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KAMEREO|ベトナムで活躍する日系企業:リーダーたちの構想 第96回

カメレオ創業者の田中卓氏

農場から店舗までを一本化
ベトナムの食を支える新インフラ

ベトナムの複雑な食品流通網を効率化し、倉庫や物流、PBまで手掛けるKAMEREO(カメレオ)。6000店舗の顧客を支える仕組みの裏側、農家との連携、未来への構想を創業者の田中卓氏が語る。

カメレオの契約農家の畑

食材調達の非効率が契機

田中 2015年にベトナムへ渡り、ピザチェーンのPizza 4P’sでCOOとして働く中で、最も苦労したのが食材の調達です。現在もそうですが、ベトナムには一箇所に頼めば多くの食材を高品質かつ時間通りに届けてくれるサプライヤーがありませんでした。

 そのため、1店舗の運営に70~80社もの小規模な業者と個別にやり取りする必要があり、マネジメントにも苦労しました。また、配送の遅延、商品の欠品、価格の不透明さ、インボイスが発行されないなどの問題が日常茶飯事でした。

 この現場の不便さを解決したいと2018年6月にホーチミン市でKAMEREOを起業し、飲食店向けのBtoBプラットフォームを開発したのです。

カメレオの冷蔵倉庫

田中 飲食店とサプライヤーをつなぐプラットフォーム(受発注システム)で、スマホやPCの画面から食品を中心に幅広い商品を注文できます。これを見た農家さんや食品系のメーカーさんなどが商品を発送することになります。

 しかし、1年ほど運営する中で、システムだけでは根本的に解決しないという現実を知りました。サプライヤー側の配送、品質、インボイス発行などの不備はなくならなかったのです。また、事業規模としても成長に限界があるとわかりました。

 そこで、自分たちが在庫を持ち、物流までを一貫して手掛けるフルスタックのサプライヤーになることで、本当に信頼されるサービスを提供できるのではと考えました。そこで2019年7月に事業モデルを大きく転換したのです。

カメレオのPB商品(キッチンペーパー、ストロー、ビニール手袋など)

田中 当初は地道な仕事が続きました。特に野菜の調達では、一大産地であるダラットに自社の集荷場を設け、弊社の仕入れ担当者がバイクで一軒一軒の農家を訪ねて回ることから始めました。

 農家の方々と直接会い、まずは「お試し」で少量を買い取ることから信頼関係を築いていきました。

 また、最初から契約は結ばず、一定期間の取引を通じて品質や約束が守れるかを見極めます。例えば、天候が安定している乾期は誰でも高品質な野菜を作れますが、本当に力がある農家かどうかは、栽培が難しい雨期を一緒に乗り越えて初めてわかります。

 そうした1年以上のサイクルを経て、ようやく「この農家さんなら」と契約農業のお願いをしていくのです。現在は開拓した100以上の提携農家から直接仕入れており、地域はラムドン省、ダクラク省、メコンデルタ、ロンアンなどホーチミン市へと拡大しました。

 需給の調整にも工夫が必要でした。「鶏と卵」のように、私たちは「需要(バイヤー)が先か、供給(農家など)が先か」という問いに対し、まずは需要を自ら作る道を選びました。

 例えば、市場であまり流通していない日本産の大葉や水菜といったニッチな野菜を普及させる際は、まず自分たちで在庫を抱えるリスクを負い、農家さんに毎日必ず買い取ると約束して作ってもらいました。当初は売り切れないこともありましたが、営業が飲食店を回って売り切ることで実績を作り、徐々に安定したサイクルに乗せていったのです。

 こうした積み重ねが実を結び、現在ではホーチミン市とハノイを中心に、飲食店、小売店、工場、学校の食堂など約6000店舗のお客様がいます。加工食品、飲料、調味料などを合わせた商品数は2000種類以上、野菜だけで約250種類になります。

カメレオのPB商品(カット野菜、カットフルーツなど)

食品インフラの未来を描く

田中 敷地面積が約5000㎡、建物面積が約2500㎡で、冷凍、冷蔵から常温まで5段階の温度帯に分かれています。産地からお客様まで一貫したコールドチェーンを実現すると共に、野菜の仕分けやパッキングなどが適切な温度帯で可能です。

 そして早朝には、約150人のシッパー(バイク)や複数台のトラックが配送を開始します。彼らも弊社の社員で、現在の社員数は400人強になります。

 フルフィルメントセンターは2024年末に進出したハノイにもあり、将来はホーチミン市に第2倉庫を建設する計画です。また、今後の道路インフラの向上を見越して、バリアブンタウ等の周辺都市にも小型倉庫を作る予定です。ホーチミン市中心部からの荷物を保管して、小分けして地域に配送する予定です。

カメレオの商品を配達するシッパー

田中 まずは現在の基盤であるホーチミン市とハノイでの稼働率をさらに高め、2年以内の黒字化を目指します。並行して、ブンタウやファンティエットといった近隣都市、さらにはダナンやニャチャンといった中部エリアへの拡大も進めていく予定です。

 商品面では約100種類ある自社ブランド(PB)製品の拡充に注力します。ひとつはティッシュペーパーやハンドソープなどの衛生用品で、問屋を通さず、工場稼働の落ちた時期に生産委託することで低価格かつ高品質な商品が作れます。飲食店などで好評ですし、KAMEREOブランドのアピールにもなります。

 また、真空パックの牛肉や鶏肉、調理済みや調理用の野菜などもあり、こちらも伸ばしていけると思います。日本の多くのレストランチェーンでは既にこうしたカット済み野菜などが使われており、今後はベトナムでも広がると思うからです。

カメレオのベトナム自社工場

 ベトナムの食品流通市場は巨大ですが、明確な勝者はまだいないと思います。弊社の競合はどこかというと無数にいる個人の市場のおばちゃんたちで、うちと同じ事業をするのは大変なんです。

 農家さんや飲食店さんを開拓して、オペレーションを組んで、DX化して、倉庫を持って、配送して、売掛金や買掛金に対応して、しかも初期の投資金額が半端ない。だからまだ黒字化できてない(笑)。

 ですから私たちは短期的な利益を追うのではなく、長い年月をかけて食品流通のインフラを作りたい。農家さんや飲食店さん、その先にいる消費者の皆様に信頼される、ベトナムで一番の食品サプライヤーになることがKAMEREOの目標です。

プロフィール

KAMEREO
田中 卓 Taku Tanaka
大学卒業後、外資系金融機関に入社。2015年に人気ピザチェーンPizza 4P’sに参画してCOO、サプライチェーンを担当する。2018年6月にKAMEREOを設立、2019年7月に現在の業態に変更。

執筆者紹介

取材・執筆:高橋正志ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。

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