーク
2023年のテト(旧暦の元旦)は1月22日(日)。毎年政府が認めるテト休暇は1月20日(金)~26日(木)の7連休となった。27日(金)を休めれば、次の土日を含めた10連休となる。祝日が少なく、土曜日出社が珍しくないベトナムで、これだけの長期休暇はテトだけだ。そのため早い時期から話題になる。
「テトの航空運賃が加速し始める」(2022年10月30日)。3ヶ月前にもかかわらず、テト休暇の国内線と国際線の料金が高騰し始めた。ベトナムの航空各社は8月から航空券を販売しており、ベトナム航空によると予約した乗客数は2020年の同期比で23%の増加だ。
また、多くの企業で11月から、テトに欠かせない食品の生産がピークに達している(「テトシーズンのビジネス」 11月11日)。昨年に比べて特に春巻き、ソーセージ、ヌクマムなど消費量の多い製品を大幅に増加させており、食肉加工大手のVissanは2022年6月から原材料の備蓄を始めていた。
「2022年の同期比で30%増となる2000tの生鮮食品と、10%増となる4200tの加工食品を市場に供給する予定です」
スーパーも準備に大忙し
テト市場への準備は売り手のスーパーマーケットも進めている(「企業はテトグッズに悩む」 11月17日)。MM Mega Marketでは通常月より40~50%増の商品の保管を計画し、特に生鮮食品や生活必需品、菓子類、ジャム類などは100%の増加。LOTTE MARTは前年比で商品を約30%増やすとし、不可欠な食品は菓子とソフトドリンクと語る。
ただ、懸念は購買力の減速の兆し。理由は2022年第3四半期からの食品、飲料、化粧品などの値上がり、昨今の為替変動やガソリン価格の上昇などだという。
テト休暇中のスタッフの募集も始まった(「スーパーはテト時期の労働者募集を加速 11月22日)。多くの大手スーパーマーケットで数百人単位のパートタイマーが採用される予定で、Saigon Co.opのスーパーと食料品店では800~1000人になるという。仕事はギフト包装、販売、倉庫、レジ係などのサポートだ。
一方、失業者が増えている現在、スーパーマーケットの「なりすまし詐欺」に注意喚起する。SNSに「高収入で楽な仕事」と求人広告を掲載して呼び込む。しかし、集合や面接の場所はスーパーではなく、予約金や30万~50万VNDの制服代を徴収する。
「公式サイトの採用情報や店舗で直接確認するなどして、慎重に情報を見分ける必要があります」
航空券のトリックは許さない!
「航空会社はいたずらをしますか?」(11月29日)が興味深い。テト休暇中のフライトでエコノミークラスの航空券が突然売り切れ、高価なビジネスクラスだけが残っているというのだ。人々は航空会社が安い航空券を「ロックしている」と疑っている。
調べてみると確かに疑わしい。2023年1月6日~2月5日に航空会社は8079便を増加して2万5613便を運航する予定という。これだけ増やしてもまだ足りないのか。Tuoi Treがベトナム民間航空局に取材している。
「テト期間中の航空券不足をベトナム民間航空局が語る」(11月30日)によれば、航空会社の航空券の価格は厳密に管理しており、必要があれば直ちにチームを編成して違反には厳重に対処するとのことだ。
そして、民間航空局が確認したところ、ベトナム航空とバンブーエアウェイズがテトまでの数日間、エコノミークラスの航空券を販売していないと判明。11月30日に両社に増便を求める書面を送るという言質を引き出した。すごい、動きが早い!
同日の「タンソンニャットのフライトを増やしてテト休暇の航空券を増やす」(11月30日)で続報。現在、基本的に全国の空港は乗客の最大需要を満たせており、問題はタンソンニャット国際空港だけ。そのため2023年1月6日~2月5日は、1時間当たりの発着枠を最大42から44に増やすことを決定した。
昼間の時間帯で1日約3000席、空きが多い夜間は1日約1万~1万5000席を追加供給でき、需要を満たせるという。そして約束通り、ベトナム航空とバンブーエアウェイズに緊急に増便の計画を立てるよう要請した。
「2つの滑走路を持つタンソンニャットでは1時間44便以上の運航が可能ですが、国内線は1時間当たり最大約3600人の乗客しか受け入れられず、これ以上追加するとターミナルが混雑してしまうのです」
毎年楽しみなギフトバスケット
12月1日の記事「2023年のテト休暇は7日間」。正式に2023年テト休暇の日程が決まった。労働・傷病兵・社会問題省が提案した日程に政府が同意し、公務員のテト休暇が1月20日(金)~26日(木)となった。ご存知のようにこれが民間企業の指針となる。
その翌日にはテト用のギフトバスケットがセールシーズンに入ったとの話題(「テトギフトバスケットでマーケットは賑わう」 12月2日)。バスケットは商品数に応じて50万~70万VND、高いと150万~200万VND。大手スーパーのCo.opmartとCo.opXtraでは約40モデルを販売しており、高級輸入品ではシーフードギフトボックスが2種類、ビーフギフトボックスが4種類ある。
ただ、今年は建設や製造の業界、外資系企業も業績の悪化からテトギフトバスケットの購買力は高まらないと予測。また、消費財の値上げ、為替変動による輸入価格の上昇などから、バスケットの価格は例年に比べてわずかに上昇している。
変わって学生の話。テト休暇が確定して、大学がテトの休みを通常よりも早く、かつ長く発表している(「多くの大学でテト休暇の早期取得を許可」 12月2日)。ある大学では1月14日~2月12日とほぼ1ヶ月の休暇、別の大学でも1月14日~29日、1月16日~2月5日などと長く、テト休暇の前後をオンライン授業とした大学も多い。
親の訴えで学校の休みが延長
しかし、幼稚園から高校では事情が異なる(「ホーチミン市の学生のテト休暇、親は怒り、学校は心配」 12月3日)。
ホーチミン市の幼稚園から高校のテト休みは1月18日~26日の9連休。これまでの14~16日間と比べると短く、しかも親を怒らせているのは、1月27日を休みにすれば12連休になることだ。たった1日のために田舎から自宅に早く戻り、翌日は土曜日で再び休みとなるのは理不尽だと訴える。
学校側も困惑しており、ホーチミン市の小学校校長はこう語る。
「1月27日は市の条例により、学校が生徒を迎えに行きます。一方、金曜日なので休ませてほしいと多くの保護者から言われています」
航空運賃の時のようにTuoi Treが動く。12月3日の午後、ホーチミン市教育訓練局に上記の実情を伝えると、「全ての学生に1月29日までのテト休暇を与えるようホーチミン市人民委員会に提案する」との返答。各学校の状況に応じて休暇後の補習を計画するという。
そして、「ホーチミン市の学生は12日間のテト休暇を取得」(12月3日)。12月3日夕方にホーチミン市教育訓練局は、市内の全ての学校のテト休みを1月18日~29日の12日間とする公式文書を発行した。さらに教育機関の各長に、教育計画を積極的に策定するよう指示した。
この早急かつ柔軟な対応がベトナムだ。記事の日付を追うと、家族の苦情の掲載からテト休暇の変更までわずか1日。日本ではあり得ないスピード感に驚く。
帰省もいいけどテトは旅行だ!
テト休暇は観光シーズンでもある(「エキサイティングな2023年のテトツアー」 12月4日)。Saigontouristではテト休暇中のツアーの予約が既に1万2000以上あり、料金は1人当たり400万~1400万VND。Fiditourによると海外ツアーで若い世代に人気の旅行先は韓国、台湾、シンガポール、タイ、国内ではフーコック島、ダナン、フエ、ハザン、コンダオ諸島。顧客の約60%がオンラインで予約しているという。
一方、ホーチミン市観光局によると、2022年初11ヶ月でホーチミン市は310万人以上の外国人観光客を迎えて2022年計画の約90%に達し、総観光収入は、117兆9880億VNDと計画より約30%増加した。
ガソリン不足が一時期問題となっていたが、テト休暇中は大丈夫のようだ(「テトの石油は一時的に良いが2023年供給に注意喚起 12月8日)。
現在、ニソン製油所とズンクアット製油所は正常に生産しており、テト休暇中の石油供給は消費量を満たせる。ガソリンスタンドで列を作る状況はもはやない。ただ、2023年は各地の石油プラントで大規模なメンテナンスを実施すること、原油の輸入が困難な見込みであることから、第1四半期末までは安定供給できるがその先が不透明とのことだ。
テトに向かってのニュースはまだまだあるが、誌面が尽きてしまった。皆さんもぜひニュースでテト休暇の動きをチェックしてください!