ベトナム南部ドンナイ省人民委員会はこのほど、野生ゾウが電気柵を越えて住宅地へ侵入し、住民の農作物を荒らしている問題を受け、農業環境局に対し新たな防止策の検討を指示した。
また、これまで実施してきた野生ゾウ侵入防止用電気柵プロジェクトの効果についても再評価を求めている。
75kmの電気柵整備も被害止まらず
ドンナイ省では2017年、野生ゾウが農地や集落に侵入して餌を探すのを防ぐため、総延長50kmの電気柵建設を開始した。
この事業は緊急ゾウ保護プロジェクトの一環として実施され、総投資額は740億VND(約4.5億円)に上った。
しかし、ゾウの群れは柵のない地点から侵入を続けたため、2021年にはさらに140億VND(約8000万円)を追加投入し、25kmを延伸。総延長75kmの電気柵網を構築した。
それにもかかわらず、約27頭とされる野生ゾウの群れは毎年のように柵を破り、住宅地や農地へ侵入しているという。
ゾウは電気柵を学習して突破
現在では電気柵の効果は大きく低下している。
2026年4月18日にはゾウの群れが村の人民委員会庁舎や学校付近まで接近したほか、2025年にはマーダー村スオイトゥーン地区で、若者グループが道路を横断する7頭のゾウと遭遇する出来事もあった。
当局によると、ゾウは前脚でコンクリート柱を倒したり、牙で電線を引きちぎったりするほか、乾季には空堀を越えて侵入するケースも確認されている。
人身事故やゾウの死亡事故も発生
人と野生ゾウの接触は深刻な事故にもつながっている。
2025年には、農園からゾウを追い払おうとした66歳の男性が襲われ死亡した。
一方で、ゾウ側にも危険が及んでいる。2025年5月には、餌を探して移動していた子ゾウが井戸に転落し死亡する事故も発生した。
農作物被害は増加傾向
経済的損失も深刻化している。
フーリー村だけでも、2025年には127件の農作物被害が確認されたが、2026年は年初から数か月で既に204件に達している。
被害件数は前年を大きく上回るペースで増加している状況だ。
保護と共存の両立が課題に
かつて「切り札」と期待された総額880億VND(約5.3億円)規模の電気柵事業だが、実際には野生ゾウの行動を完全に抑制するには至っていない。
行政当局は、住民の生命や財産を守ると同時に、ベトナム国内でも貴重な野生ゾウの群れを保護するため、より実効性の高い共存策の構築が必要との認識を示している。




















